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ぼくの猫は破壊神 〜魔法学園の落ちこぼれ、最強の使い魔を復活させて成り上がる〜  作者: 芹沢政信
四章 ぼくが君を助けるために、王都の上空でドラゴンと戦う話
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4-2 深紅の箒

 飛行魔法レース絶好の見学スポットというのが、校舎の屋根だとカイトに教えてもらったので、ぼくは一足先に学園へ戻る。


 ベル先輩は伝説の遺物だろうとなんのその、手に入れたあと軽く練習しただけでグリフディリオンを乗りまわすコツをつかんだらしく、本番まで秘密にすることにしたとも聞いている。

 ハクラム師のシュレーターを借りて余裕ぶっこいているガードナーが、桃色がかった金髪によく似合う深紅の箒と並んだときに顔をしかめるのは容易に想像できる。

 ふたりが首位争いを繰り広げるであろうことを考えると、今から楽しみで仕方がない。


「ねえ、君はどっちが勝つと思う? ぼくとしちゃベル先輩に優勝してほしいかな。だって相部屋なのにでっかいトロフィーが置かれたら掃除するとき邪魔だもんね」


 本音を言えばただの嫉妬なんだけど、薄情なぼくは親友が負けることを祈りつつオーサに話しかける。

 だけどお祭りの出店でたらふく美味しいものを食べたばかりの猫サマは、ぐーすか居眠りしていて静かなもの。

 せっかくのレースなんだし、誰かといっしょに盛りあがりたいところ。

 なのでぼくは第三図書室に足を運び、ハーレイ先生を誘うことにする。

 ところが……。


「建国祭ねえ。もうそんな時期だっていうのだから、時が経つのは早すぎる。帝国時代の行事ならいざ知らず、今のお祭りは……とくにあのパレードは痛ましい記憶が蘇ってきてさあ」


 普段は気持ち悪いくらい陽気な先生が、珍しく不機嫌そうになにやら呟きはじめる。

 お祭りに嫌な思い出でもあるのだろうか。

 女の子を誘って断られたとか、パレードを見学中に漏らしちゃったとか。


「失礼なことを考えるな、君も。私をなんだと思っているのやら」

「だったら勝手に心を読まないでください。はいこれ、ぼくからの差し入れです」


 巨人の糞を模したミートボールと緑色の芋虫チョコレートという最低きわまりない手土産を渡すと、悪趣味なことに定評のあるハーレイ先生は予想どおり興味津々。

 何度もしげしげと眺めたあげく、


「暴走して王都を恐怖に陥れた花獄獣のお菓子を建国祭の屋台で出すなんて、なかなかに風刺が効いているね。しかしなんだかこれ、懐かしい味がするな」

「学園の卒業生が作ったやつですからね。で、ぼくはこれから校舎の屋根で飛行魔法レースを見学しようと思うんですけど、先生もごいっしょしませんか?」

「おっと、可愛らしいお嬢さんからデートのお誘いか。パンジィが妬いちゃいそうだな」

「ズモー!」


 奥からてこてことパンジィがやってきて、ぼくに睨みをきかせてくる。

 どこからツッコミを入れたらいいのかわからないけど、使い魔ともどもレースを見学するつもりはあるらしい。


「どうせなら賭けをしようじゃないか。私が勝ったら君にメイド服を着てもらう」

「なんでそんなものまで持っているんですか。そのうち捕まりますよ……?」


 この先生って変質者なのでは。

 今さらだけど。

 

「じゃあぼくが勝ったら、便利な魔法道具をください。最近よく使っている封珠の杖だって前に先生のゲームに勝って得たやつだし、あんな感じで」

「飛行魔法レースの賞品だけに、秘蔵の箒でもプレゼントしようかね。さすがにグリフディリオンを渡すわけにはいかないから、予備でいいのがあったかなあ」 

  

 ハーレイ先生がふざけて冗談を言うので、ぷぷっと吹きだしてしまう。

 その遺物を今ベル先輩が持っていると知ったら、さすがの先生だって驚くはずだ。

 すると案の定、ぼくの心を勝手に読んだらしく、


「そんなバカな話があるかい。だってあれは」

「戦乱後の混乱によって紛失した。それが定説みたいですけど、実はこの前ぼくらが見つけまして」


 レースの予想をするのだからフェアに、と思ってグリフディリオンのことを教えようと思ったのだけど、ハーレイ先生は記憶が読めるから最後まで話す必要はなかった。

 てっきり驚くものかと思っていたのに、先生はなぜかむっつりと黙りこむ。

 どちらかというと戸惑っているような。

 あるいは困り果てたような、顔。


「校舎の地下にあるはずがない。本物はすでに回収されているのだから」

「どういうことです?」


 いきなり真剣な声を出されたので、ぼくは反射的に姿勢を正してしまう。

 考えてみれば目の前にいるのは、魔皇殿そのものや過去の遺物を管理する魔法学園の教師で、帝国時代の資料を保管する図書室の司書をやっているようなひとなのだ。

 だから一般的には知られていない情報を持っていたとしても、不思議はなかった。


「好奇心が旺盛な生徒というのはタチが悪いね。君たちはグリフディリオンを見つけたと勘違いしていたようだけど、あれほど強大な遺物が放置されているわけがなかろうに」

「じゃあ、ベル先輩が持っているのは……」


 ハーレイ先生は深々とため息を吐き、ぼくにこう言った。


「見ためどおりの真っ赤な偽物――いや、もっと厄介な代物さ」

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