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ぼくの猫は破壊神 〜魔法学園の落ちこぼれ、最強の使い魔を復活させて成り上がる〜  作者: 芹沢政信
四章 ぼくが君を助けるために、王都の上空でドラゴンと戦う話
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4-1 建国祭当日

「あははははっ! なにそれマジウケる、オチがひどい!」

「そんなに笑うようなことですかね。あとこの話、誰かに言っちゃダメですよ」


 あれから数日後の、建国祭当日。

 パレードを見に行く途中でヴィレパン雑貨店に立ち寄ったぼくは、お姉さんに校舎地下を探索したときの顛末を話していた。

 グリフディリオンを見つけたあとも大変だったのだけど、ぼくらはなんとか地上へ戻ることができて、今はこうして和やかに年に一度のお祭りを迎えている。


「ちょっとした冗談のつもりだったのだけど、クラウンちゃんたちがまさか本当に遺物を持ち帰ってくるとは思わなかったわ。あー、そうなると今日のレースは楽しみかも。ベルちゃんうちのお得意様だし、応援してあげよん」

「そういえば先輩、このお店で買った髪留めを地下で落としちゃったみたいですよ」

「あれなあ、残念だけど予備がないちん。まあ目的は果たしたからええけども」

「目的?」

「ん、こっちの話。でも君たち、よく無事に戻ってこれたわネ。魔物に襲われたんでしょ」

「オーサが手を貸してくれましたから。こう見えて、かなりすごいやつなので」


 ぼくはそう言って、膝に乗ったまま寝息を立てている猫サマを撫でる。

 地上に戻るやいなやオーサはすぐに眠ってしまって、今日もぐーすかと居眠りをこいている。

 ただ食い意地の張っている猫サマのことだから、市街地の通りに向かえば出店の串焼きの匂いにつられて目を覚ますだろう。

 力を借りた対価でマカロンを買ってあげなくちゃだし、ベル先輩を探しに行くことになってお出かけできなかったから……今日はお礼の意味もかねて、美味しいものをいっぱい食べさせてあげよう。


「見て見て。今日うちの店で出すお祭り用の食いもん。毒吐き巨人のクソ団子風ミートボールに花獄蟲の幼生チョコレートよ。若者にめっちゃ流行りそうっしょ」

「いつも思いますけど壊滅的なセンスですね……。でも意外と稼ぐんだよなあ、このひと」

「んんっ? なんかウマそうな匂いがするにゃ」


 あ、オーサが起きた。

 しかもさっそく、毒々しい緑色の芋虫チョコをバリバリ食べちゃうし。





 雑貨店を出たあとは市街区の中央、王都でもっとも広いクラディオン通りへ向かう。

 レド一世が不死皇帝との戦いに勝利し、フィラボロン帝国が新たに大陸の名を冠したエルダンディア王国となったことを祝して催される建国祭。

 しかし実は帝国時代にも似たような祭事が、まったく同じ日に行われていたという。


 王都聖騎士団による行進と楽団の賑やかな演奏が、ぼくらの前を通りすぎ――パレードの最大の見せ場として、不死皇帝を模したおどろおどろしい人形が、レド一世に扮した筆頭騎士ホワイト卿の手によって火にくべられる。

 直後、パレードを見学するために集まった人々が歓声をあげて地面を足で打ち、びりびりと地響きが鳴り響く。

 毎年このときばかりは貴族も平民も、そしてスラムが解体される前はドブネズミだったぼくも一帯となって、エルダンディアの繁栄と安寧を願うわけである。 


「ちなみに帝国時代のお祭りだと、英雄だったころの不死皇帝が亜人族の人形を燃やしていたらしいよ。そう考えるとなんだか皮肉だよね」

「戦乱とは古くよりそういうものにゃ。まったくもってくだらぬと言えよう」


 神々を滅ぼすために作られたオーサの口から出ると、なおさら重みがあった。

 思えば校舎地下に潜んでいた駆動兵たちも戦うために生みだされたわけで……あのときは必死だったし襲ってきたから倒すしかなかったのだけど、今さらになって一抹の罪悪感を抱いてしまう。

 ああ、そうか。

 魔法で命を生みだす行為は、だからこそ罪深いとされているのかな。


「でもぼくは、君と出会えてよかったと思うよ。オーサ」

「どうした急に。感謝するのは構わぬが、そう思うならウマいものを食わせるにゃ」

「はいはい、じゃあ出店を順番に見ていこっか」


 最初からそのつもりだったし、頭に乗せたオーサが尻尾でぺしぺし催促してくるので、串焼きやら焼き菓子やらを買っては食べさせてあげる。

 途中、雑貨屋のお姉さんが出している屋台に顔を出すと、頬に傷のある妙に貫禄のあるおじさんが例の悪趣味なお菓子をくれたので、学園に戻ったあとハーレイ先生にお土産で渡してあげよう、なんて考える。

 あのひと、この手のやつ好きそうだし。


 そうしているうちにクラディオン通りの終点、王都の外壁門あたりにやってくる。

 ちょうど飛行魔法レースの受け付けをしていたからガードナーとベル先輩の姿を探してみるのだけど、本番に備えルートの下見でもしているか、ふたりとも姿を見かけない。

 代わりにカイトが声をかけてきて、


「クラウンくんはレースに参加しないのかい」

「授業で見ているでしょ。ぼくが飛んだところでへろへろだし、恥をさらすだけだよ」

「またまたあ。あんなにすごい魔法が使えるわけだし、どうせまた下手なふりをしているだけだろ? どんな事情があって隠しているのか知らないけど、俺にはもう通じないさ」

「いや、そういうわけじゃなくて」


 でも理由を説明したら余計に面倒くさいことになりそうだし、やんわりと否定するだけにとどめておく。

 オーサの力を借りれば、そりゃものすごい速さで飛べるかもしれないけどさ。

 

「実は俺、家の手伝いで飛行魔法レースの運営スタッフにされてさあ。そっちが忙しくてろくに観戦できそうにないんだ。クラウンくんがもしベル嬢を……あと一応ガードナーもか、応援するつもりなら絶好のスポットを教えてあげるよ」

「ほんと? だったら嬉しいかも。そういえばハニービーはどこにいるのかな」

「彼女も俺と同じで、家の手伝いで運営本部にいるよ。実況席の雑用係だとさ、ついでにキデック先生も当然そっち」

「あー、今になって去年の記憶が蘇ってきたかも」


 貴族出身の魔法使い贔屓で評判の悪かった飛行魔法レースの解説、ナントカ・ヒルズバック卿という人だった気がする。

 当時は面識がなかったから記憶があやふやだけど、あれってキデック先生だったのでは。

 で、カイトと別れたあと。


「いっそお前も出場すればよいのにゃ。今後オーサに毎日マカロンを食わせてくれるなら、あのクソ教師の度肝を抜いてやることもできるぞい」

「みんな真剣にやっているんだし、邪魔したくはないよ」


 それはいつか、自分の力で速く飛べるようになったら、ね。

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