3-9 失踪
そしてまた数日が経ち、建国祭を目前にひかえたある日の昼下がり。
学園の教師たちが祭事の準備に駆りだされて授業が休みになったから、オーサと出かけしようと提案する。
お詫びのマカロンはベル先輩の差し入れにしちゃったので、市街区でまた買ってこようと思ったのだけど、
「お前にゃあ、オーサへの貢物をほかの女に渡したのか!」
「う……だってちょうど手持ちにあったから」
すると猫サマ、尻尾をおっ立てたまま散歩に出かけてしまう。
戻ってくるころには機嫌を直しているとは思うけど、一度ならともかく二度も怒らせてしまったし、あとできちんと埋め合わせをしておかなくちゃ。
「朝から騒がしいやつらだな。こちとらレースに向けて減量のまっ最中だってのに」
「それで最近、お腹の虫をぎゅるぎゅると鳴らしていたんだね」
今日は寮にいるのかと思ったら、あと一時間くらいで仕事に出るとのこと。オーサがどこに散歩へ行っているのか謎だけど、ガードナーがどこで働いているのかも謎である。
なんて疑問に思っていると……カイトがぼくらの部屋をたずねてくる。
彼は顔を見せるなり、慌ただしい様子で、
「なあクラウンくん、ベル嬢がどこにいるか知らないか!?」
「ごめん。この前から会ってないけど、なにかあったの」
「ここだけの話、昨日から帰っていないらしい」
「えええ!?」
詳細をたずねると――最後に彼女の姿を見たのは学園の教師で、市街区や居住区、レースの練習で飛んでいる川辺を捜索したものの、一向に行方がわからないという。
王都の門衛に問い合わせても、それらしき通行人を見たとの証言はなし。外壁に張られた感知魔法にも引っかかっておらず、箒で飛んで出た可能性もないとのこと。
「彼女のご家族も最初は家出を疑っていてさ。騒ぎにならないようにって俺んちのコネで捜索していたんだけど、今じゃ事件に巻き込まれたんじゃないかってかなり焦ってて」
「レースの重圧に耐えかねての逃走だとしたら、大事になっちまうと戻りづらいからな。とはいえまあ、これで競争相手がひとり減ったことにはなるか」
「あのねえガードナー!? そんなこと言っている場合じゃないでしょ!!」
ぼくは頭にきてしまって、つい声を荒げてしまう。
だけどガードナーはふんと鼻を鳴らしたあと、
「まあ落ち着けよ。お詫びにひとつ、愛しの先輩がどこにいるのか当ててやる」
「心当たりがあるのかい、ガードナー」
カイトも内心ではかなり腹を立てていたはずだけど、それ以上に手がかりが欲しいのか、穏やかな声で問いかける。
するとぼくの親友は、突然にまったく関係のない話をはじめた。
「――お前たち、魔法学園の七不思議を知っているか?」




