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ぼくの猫は破壊神 〜魔法学園の落ちこぼれ、最強の使い魔を復活させて成り上がる〜  作者: 芹沢政信
三章 校舎の地下に危険なダンジョンがあるという話
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3-2 暁の魔女団

「アハハハ! ハッハハ! ヒーッ! やっぱりよく似合うねえ!」

「ズモーッ!」


 女子の制服に着替えたぼくを見て、ハーレイ先生とパンジィがゲラゲラと笑う。

 悲しいかなパーティーの余興で女装させられることはよくあるし、からかわれることにも慣れてしまったので、ぼくはあえてお行儀悪くスカートを履いたまま大股で座る。

 すると先生はヒューヒューと苦しそうに息を吐きつつ、


「そうしていると、学園に通っていたころのアルーナを見ているようだなあ」

「誰ですか、そのひと」

「私のかつての教え子に、今の君みたいに大股で座る子がいてね。卒業後はたくましく成長して、暁の魔女団カヴンの首魁をやっていたりする」

「国家レベルの賞金首じゃないですか……」

「ちなみにその子、ハクラムの同期だよ」


 さらっと衝撃の事実を告げられた。

 ぼくは戸惑ったあげく、


「ハーレイ先生っておいくつなんですか? 今の言葉が本当なら、暁の魔女団のボスやハクラム師の若いころを知っていて、おまけにそのとき教師だったってことですよね」

「パンジィよりは年下さ。……おっと、レディに年齢の話をするのは失礼かな」

「ズモーッ!」


 どうやら怒ったらしいパンジィが先生の膝をぽかぽかと殴りはじめる。

 ていうか君も、女の子だったのね。


「懐かしいなあ。彼らも若いころは、今のクラウンくんと同じようにキラキラとした瞳で、各々が思い描く理想の未来を見つめていたよ」

「その口ぶりからすると、ハクラム師を教えていたというのは本当っぽいですね……」

「あまりよい先生にはなれなかったけどね。とくにアルーナは辺境の内乱に出兵し、悪名高き魔女となってしまった。もしかしたら今も王都のどこかに潜み、破壊活動の計画でも立てているやも」


 物騒このうえない話だけど、ぼくにとっても無関係とは言えないかもしれない。なぜなら五十年以上も前のその内乱がきっかけで王都に難民があふれ、スラムが形成されるに至ったからだ。

 お互い神妙な顔でいると、タイミングよくオーサが戻ってくる。

 気ままな散歩に出ていた猫サマを見て、ハーレイ先生がひとこと、


「破壊神を放し飼いにするなんて、クラウンくんも度胸があるなあ」

「なんだこのおっさん、全体的にキモイぞ」

「む……」


 あまりにハッキリ言うものだから、さすがのハーレイ先生も固まってしまう。

 そういえばオーサが寝てるときにしか先生は顔を出していないから、こうして会話をするのははじめてだっけ。


「見かけで判断しちゃダメだよ。悪いひとじゃないんだから」

「まあ害がなければどうでもいいにゃ。それより腹が減ったし帰るとしよう。今日のメシはなんぞや?」

「寮に戻ってから考えるよ。ていうか君、ほっぺたにクリームついてるけど」

「むむ、隠れて食ってたのがバレたか」


 どこで?

 盗み食いとかじゃなければ別に構わないけど、自由奔放なオーサだけに不安になる。

 そんなぼくらのやりとりを見て、ハーレイ先生がぽつりと言った。


「君たちは危なっかしいところがあるし、くれぐれも気をつけておくれ。純粋な心を持つものほど、闇に染まりやすいからね」


 どう答えたらいいかわからなくて、ぼくは無言でうなずく。

 目の前にいる猫は破壊神なのだから、隠れて盗み食いくらいならまだ可愛いものかもしれない。



 ◇



 翌日は授業が休みだったので、ひさしぶりにおでかけする。市街区のほうに用事があったし、そろそろオーサを学園の外へ連れだしてもいい頃合かと思ったのだ。


 朝早くに出たから王都もまだ眠りから覚めたばかり。冬も間近にせまった冷たくも澄んだ空気の中で、人々が一日をはじめる準備に精を出している。

 ぼくにとっては見慣れたこの風景も、古代の神にとっては珍しいものに見えたらしい。荷物といっしょに背嚢にぶちこまれていたオーサがひょこっと顔を出し、


「あやつらはなにをしておるのにゃ?」

「地下の水道から汲んだ水を運んでいるんだよ。古代の浄水施設を利用しているから、そのまま飲めるくらいキレイだしね」

「そういや古の竜どもも、やたらと水にこだわっておったのう。やつらの長いわく、よい水を使うとメシもウマくなるとか。で、今日はなにを食うにゃ?」

「君はそればっかりだなあ。市街区には美味しいお店がいっぱいあるし楽しみにしていて。キデック先生と決闘したとき助けてもらったし、目一杯ごちそうしてあげるからさ」

「それは楽しみだのう。しかし金は足りるのか、貧乏学生」

 

 オーサにそんな心配されるとは思っていなかったので、ぼくは頭をかく。

 でも今日は作りためておいた魔法のケープを売りにいくから、大丈夫のはずだ。


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