「大当たりはダンゴムシです」
先日家族と行った寿司屋で、こんな謳い文句のガチャガチャを見つけた。
思わず自分の目を疑う。なんだ、ダンゴムシって。
あの、小学生の頃よく触った、気味の悪い節足動物ならよく知っている。触ると丸くなって、いたずら好きな子供たちにボンドを垂らされる可哀想な虫。
しかしなぜ、子供に遊ばれる虫ランキングでアリに次ぎ不動の2位を獲得するあのダンゴムシが大当たりなのか。
握り締めた拳に汗がじわりと滲むのが分かった。
私は完全にこの奇妙なガチャガチャに心を奪われている。
気づいた時には鞄の中の財布に手を伸ばしていた。たったの200円。残酷な数字だ。200円あればコンビニで少し良いお菓子が買える、と心の中で自分を諭すが、硬貨をガチャガチャに入れる手は止まらない。
ガチャ、ガチャ、ガチャ……
節分の癖にいやに静まり返った寿司屋の中を、ガチャガチャ特有の小気味のいい音が広がる。
店員やまして家族などには絶対にバレてはいけない。
私は今、ダンゴムシ好きの変態と化しているから。
ゴトッ とカプセルの落ちる音が響く。速攻で掴んで鞄に突っ込み、家族には何事も無かったかのように振舞った。変態は終わりだ。
それから家に帰って早速自室に篭もった。逸る気持ちが抑えられない。早く開封したい。
おそるおそるカプセルを開け、目を開く。
入っていたのは、時限爆弾を模した時計だった。
は?
いやでも、冷静に考えればダンゴムシなんかより時計の方がマシだ。実用性がある。なんとなく出る気がしていたのに、出なかったからただ単純にびっくりしただけだ。それに私は大当たりの文字に踊らされていた。だって、「大当たりのパンツ」はなんか良い感じに見えるし。
その後、時間がズレていたのでプラスドライバーで時計を解体し、時間をぴったりに合わせた。
動かない。
電池は元々内蔵されているタイプなので、これで準備は万端な筈なのだが、動かない。
しかも、何度時計を合わせても、合わせた瞬間に何故か長針が7分戻る。怖い。
そういうわけで今その時限爆弾は、私の部屋の引き出しで、安らかに眠っている。動かない時限爆弾なんて意味が無いから。
誰か、この時限爆弾を引き取ってくれる方はいませんか。