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平凡な奴らのイカれた日常  作者: 月見 千夜
2/3

出会い

「チュンチュン」

目が覚めて最初に聞いた音は自分の声だった。

いつもならお母さんが起こしに来てくれるのだがお母さんはもうこの家にはいない。

つまり寝坊して遅刻しても怒る人がいないということだ。そう思って浮かれなが夜更かしし、4時頃にベッドに入ったにもかかわらず、起きた時間は6時半。これじゃあ、いつもと同じ時間じゃないか。朝の目覚めが一定となっていることに嫌気がさしつつも、ベッドからでて歯を磨き、顔を洗い、コンビニで買っておいたパンを食べた。ふと目についた写真を見る。家族全員で撮ったお母さんのお気に入りの1枚だ。みんな笑顔だった。

「はぁ。今頃見ててくれてるのかな?お母さん。空の上から。」

そう呟きながら窓から庭を見る。そこには大きな看板がある。

[がんばれ!!応援してるぞ美奈子!!

宇宙人に会っても話せば分かってくれるよ!!]

ホントバカな父親だな。見えるわけねーだろ。

宇宙からじゃ。


俺は私立溜池高校新2年生の中村誠二。

2年生は中だるみの時期だとか言われているけど最初からたるんどけばなんてことはない。

いつもの制服に着替えて、いつもの通学路を、いつも乗る通学用自転車でいつものように走っている。

ホント俺の親はバカだよな。何がしたいんだよ。

宇宙からでも見てるからとか言ってたけど、それを本気にして庭にメッセージ書くとかバカすぎるだろ。俺も手伝いで材料買いに行かせられたし、しかも俺の小遣いで。安かったけど、重いし、でかいし、チャリで行ったことを後悔し、あの親の息子であることも後悔した。

そんなことを考えて自転車をこいでいると、いつの間にか学校のすぐそばまで来ていた。学校の近くには立派な桜の木が何本も並んでいる。とても綺麗で春になると、あぁ…。春だなぁ……。キレイだなぁ……。と思う。それだけが俺の思う溜池高校の良いところだ。他には何かないの?と聞かれたら、ないよそんなの。と即答する。あの学校はまじでヤバいよ…。

その綺麗な桜の木の下を誰かが歩いていた。その人を追い抜いた。後ろ姿に見覚えがあった。だから、チラッと横目で見た。ブレーキをかけて振り返った。

桜並木に立っている人影。ここにいるはずのない人影。呆然としながらその名を口にした。──────「母さん?」




───────────────────────────

「何してるの?」

とりあえず話しかけた。

「えっとねー。…………散歩?」

散歩?散歩か、散歩かぁ、、、散歩???

「散歩?じゃねぇだろうがぁぁぁぉぉおまえぇぇぇぇ!!!」

ぶちギレた。母親に。

「はぁぁっ!?なんでいんの!!?あんただれ!?ホントに俺の母親?俺、宇宙に行ったと思ってた人が桜眺めてるとか思ってもみなかったんだけど!?え???これ夢????あっ!?夢かっ!!

ちょっと母さん、俺のほっぺ叩いて?」

夢なら叩けば目が覚めるんだっけ?夢ならいたいんだっけ?いたくないんだっけ?

「わかった。─────────────────なんで新学期早々遅刻してんのよぉぉぉぉ!!!」

バコォォォォン!!!殴られた。グーで。あ、ヤバい、まぶたが重い、あ、しんだ、──────────────────────────

こうして中村誠二高校2年生の波乱の日々が幕を閉じた。

中村誠二16歳、死にました。

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