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創世のソード・ブレイカー  作者: 柚木りん
第二章 思い出の鍵
9/70

● 迷いの先の願い~決着~ ●



◇◇◇



「見つけた!!」



ただひたすらに走り続けて、ようやく結界の核を見つけた。

それは水晶のようで中に術式が浮かんでいた。おそらくこれで間違いないはず。



「これを破壊できれば・・・!」



俺は自分の矢を取り出し、その水晶に突きつける。

しかし、思った以上に硬く一本の矢では歯が立たない。


魔力も使えない今、地道に砕くしか方法はなさそうだ・・・



「これは・・・結構時間がかかりそうですね・・・」






◇◇◇



「ハハッ!さっきまでの威勢はどうしたぁ!?」




クロウはそのまま腕や尾を振り回し、どんどん逃げる隙間をなくしていく。

攻撃が当たった壁や地面は砕けていき、こちらが動くのも困難になってきた。




「・・・ッ!」



砕けた破片が飛んできて、小さな傷が増えてきた。

逆にクロウは余裕そうだ。



「もう降参か?あっけないな。」



にやりと笑いながら言う。



すきをついて俺は攻撃を加えていくが、クロウは鎖や枷で防ぎ、逆にそのまま押し返していく。

防戦一方が続いている刹那——————





「終わりだ!」


「っ!?」



クロウの巨大な尾で壁に打ち付けられてしまう。



「カハッ!!」



そのままめり込むほど力強く押し込まれ、身動きが取れなくなってしまった。



「・・・チィッ!!」



「ハハッ!人間の体はなんと脆いものか!」



押し付けながらクロウは笑う。

力はだんだん強くなり、壁の岩が少しずつめり込み壊れていく。



「もう諦め・・・ん?」



クロウは急に動きを止めた。

尾になにか違和感があった。





打ち付けられた瞬間、俺はすかさず剣を体の前に持ってきて直撃を防いでいた。

ゆえに衝撃を受けたのは主に背中の方で、尾と俺の体の間にわずかな隙間を作ることに成功していたのだ。




「・・・諦めの悪いやつだ・・・!」



クロウは尾に力を込め続けるが、俺は負けずに両腕で剣を押し脚を入れられるだけの隙間を作ったら、今度は脚も使って押し返していく。

こうしてすり抜けるだけの隙間を何とか作った——————その時だった——————





    ・・・ドクンッ!!!・・・





「「!?」」




俺達は互いに、何かが()()()のを感じたのだった。





◇◇◇




「・・・やっと・・・壊れたぁー・・・」



結界の核、水晶に矢を打ち続け、ようやく破壊することに成功した。

その瞬間、洞窟全体に何かが広がり、同時に体を揺さぶられるように鼓動がなった。



「今・・・揺れたような・・・」



それ以降気配は感じない。

とりあえずルイスの所に戻ろうと思い立ち上がった。



「多分結界は消えたはず・・・ん。魔力も使える。」



破壊者(ブレイカー)の力が使えることも確認してから、ルイスのもとに走り出した。




水晶のかけらから、わずかに白い光が発せられていることに気づかぬまま・・・・・・






◇◇◇



「今のは・・・なんだ?」



先ほどの気配にクロウが気を取られている間に、俺は一気に力を込め、



「・・・ハアアアァァァ!!!」


「っ!しまっ・・・!!」



尾を押し返し、態勢を立て直す。




「てめぇ・・・」


「・・・気づかないのか?」




身構えるクロウに対し、俺は問いかける。



「なに・・・」


「今のはおそらく、ファレルが結界を解除したんだろう。つまり・・・魔力、戻ったぞ!」



そう言って俺はソードブレイカーを発動する。

(ブレード)をたくさん生み出して、構えた。




「・・・ハッ!魔力が戻ったからってどうだっていうんだ!所詮体は人間だ、体格差なら圧倒的にこちらが上だ!!!」



クロウはそのまま腕を振るう。

そこにはめられている枷は、先ほどまで俺が攻撃を加え続けて生まれたわずかな傷がある。

俺は剣を構え直し、その傷めがけて魔力を込めた一撃を振るう。




ガシャアン!!




「んなぁ!?」



枷はそのまま地面に落ち、連動するように鎖からほかの枷も崩れ落ちていく。

すかさず俺は、ソードブレイカーでクロウの頭の上に飛んでそのまま剣の峰で頭をぶん殴った。

その衝撃もあって、すべての鎖と枷が壊れた。

重苦しい音が洞窟内に響き渡る。


「イ"ッッッッダアアアアァァァ!!!!?」



「・・・これで・・・」




剣を鞘に納め一息つくと、足音が近づいてきた。




「あ、やっと着いた!ルイス!!だいじょうぶ・・・え?」


「ファレル、お疲れ。終わったよ、すべて。」




ファレルは来た時同様固まってしまっていた。

無理もない。

なんせ先程までいたはずの巨龍の姿はなく、そこにいたのはちょこんと肩に乗るくらいの小さな龍しかいなかったからだ。



「もしかしてさっきの叫び声・・・えっと・・・どゆことです?」

「うっがーーー!!だから嫌だったんだよーーー!!!」

「あ、同じ声だ。」



その小さい龍はジタバタ暴れだしたが、地面が砕けることはない。



「ん、いったん説明するからとりあえず逃げないようにこいつ捕まえてて。」



ファレルは驚きながら結界(シールド)でその龍を囲い運びやすくした。

その間に俺は軽く手当てをし、動けるようにしてからファレルに外に出るよう入り口方面を指さし歩き出す。

結界の中で龍は暴れていたが、今の姿では魔力の戻ったファレルの結界を壊すことはかなわない。





◇◇◇



「え"!!これがクロウですか!?」

「ん、その通り。」

「・・・ケッ!」



入り口に出てからある程度説明したら、案の定ファレルは驚いている。

小さくなったクロウは、結界の中で腕を組んでふてくされてしまっていた。



「長い間封印されたことによってこの洞窟内と外では時空間がずれてしまい、その間に魔力もほとんど失ってしまってすべての結界が解除された今、体を維持することが出来なくなってしまったんだ。」

「な・・・なるほど・・・?」


「でもって長いこと他人と話すこともなかったため、引きこもり体質になったんだよな?(笑)」

「んだよ!悪いか!!笑うな!!」




言いながら俺は笑いが止まらなくなってしまってクロウがキレてる。


そんな中、ファレルはまだ悩んでいるようだった。



「・・・しかしルイス、こうなるってこと分かってたならどうして仲間にしたんです?魔力がないのでは、戦えないのでは?」


「・・・別に戦いが目的じゃないよ。」



静かに目を伏せ、ゆっくり歩きだす。

思いがけない返答で二人とも驚いている。



「ファレル、もう結界はずしていいよ。」

「え、あ、はい・・・」



言われるままに結界を解除する。クロウは逃げ出そうとはしなかったが、じーっと俺のことを見ている。



「あいつを助けるために、お前の力が必要なんだ。だから魔力が戻る手助けはする。欲しいものがあるならなるべくそろえるよ。」



「なんで・・・そこまで・・・」



自分にそんな価値はないって顔をしている。さっきまでの元気は何処に行ったんだよクロウ。

あまりの変わりように笑ってしまう。



「お前の力は、俺たちにとって希望なんだ。それに、同族がいつまでも地の底にいるのも耐えられないしな。・・・この手で助けられるものはすべて助けるって決めたんだ・・・あの日にな・・・」




そのまま俺は歩き出す。後ろからファレル達がついてくるのを感じながら。





◇◇◇




「・・・あんな奴について行くお前も変わってんな」

「え・・・そうですか?」




ぼそっとクロウがつぶやいた。

その質問自体不思議に思ったが、そのまま答える。



「・・・彼はすべて助けたいんですよ。あの日に止まってしまった自分のためにも。

 そして進めなくなってしまった者達に新たな道を作り生かしていく。それが彼なんでしょう。」



俺は思ったままを言った。



「単に新たな仲間が欲しかったのもあるとは思いますけど、あなたが来てくれるのはすごく嬉しいと思いますよ。今までずっと一人だったみたいですし・・・生きてる者は。」



「・・・・・・」



クロウは何も答えなかったが、そのままルイスの後を追っていた。

俺も、今の彼なら接しやすいし龍だからこそ力になることもあるだろうと思った。

龍のことをもっと知るチャンスでもあるので、本当にうれしかったのもあったがそれは誰にも言うつもりはない。



この次は一体どんな存在と会えるのか・・・少し旅に楽しみが出来ていた・・・









◇◇



「ちなみにクロウ、本気で殺すつもりだったろ・・・」(ズキズキ・・・)

「あぁ?負けたら喰っていいって言ったじゃねえか。」(二ヤッ)

「どこかでちゃんと治療しなきゃですね・・・二人ともケンカしない。」(ハァ・・・)



波乱万丈になる予感・・・






ケンカ仲間ができた回です(;'∀')

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