〇 共にある命 〇
◇◇◇
「よしよーし。」(リイン)
「元気だして~?」(キリヤ)
『リュー』での一件後、リイン達はルイスに言われてリューの村から少し離れた場所で待機してカイキを慰めていた。護衛にレッカが残っている、その腕の中には、眠り続けている小さな獣の姿があった。
「・・・・・・」(カイキ)
「・・・俺はいつまでこのままにされてりゃいいんだ?」(クロウ)
少し不貞腐れたクロウ、理由はと言うと・・・
「機嫌が良くなるまでじゃない?」(ユウキ)
「それがいつかって聞いてんだよ!!」(クロウ)
カイキはずっと小さい龍の姿のクロウを抱きしめていたからだ。後ろから羽交い締めにされ、動けない状態だからである。
「・・・うー・・・」(カイキ)
そうこうしているうちに、カイキはポロポロと泣き出してしまった。レッカが終始オロオロしている。
「あらら、泣かないで~!」(リイン)
「大丈夫だから!ほら、おやつあるよ~」(キリヤ)
「どっから出てくるの。」(ユウキ)
「泣くなよ! 頭が濡れる!」(クロウ)
終始、森の中に泣き声と騒がしい声が木霊するのだった・・・
◇◇◇
「・・・泣いてますね~・・・あれ、ほっといて大丈夫ですか?」
「とりあえずあやすの慣れてそうなメンツ残したし大丈夫だろ、俺らはこっちが先決だしな。」
「ですね・・・」
ルイスとファレルはその先を見つめる。
政府軍と戦った後、ルイスとファレルはカイキを仲間に預けてからリューの中心地に来ていた。氷の壁で押し流した政府軍は未だに気を失っていたので、そのまま縛り付けてとりあえず放置している。今リューの地には、ルイスとファレル、そして彼の三人・・・
この地の後始末の為にルイス達は残っていたのだ。
「・・・これからどうするのか聞く前に・・・」
前を見据えて、ルイスは言う。
「今は一体どっちなんだ?」
「・・・」
彼は完全には振り向かず、不敵に笑う。
そしてファレルが続けて言う。
「・・・さすがに俺でも違いは分かりますよ、それにさっきカイキの中にいた方ですよね?」
「・・・ハハッ!」
そう笑う彼は、また前に向き直り自分の身体の前で両手をパンッと鳴らして手を合わす。
そして手を合わせたそのままでボソッと呟いた。
「人の子にしちゃ、やっぱり聡いなぁ・・・」
「「 !! 」」
そう言うと同時に彼は合わせていた手を前に開き、そして炎が広がるように魔力を放出した。
┈ ゴウッ!! ┈
それは炎のように真っ赤な訳では無いし光っているのか全体的に白っぽくよく見れないが、確かに熱があり、そして揺らめいていた。
「こ、これは・・・!!」
「・・・燃やしてんのか・・・? けど・・・」
「いいんだよ。」
彼は、静かに語った・・・
「思い出は全部回収した、必要なものも・・・だからもう、眠らせなきゃ・・・この場所を、二度と争いの場にしない為にも。」
「・・・お前は・・・」
彼は静かに笑って、ゆっくり振り向いた。
「初めまして。」
◇◇◇
リューの中心地にて何らかの魔法を展開するレイ。中心から外に向けて発動しているので中にいる三人はすぐには外に出られない・・・飛ばない以外は。
レイはルイス達を見つめながら話す。
「・・・この火が消えるまでまだ時間がある、それまで話そうか。今度こそ、全部。」
「・・・レイ?」
「・・・まずは自己紹介よろしく?」
「もちろん」
そう言うと、レイの身体から何やら巨大な影がモヤモヤと出てきた。
「ぅえ!?」
「これは・・・」
その影はレイから離れることはなく、けど悪影響を及ぼしている様子もなかった。
そのままレイは続ける。
「・・・俺は“クロウ”でもあり“シージュレイン”でもある。あとは見ての通り。」
「見ての通りって・・・」
ファレルはゆっくり見上げた、その影を。
モヤモヤと揺れる影は、やがてその揺らめきを止め、次第にシルエットを露わにする。
それはファレル達もよく知る、あの姿に瓜二つで・・・・・・
「・・・なるほど、これで合点がいったよ・・・」
ハァーっとため息を着きながらルイスが口を開いた。
「・・・エギルに殺されなかったその身体、破壊者と魔法の力・・・そしてクロトが落ちる前に呟いたあの言葉・・・今の状況見れば納得だよ・・・」
「・・・フフ・・・」
そしてルイスは影に向かって指をさして話を続ける。
「“シージュレイン”はお前の本名、お前達は身体と魂を融合させた龍人って事だろ?」
「・・・“正解だよ”」
その瞬間、影はハッキリと形を成し、透明ではあるがさっきよりもよりクッキリと見えるようになったのだった。
『・・・初めまして創世龍よ、我が名はシージュレイン。察しの通り、このクロウとは切っても切れぬ縁で繋がっている。以後、お見知り置きを。』
「・・・いやいやいや待ってください!」
唐突にファレルが叫ぶ。
「融合ってそんなこと可能なんですか!?てか今はそれ幽霊なのかそもそもそんなことって」
「落ち着け。」
ビシッとルイスが突っ込む。
そしてシージュレインも笑っていた。
『・・・フハッ。普段は聡いのにこういう時は慌てるんだなぁ?』
「フツーの人間だったならまず出会わない状況ですからね一般的な反応です笑うな!」
「・・・落ち着け。」
普段冷静なファレルも情報に追いついていない状態のようだ・・・
そんなやり取りを見ていたレイが、静かに笑っていた。
「・・・この事も含めて、説明するから聞いてもらえるかな? 火が消えるまでまだまだあるし。少し、長くはなっちゃうけど・・・」
それを聞いてファレルはようやく大人しくなった、ルイスもレイに向き直り、レイはゆっくり話し始めた・・・
「・・・カイキに話してから、聞いて貰いたかったんだ・・・」
◇◇◇
遅くなりました!そしてまた過去編始まります!




