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創世のソード・ブレイカー  作者: 柚木りん
第二章 思い出の鍵
7/70

● 白の追憶、黒の願い、灰の邂逅 ●



「・・・ずいぶん深い洞窟ですね・・・」


「まぁ、封印するにはうってつけの場所だよなぁ・・・」




ファレルと灰色の封龍に会うために、奴が封印されている洞窟内を歩いていく。

この洞窟自体が結界の役割を果たしており、あちこちに魔力封じの印が施されていた。

ここでは魔力は使えず、俺達破壊者(ブレイカー)も武器と共にただの人になっている。



「・・・しっかし、ほんとによかったのか?さっきも言ったが下手すりゃ戦闘になって危険だぞ。」


「うっ!!・・・そりゃあ・・・ヤバそうとは思いましたけど・・・やっぱり気になりますし・・・

 人間の姿をした龍(コルスさん)は見ましたけど実際の姿の龍を見てみたい興味もありますし・・・」




もごもごとファレルは口ごもる・・・そして、意を決したようにつぶやいた。



「・・・あなたの事も・・・知りたいですから・・・」


「っ・・・そうか・・・」



やっぱりこいつにはかなわないなって思った。

辺りは暗闇が広がり、俺達の足音だけが響いていた。




「・・・まだ奴の所までは長いだろう・・・歩きながら昔話でもしようか・・・」


「・・・昔話?なんです急に・・・」




ファレルはそう言って、不思議に思いながら俺の次の言葉を待ってくれていた。

足は止めず、俺は静かに語りだす。





「・・・ある兄弟が願った、儚い夢の話だ・・・」






◆◆◆






昔々、ある所に双子の兄弟の龍がいた。

彼らはほかの龍達のように魔力も力も強くはなかったが、他にはない特別な力をそれぞれ持っていた。

人間達とも共存していて、平和に暮らしていた。



しかしある時、食料をめぐり人々と龍達、そして人と龍の間に争いが起きた。

水は干上がり大地は枯れ、星の魔力も尽きていき、そしてたくさんの血が流れた。



それを嘆いた兄弟の龍達は、己の力を使って争いのない世界を創ろうと思った。


弟の力は "創造” 新たな星の命を生み出した。

兄の力は "生成” 新たな星の形を造り出した。


こうして自然豊かな星が生まれ、龍や人々を移した。

新たに虫や動物、様々な人々や自然を生み出し造り出した。

兄弟が創った平和はしばらく続いたのだった。





そんな平和が500年続いた・・・ある日のことである。

見たこともない生命体が龍や人々を襲うようになっていた。

それらは少しずつ数を増やし、あらゆる魔力を吸収し、今まで築いてきた平和を壊していったのだった。

のちにそれらは・・・「魔物」・・・と呼ばれるようになった。



光あるところに闇はある。

魔物は人々や龍のわずかな心の闇が集まりそれが魔力を帯びて生まれたものだった。

闇はどんどん集まっていき、光を覆いつくそうとしていた。

魔物には通常の武器は効かず、龍の鱗も貫くほどの力を持っていた。

こうして龍や人々は、少しずつ数を減らしていった。

その闇を、利用しようとしている者がいた・・・・・・




その頃兄弟龍達は、僻地にある小さな村で人間達と共存して暮らしていた。

兄弟達は人の姿をとっていたが、村の人々はちゃんと正体を知ったうえで一緒に過ごしていた。

そして兄弟ととっても仲の良かった人間の女の子がいた。

魔力はすべての生命が持っているが、彼女は特別だった。

破壊者(ブレイカー)だったのである。




「またふもとに魔物がいたよ・・・最近増えてるよね・・・」

「!また退治に行ってたのか?俺達がやるからあまり無茶するな・・・」

「大丈夫だよ!ちゃんと武器も作ってくれたじゃない!あたし強いし!」

「確かにそうだけど・・・村から離れるな」



兄弟も心配していた。

対処しようとしていたが、他の龍達より弱い二人には為す術もなく

しかし彼女が破壊者(ブレイカー)に目覚めてしまって、何もできない自分達がもどかしかった・・・



またあの悲しい争いがあるのか・・・

どうすればそれを回避できる・・・

どうすれば彼女を危険に合わせずに守れる・・・

そんなことをずっと考えていた・・・




・・・ある日・・・



森の中で薪に使う小枝を3人で集めていた時のことである。



「・・・あれ・・・?なんかあっち、明るくない・・・?」

「え・・・・・・っ!!?」



彼女が気づいて兄弟がその方向に振り向くと目にしたのは、ありえない光景だった。




村が・・・燃えていた。



「・・・なんだ・・・これ・・・!」

「村が・・・お父さん!お母さん!」

「っ!待て!!」



彼女が走り出し、止めようと思っても間に合わなかった。

急いで兄弟も追いかける。



村に着いた時には・・・もう遅かった・・・



「・・・ぁ・・・っ!」

「「!!!」」



辺りは炎と血で赤く染まり、村の人々は倒れていた。

立っていたのは、ここにいるはずのない魔物達。

何処から来たのか・・・大量に暴れまわっている。

その中心に・・・一人の人間がいた。



「・・・おや、そこにいたか。」



その男は兄弟達に気づくとニヤリと笑い、少しずつ近づいてきた。



「!来ないで!!」



彼女は武器を構える。

それを兄弟達は止める。



「何やってる!逃げるぞ!!」

「でも!みんながいるのに・・・このまま何もしないで逃げるなんてできないよ!!」

「だからこそ!お前だけでも生きないと・・・」



兄弟は龍だから。人間より頑丈だ。

だから彼女だけでもなんとか逃がそうとしていたら・・・



「やっと見つけた・・・()()()()()()()()()()()



そう言って男が手を振りかざすと、それを合図のように魔物達が一斉に襲い掛かって来た。

かわす間もなく、兄弟は吹き飛ばされてしまう。



「うぁ・・・!!」

「がっ!・・・」



そのまま地面に叩きつけられてしまった。


「!・・・二人に何すんのよ!!」



魔物を倒そうと彼女は懸命に武器を振るが、魔物の力が強すぎた。

武器は魔物には届かず、弾かれてしまう。



「あぁ・・・・・・」



カシャンと空しく地面に響く。もう彼女には届かない距離に落ちてしまった。




「!・・・逃げろおおおぉぉぉぉ!!!」

「やめろぉー!!」



二人の叫びは・・・届かない。



彼女は魔物の爪に、無残にも引き裂かれてしまった・・・



「あぅ・・・・・・」



その体は重々しく倒れる。

兄弟の目には、赤く流れる血が広がった。



「あぁ・・・ああああああぁぁぁぁ!!!」




兄は叫ぶ。何も出来なかった己を呪いながら。



「・・・・・・・っ!!」



弟は泣く。何も守れない己を恨みながら。






そんな二人を、男は見ていた。



「・・・やれ。」



その言葉を合図に、再び魔物達が動き出す。

一部の魔物は弟の方に向かってきた。

動けないように絡みつき、一匹が首筋にかみついた。


「がぁ・・・っ!」


首から激痛が走る。どうやら弟の魔力を吸収しているようだった。



「っ!やめっ!!」



その様子を見た兄が助け出そうと動き出す。

しかし吹き飛ばされた時のダメージが大きく、素早く動けずにあっさり他の魔物に捕まってしまった。

そして同じように首筋にかみつかれた。


「あぅ・・・っ!」



再び首から激痛が走る。

魔力を直接吸われていくのが分かる・・・どんどん動く力も無くしていった・・・


しばらくすると、男が動き出した。



「・・・こちらを連れて行こう。そっちは程よいところで切り上げろ。」


そう言って男は動けない弟を担ぎ上げ、魔物達と共に引き上げようとしていた。



「・・・ま・・・て、そいつを・・・どうするつもりだ!!」



地面に指を食い込ませ、何とか立ち上がろうと兄は動く。

かみついていた魔物はすでに男の方に引き上げていた。

そんな様子を見て男はにやりと笑い、こう言った。


「今はこちらで十分だ。お前は必要ない。・・・研究が進んだら迎えに来てやるよ。」



「!!!」



そして男は弟を連れて魔物に乗って村から遠ざかって行った。

後に残ったのは、血と死臭と・・・悲しみと後悔だけだった・・・



「・・・ぅぁ・・・」





「あああああああぁぁぁぁぁ!!!」





兄は叫ぶしか出来なかった。

魔力も奪われ弟も奪われ、村も仲間も失った・・・



時間を戻せれば・・・・・・




何度思ったことだろう。

ただただ繰り返し、叶うはずのない願いを祈ってた。

そんな時・・・・・・





「・・・・・・ぅ・・・・・・」

「・・・え・・・」



わずかに声が聞こえた。

聞こえるはずのない声・・・辺りを見回す。

するとかすかに・・・彼女の体が動くのが見えた。



「!・・・おい・・・俺の、声・・・聞こえるか・・・?」

「・・・・・・ぁ・・・・・・」



時間の問題・・・でも確かに、彼女は生きていた。

俺はゆっくりと、彼女に近づく。

辛うじて生きている彼女は、もう目も見えていないようだった・・・

だから・・・・・





◆◆◆




()()・・・・・・」

「っ!」



「残ってた最後の力を使って、レッカの武器と彼女の魂を新しい形に造りあげた・・・

 レッカを生かすために・・・こうするしかなかったんだ・・・」




黒い長剣(ソードブレイカー)を握りしめながら話す。

今でもあの時の光景は鮮明に思い出す。

忘れるはずがない・・・あいつのことは・・・



今までの話を聞いてファレルは驚きを隠せないでいる様子。




「・・・それじゃあ・・・やはりあなたは・・・!」




ファレルの方を振り向いて、次の言葉を発しようとした




その時・・・・・・





『・・・・・・だれだ・・・・・・』



「「!!」」



二人同時に声のした方に振り向く。

いつの間にか、洞窟の最奥にたどり着いていた。

その先には空間が広がっており辺りは相変わらず光も届かない暗闇で、目が慣れてきてもぼんやりとその声の主の影しか捉えることしか出来ない。

だがそれでも、その存在が普通の人間よりはるかに大きいことは気配で察した。




「なぁ・・・!?」



ファレルも開いた口が塞がらない。

俺はその声の主に挨拶をしに行く。




「・・・久しぶりだな。クロウ。」


「んーーーーーーーーー・・・・・・?」




大きな顔がのぞき込んできた。

これでようやく、俺達にもその姿を確認することが出来た。

体中を鎖で縛られた、灰色の龍。



「んあーーー!!おっまえ!()()()()かあ!そんな姿だから驚いた!いやぁー久しぶりだなぁ!!」

「あぁ、お前も。なんだかんだで元気そうだな。」



ようやく俺を認識した灰色の龍ことクロウは、急に元気なトーンになった。

こんなところに尋ね人なんてくるはずもなく、久しぶりの外の空気だったんだろう。

俺達の様子を見ていたファレルは、ポカーンとして動けずにいた。

そしてなんとか口を動かすのだった。


「え、ええと・・・知り合い・・・なんですね。それに・・・シロガネって・・・」


「んん・・・?そっちは・・・人間・・・?餌か・・・?」

「違う!!喰うな!!俺の今の仲間だ!!」

「仲間ぁー!?」



ファレルの質問に答える前に、クロウは訝し気な顔をする。



「おいおい・・・何言ってんだ!人間が・・・仲間だと!?

 人間ってのは俺達みたいな力を利用してたくさん醜い争いをしてきた奴らじゃねぇか!それでどれだけ死んだと思ってんだ!俺を封印したのも人間だし・・・そんな奴らについてんのかお前は!?」


「・・・あの時も言ったが、すべての人間が悪いわけではない。それにこいつは違う。そんなことはしない。」

「八ッ!どうだか」




・・・違う、こんなことを言いたかったんじゃない・・・

人間のせいで龍がたくさん死んだのも事実だ・・・人間嫌いも仕方ないけど・・・




「ここに来たのは・・・お前を仲間にしに来たんだ。」

「・・・なに?」

「・・・ちょ!ルイス!何言ってるんですか!?」



我に返ったファレルは慌てていたけど、俺は本気だった。

俺があいつを助けるためには・・・こいつの力は必要だった。



「・・・本気か・・・?俺が!人間(こいつ)と!一緒にいれってか!?」

「あぁ・・・その通りだ。」

「・・・ふざけるな!!!」



そういってクロウは大きな腕を壁に打ち付ける。

腕につながっている鎖はジャラリと大きな音を立て、腕に引きずられ壁に打ち付けられる。

壁の岩が一部崩壊し、その威力を物語っている。



「俺はここに封印されてんだよ!仲間言う前にこれをどうにかしろよ!!それに一緒に来いっていうならな・・・その男を俺の目の前から消してから言えや!」


「・・・そうだよな・・・お前はそう言うと思ったよ・・・」



クロウの言葉を確認してから俺は鞘から剣を抜き、構える。



「俺がここから出してやる!封印を解いたら俺達と大人しく一緒に来てもらうぞ!」



俺の言葉にクロウは少し驚いてから・・・笑った。



「ハッ!面白れぇじゃねえか・・・だったら、もし出来なかったらお前らまとめて俺の胃袋の中に入ってもらうぞ!」

「・・・あぁ、いいぞ。」

「・・・って、えええええ!!?俺もですか!?」



それぞれの言葉を確認してから、お互いに戦闘態勢をとる。

いくら空洞が広がっているといっても、その半分くらいがクロウの体で埋め尽くされ、鎖が移動の邪魔をする。

クロウにとっても振り回せるほど鎖は長くされているが、壁につながっている時点で動きは制限される。

そして体格差。クロウは体が大きい分その一撃も大きいが、俺は人間の姿だから小回りが利く。

勝機は五分五分だろう。

ファレルはこの空洞の入り口辺りで固まっている。それだけ下がってた方が、影響は少ないだろう・・・



「・・・どうなっても知らないからな。」

「安心しろ。()()()()()()()()()()()()()()。」



にやりと笑って低く構える。目もだいぶ慣れた。今ならすぐに動ける。この空洞の形を把握してから、目線をクロウに向ける。

すると、大きな拳がこちらに迫って来た。





「・・・その減らず口!へし折ってやるよ!!」







遅くなりましたー!!(;゜Д゜)

今のルイスが出来た瞬間、その真実、そしてバトルが続きます。

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