○ 空の守り人 ○
「・・・守り人・・・?」
ファレルはカイキ(?)に尋ねるが、カイキ(?)はそれには答えず首を横に振る。
「どーでもいいが、あまり声をたてない方がいいぞ? この場所に敵さんが居ることにはかわりないんだからな。」
「「はぁ!?」」
その瞬間、直ぐに辺りに意識が向かう。と、同時に皆、口を押さえる。
すぐ近くに、気配がした。
[・・・馬鹿な、一体・・・]
[どういうことだ・・・]
声が、聞こえる・・・
確かにこの場所にいるようだ・・・しかし、相変わらず姿は見えない・・・・・・
「いやいやいや、どゆこと!?」(こそこそ)
「見えないのにいる!?」(こそこそ)
皆テンパってあたふたしている。
「さっきまでと同じ場所だが・・・違う・・・空間・・・?」(ファレル)
ファレルは一人分析していた。
そんな中で、カイキ(?)が口に人差し指を当てながら静かに皆に指示を出した。
「・・・とりあえずゆっくり端に移動するぞ、ヤツらの位置は指示すっから着いて来い。」
そう言って静かに歩き出すカイキ(?)。
それに続いて皆も口に手を当てながらついて行く。
ファレルだけは、歩きながらもずっと考え込んでいた。
「・・・・・・(ふむ・・・)」
◇◇◇
「で、早速話してもらおうか?カイキの中のオッサンかオバサン。」
政府軍に気づかれないようゆっくり静かに移動を終えたファレル達。村の端まで着いた途端にクロウが問いただす。が、しかし・・・
「うーん・・・この阿呆にも分かるように説明するには・・・」(カイキ(?))
「だれがあほうだぁ~~~~!!!!!」(クロウ)
「「クロウ君抑えて!!」」(キリヤ&リイン)
結局騒がしくなっている・・・
その時、「はぁ~・・・」 と、ため息をついてから話し始めたのは、ファレルだった。
「・・・ま、確かに。カイキの中にいるので実際男か女か分かりませんね。(喋り方男らしいですが。)まずは、あなたどっちなんですか?」
ファレルの質問に、カイキ(?)はにこやかに答えた。
「ん? それは男だよ。女がこの器に入ってたら大変じゃない?」
「だったら最初からそう言いなさいよ・・・」
まだまだファレルは続ける。
「なら、今のこの状況について教えてくださいよ。大方、時空移動したってところでしょうけど。」
それを聞いた他の皆は、声には出さなかったが大いに驚いていた様子だった。目を丸くしている。
カイキ(?)もまた、キョトンとしていた。
「お前さん・・・ホント賢いな? 普通「お前はナニモノダー!」じゃないの?」
指をさしながら冗談めかして言うカイキ(?)。
それに対してファレルは得意のアレを発動する・・・・・・
「話す気があるならいくらでも聞きますが?(ニッコリ)」
「・・・・・・」
さすがのカイキ(?)も言葉を無くして目が他所をむく。黒ファレルはどんな相手をも恐れさせるらしい・・・
「・・・コホン。話を戻すが。」(カイキ(?))
「あ、逃げた。」(皆)
息を整えて説明を再開するカイキ(?)。
「今、あいつらとお前さんらが互いに見えてないのは、別次元にいるからだ。」
「「・・・・・・ハァ!?」」
突拍子もない話に、クロウやユウキは訝しげな顔をする。リインとキリヤは頭の周りに?マークが飛んでいた。
カイキ(?)はそのまま続ける。
「生き物は皆死んだらあるべき所に還る。虫や動物もな。その場所は魂のレベルによって行ける場所違うんだけど・・・今お前さん達を連れてきたこの次元が四次元世界。三次元世界が生きてるやつらが住む場所で今政府軍が居る世界。だから簡単に言えば1個上の階だな。」
「「・・・・・・」」
ファレル以外の皆は固まっていた。
「おーい、ついてきてるかー?」
「・・・大丈夫ですか?」
カイキ(?)とファレルは揃って心配そうに皆を見回していた。
そこにクロウがツッコミを入れる。
「なんでお前は分かってんだよ!!」
「・・・彼の様子とさっきの説明聞けばだいたい察しますよ。カイキの身体操ってる時点で相当な魔力の持ち主か、すでに実体の無い存在かと推理出来ます。そしてこのリューにたどり着いてからも、本体が出てくる気配ありませんし・・・さっきの魂の説明したのも含め後者が正しかったのかなと。そういう事ですよね?カイキの中の方。(にっこり)」
黒い笑みでカイキ(?)を見つめるファレル。当の本人はそれを受けて少し引いていた・・・
「・・・君、賢すぎて逆に怖いんですけど・・・」
「それはどうも。(にっこり)」
二人の会話が終わるやいなや、キリヤが頭をひねりながら口を開いた。
「うーん・・・? ってことは・・・俺達は死んではないけど、死者と同じ世界にいるってこと?」
「正解。ま、そういうことだね。」
あっさり答えるカイキ(?)。
まだまだ皆頭を悩ませていたが、ファレルは一言、彼に言う。
「時・・・と言うより、時空間って感じですね。」
「ま、次元移動出来るようになったのはこの身体になってからだけどな。」
そんな会話を聞いていたユウキが、ボソッと言う。
「・・・次元移動とかそんなスゲー事出来るのって相当スゲー奴なんじゃないの?ほんと何者なのアンタ・・・」
そんな時だった・・・・・・
── ・・・ゴゥ!!! ──
◇◇◇
「え、なんの音!?」(リイン)
「なんか・・・熱くない・・・?」(キリヤ)
謎の音とともに現れた違和感に皆戸惑い始めた。
カイキ(?)は一人、リューの中央を見つめ険しい表情をしている。
「・・・政府ってのはそんなに偉いのか・・・?何しても許されるってのか・・・?」
見つめる先には、ゴウゴウと火の手が上がっている・・・・・・
[このまま焼き尽くせ!]
[必ずいるはずだ!!]
相変わらず姿は見えないが、声はハッキリと聞こえてきた。
政府軍だった・・・
「あ、あいつら・・・!火まで付けたってのか!?つーか火炎放射器かあれ!?」(クロウ)
「このままここに居たら、こっちも丸焼きになっちゃうよ!」(リイン)
「・・・幸い、アイツらにもこっちの姿は見えてないんだ。火が噴き出してる付近にいるのは間違いないんだし、燃やされる前に叩き潰そうか?」(ユウキ)
「・・・ユウキ君・・・台詞が物騒だよ・・・」(キリヤ)
その時、政府軍の気配がザワザワと騒がしくなったのを感じ取った。
「なんだ・・・?」(ファレル)
そしてカイキ(?)がボソッと呟きながら、右手でパチンと指を鳴らした。
「・・・・・・遅いんだよ。」 ー パチン ー
すると音とともに視界はひらけ、リューの中央に火炎放射器を持った政府軍の姿が見え始める。
その政府軍は、ある一箇所を見つめていた。
「あ・・・・・・!!!」
その先にいたのは・・・
ファレル達が待ちに待っていた二人の姿・・・・・・
「・・・人の故郷に土足で踏み込んで、ただで済むと思うなよ・・・!!!」
魔力を右手に纏いしレイと、剣を翼にして構えている、ルイスの二人だった・・・・・・
◇◇◇
「剣の破壊者だ!!!」
「クロウもいる・・・鉱山に向かった連中はどうした!!?」
二人の姿を見た政府軍は驚きオロオロしている。その間にルイスは剣を展開し数を増やして政府軍を囲っていく。
「しまっ・・・!!!」
「・・・舞え。」
ルイスの合図で展開された剣が動き出し、政府軍を次々に切り裂いていく。
「ぐあっ!」
「がっ!!」
展開される剣は実体がないから傷を負うことはない。しかし衝撃は残る。魔法で洗脳され操られていたり魔物相手にはかなりの衝撃であろう。切られた政府軍は一人、また一人と倒れていく。
「・・・くそ! この逆賊がぁ・・・!!!」
攻撃を免れた政府軍の一人が、火炎放射器を構えルイスの方に向き直る。しかし、時すでに遅し・・・
「ダメだよ。」
「!!!」
そっと火炎放射器を右手で押さえる男。
すでに、レイが捉えていた。
「言ったでしょ? ただで済むと思うなよって。」
その瞬間、レイが触れていた所からバキバキと大きな音をたて、その男の腕ごと火炎放射器を凍らせていく。
「ぅぁあああああ!!!」
男は、完全に身体が凍る前に火炎放射器を手放した。すると、男を覆っていこうとした氷は両手首の位置で動きは止まったが、手放した火炎放射器は完全に凍りついており、地面に落下した瞬間接触した箇所から砕け散ってしまった。
「ぐうぅぅ・・・」
男は両腕を押さえて苦しんでおり、しばらくすると気を失った。レイから離れたからか、少しずつ氷は溶けていっているようだった。
「・・・・・・」
その様子を冷たい目で見つめていたレイは、その後右手を上に構え魔力を込め巨大な氷を空中に生みだした。
── パキパキパキ・・・ ──
その氷はみるみるうちに大きくなり、リューの村の半分ほどの大きさになっていった。
そして一言・・・
「・・・散れ。」
その言葉と共に右手を前に振り下ろす。するとビシビシとヒビが入り、村一面に砕け散った。
「ぐぁっ!」
「っ! 下がれ!!」
飛び散った氷の破片は大量で、燃えていたリューの火の勢いを抑えていった。
そんな様子をただ眺めるだけになっていたファレル達・・・
「・・・つよっ!!!」(リイン)
「ルイス君は当たり前として・・・レイさんスゴすぎる・・・」(キリヤ)
「そういえば、ちゃんと戦ってるの見るのは何気に初めてじゃね?サグでは操られてたわけだし・・・」(クロウ)
「・・・・・・」(ファレル)
そんな時、ルイスとレイの戦闘を見ていたカイキ(?)がレイを指差しながらファレルに質問しだした。
「・・・なぁ、なんでアイツはレイって呼ばれてんの? 名前クロウだよねぇ・・・」
それを受けファレルは「あぁ。」と思い出したように話す。
「あぁそれは、こっちのクロウと名前が一緒って事で呼び名を変えることになったんですよ。[シージュレイン]から間を取って[レイ]ってことで。本人も了解してますし。」
そう言って龍のクロウを鷲掴みにしながら説明をするファレル。
「グエッ! なんだよいきなり!」
急に掴まれたことで苦しくて文句を言うクロウだった。
その説明を聞いたカイキ(?)は、静かに笑っていた。
「・・・はっ、それを名乗ってんのか・・・物好きだな・・・」
ボソッと呟くその言葉はファレルの耳には届いた。しかし、その意味を理解する時間は与えられなかった。
「・・・おいっ!!!こっちにいたぞ!!!」
「こんな所にいたのか! 何故誰も気づかない!!?」
政府軍に、見つかった。
「え、見えてる!!?」(リイン)
「あ、さっき移行したから。」(カイキ(?))
「そういうことは一言言ってからにしてくれませんかね!?」(ファレル)
そうこうしているうちにどんどん残りの政府軍も集まってきた。かなりの数ルイス達に倒されたはずだが、一体どこから湧いてくるのだろう・・・
「ちょっ!! 火炎放射器持ってきてるよ!!?」(キリヤ)
「・・・捕まえる気ねーよな? あれ。やっぱやる?」(ユウキ)
そのうちの一人が、火炎放射器をたずさえ迫ってきた。
「・・・・・・チッ!」
カイキ(?)が舌打ちしながら皆の前に出て、再び右手を前に突き出す。
ほぼ同じタイミングで、相手も火炎放射器を向け構える。
そしてノズルを、引いた・・・・・・
── ゴオオォォォ・・・!!! ──
「ホントにやりやがった!!!」(クロウ)
向かってくる炎に対し、カイキ(?)は指を今にも鳴らそうとした、
その時・・・
目の前に、一人の男が舞い降りた・・・
「!?」(カイキ(?))
「なぁ!?」(政府軍)
二人が驚くのも束の間、その男は迫る炎を、右手ではらう動作をした途端打ち消し、そのまま右手を上空に掲げ・・・
「・・・落ちろ!!!」
その掛け声とともに振り下ろした。
── ビカカッ!!!!!! ──
するとどういうことか、巨大な雷が辺り一帯に降り注ぎ始めた。
「なっ!!」
それはドンッ! ドカッ! と降り注ぎ、こちらに向けて持っていた火炎放射器にも避雷し、そのまま所持していた政府軍にも感電していった。
「ぐああぁぁぁ!!!」
感電した政府軍は火炎放射器を落としながら次々と倒れていった。
「すっごー・・・」(キリヤ)
関心している皆をよそに、カイキ(?)の前の男は振り向きカイキ(?)に話しかけながら手を差し伸べた。
「遅くなってゴメン! レイ!」
差し伸べたのは、レイだった。
しかし、その実力もさることながら台詞にも驚いたファレル達は驚き固まってしまっていた。
カイキ(?)も少し驚いていたがすぐにフッと笑い、
「・・・待ちくたびれたぞ、クソガキ」
そう言いながらレイの手をとったのだった。
すると・・・・・・
── バシュッ!!! ──
「「!!?」」
突然光が辺りを包み、光が消えるとともにレイとカイキ(?)二人の姿も消えたのだった。
「・・・な・・・はぁ!?」
突然の出来事で誰も理解が追いつかない。レイの相手をしていた政府軍も驚きすぎて固まってしまっている。
辺りを見回してみても、誰も、跡形もない。
「・・・二人はどこに・・・」
ファレルが考えを巡らそうとしていた、その時。
「立ち止まるな!! 狙われてるぞ!!」
頭に響くほどのルイスの大声だった。
その言葉でハッとした。残っている政府軍数名が、ファレル達の方に向かっていっていたのだ。
「あ、やべ。」(クロウ)
「忘れてた!」(リイン)
「だ~! めんどくさい!!」(ファレル)
そしてルイスが剣を展開し一気に敵を薙ぎ払う。
「・・・ゥラァ!!!」
大量の政府軍を吹き飛ばしていくが、倒れても倒れても起き上がってくる奴らはまるでゾンビや蛆虫のようだった。
「いやマジで気持ち悪いぞ!!」(クロウ)
「トラウマになりそう~・・・」(リイン)
空中で剣を羽にして飛んでいるルイスがそのままファレル達に指示を出した。
「考えるのは後回しだ! 今は片っ端から奴らを片付けるぞ!」
それを受け、ようやくマトモに戦闘態勢に入るファレル達であった。
「~~~!! 了解!!」(ファレル)
「ぶっ飛ばすのは得意だ。」(ユウキ)
「このままじゃ落ち着いて考えられないよぉ~・・・」(キリヤ)
まだまだ、戦闘は続いていく。そして怒りが爆発したクロウの叫びがこだました・・・・・・
「一体どれだけわくんだよおおぉぉぉ・・・!!!」
◇◇◇
「・・・ん、ここは・・・・・・」
カイキが目覚めると、そこは真っ白な世界が広がっていた。
「あれ・・・!? 俺・・・どうしたっけ・・・」
今の状況も理解出来ないでいると、急に空気が動いた。
「うわっ!?」
ザァーッと空気が流れて顔に吹きつけるので少し目を閉じる。空気の流れが止まったところでそっと目を開いた、そこに映るのは・・・・・・
「・・・え・・・・・・」
水車や動物、見たことの無い建物。風の流れも穏やかなのどかな風景が広がっていた。
「・・・どこ・・・ここ・・・」
そこに暮らしている人々はとても幸せそうな顔をしていた。何人かカイキに気づき、微笑みながら手を振っている。
「どういうこと・・・俺・・・知ってる・・・?」
その様子を唖然と見ていたカイキの後ろから、声が聞こえてきた。
「・・・ここは、かつての“リュー”の風景さ。」
「あ・・・・・・」
振り向くと、そこにはレイがいた。
「父さん!! ・・・と・・・」
カイキは気づいた。レイの後ろに、何やら大きな影があることを。
レイはボソッと呟いた。
「・・・随分と遅くなってしまった・・・“ただいま”。そして、“おかえり”だ。」
カイキには、情報が多すぎてもう理解が追いつかなかった。
「と・・・う、さん・・・ここ、なに。そして・・・その後ろの、なに!!!」
レイは小さく微笑みながら答える。
「・・・全て話すよ。ここの事も、そして・・・俺とお前の事も全て・・・・・・」
◇◇◇




