○ 時の守り人 ○
「・・・・・・聡いのぉ、人の子よ。」
「!!!」
カイキ(?)は少し笑いながら静かに答えた。
「え、え!?」
「どういうこと!??」
リインとキリヤは慌てふためく。
クロウとユウキは静かに見ていた。
「お前・・・」
ファレルは今にも飛びかかりそうな勢いだったが、カイキ(?)は両手を前に出して制止した。
「ちょい待て!別に危害とか加えるつもりねえから!意外と短気やのぉ・・・」
「あぁ!?」
ファレルが本気でキレだしたので大慌てでキリヤが止めに入った。
「ファレルさんどうどう・・・!!」
「・・・・・・カイキから出ていってくれませんかねぇ・・・」
精一杯の敬語で話すファレルだが、明らかにイラついている様子だった・・・
しかし、返答は・・・
「それは無理だ。出たらお前達と話が出来なくなる。」
「なに・・・」
その一言でファレルは察した。なぜカイキの中にいるのかを・・・
その様子を見ていた彼は静かに笑う。
「・・・やはり賢いな。お前さんは。」
その時、突如として巨大な音が辺りに響く。
―――――― ドオオォォォォン・・・!!! ――――――
「!? なんだ!?」
「えっ! え!!?」
辺りを見回す、が、目に見える範囲では人影すら無かった。音がした所は黒い煙が上がっている。どこか離れた所からの攻撃と思われた。
「・・・火薬の匂いがする。政府軍だな。」
クロウが匂いを探りながら敵の居場所を探していた。
「ここまで来てるの!?」
「ぅあー! しつこいね!!」
リインとキリヤが驚きつつ怒っている。
「・・・・・・」
ユウキはずっと周りを警戒していた。すぐにでも敵に飛びかかれるだろう。
「・・・鉱山に軍が向かった時点でこちらにも人員を回していたんでしょう。タイミングが良すぎる。」
ファレルは冷静に分析する。
そんなことはお構い無しに、カイキ(?)はボソッと呟いた。
「・・・そこの魔物くんがいる限り居場所はバレるんじゃないのか?」
その一言で、皆一斉にキリヤに視線を向けた。
「そういえばそうでした!」(ファレル)
「その身体エギルに造られた実験体だったろ?」(クロウ)
「確か繋がってるんじゃ・・・!」(リイン)
「・・・呼び寄せてる原因・・・?」(ユウキ)
「え、いや、ちょっ!!! 確かにそうだったけど! 忘れてたけど!! 今更!? やっぱ俺原因なの!?」(キリヤ)
慌てふためく皆をよそに、攻撃したと思われる気配は徐々に近づいてきていた。
そして「ふぅー・・・」と、大きなため息が後ろから聞こえた。
「・・・冗談だ。お前さんからは創世龍の魔力を感じる。なんか対処してあるんじゃないのか?」
「え・・・」
話したのは、カイキ(?)だった。
その言葉に皆驚きを隠せない・・・キリヤは呆れていたが。
「いや、冗談て・・・」
「あんた・・・もしかしてルイスのこと、知ってるんですか・・・?」
ファレルの質問に、カイキ(?)はニヤッと笑う。
「あぁ。ある程度はな。」
その時だった。
「見つけたぞ!!!破壊者一行!貴様らを連行する!」
現れたのは、やはり政府軍。予想通りの台詞を発する。
ファレル達は一斉に戦闘態勢を取るが、そんな中カイキ(?)は頭をガシガシ掻きながら大きくため息をついた。
「ハアァーーーーー・・・・・・うるさいのぉ・・・」
イライラした様子のカイキ(?)は右手を前に出して、パチンと一回指を鳴らした。
―――――― パチンッ ――――――
「・・・・・・え。」
するとどういうわけか、政府軍の姿が一瞬にして消えてしまったのである。
「・・・ぉいおい!アイツらどこ行ったんだ!?」
「・・・気配が一切ないよ。ホントにこの辺居ないみたいだ。」
クロウとユウキが驚いている。
ファレルはふと振り向くとカイキ(?)は下を向いてボソボソとなにか独り言を言っていた。
「・・・そうか、あいつはまだあっちか・・・同じだからつい早く出てしまった・・・まだかなぁ・・・」
一部聞き取れない箇所もあったがどの道ファレルにはなんの事だか分からなかった。
だから、聞いたのだ・・・
「あんた・・・ホントに何者なんです・・・」
その質問に、カイキ(?)はフッと笑って静かに答えた。
「・・・俺か?俺は・・・
ただの、時の守り人さ。」




