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創世のソード・ブレイカー  作者: 柚木りん
第七章 ルイス《光》とリヒト《闇》
61/70

○ 刹那の再開 ○


◇◇◇



「・・・あった・・・」



ファレルから聞いた場所に辿り着いた。そこは確かに石が黒ずみ、辺り一帯(いったい)滲んでいる。



「・・・・・・」



そっと手を触れる。そこはどうやら、魔石自体材質が変質しているようだった。

ソードブレイカー(レッカ)を握る手に力が入る。



「・・・ハッ!!」




―――――― バタバタバタ・・・ ――――――



「いた! ルイス!!」

「ねぇ! 武器構えてるけど!?」



ファレル達が追いついてきた。しかし、すぐにルイスの様子に気づき焦り始める。



一体(いったい)何を・・・!」



尋ねる間も無く、上段に構えたソードブレイカー(レッカ)をその黒ずんでいる中心箇所目掛け、ルイスは振り下ろした。




―――――― ガギイイイィィィン・・・ ――――――



鈍い金属音が・・・辺りに響いた・・・




◇◇◇



「・・・うわぁ・・・」




ガラガラと崩れる瓦礫を、呆然と眺めるリイン。

その場にいる誰もが、ただ立ち尽くしていた。崩れた瓦礫から、土煙が立ち込める。



「・・・・・・」



崩れた先は、広い空間になっていた。立ち込める煙の中に、人影が(ひと)つ・・・・・・



「ねぇ、誰か・・・いる?」



キリヤが小さく呟く。皆も目を凝らす。

ルイスだけ、険しい表情のままだ・・・・・・



「・・・なんで、お前がここにいる・・・


()()()・・・!!」





「・・・久しぶりだね、()()()・・・」



◇◇◇




立ち込める煙の中、そこに立っていたのは・・・


ルイスが見間違うはずもない、双子の弟、創世龍クロガネことクロトだった・・・・・・



リインは狼狽える。 「え・・・クロトってあの・・・!?」


それにファレルが答える。 「えぇ、ルイスがずっと助け出そうとしていた人物ですよ・・・」


一番(いちばん)話を知らないユウキは、ただ眺めているだけだった。 「弟・・・」


カイキは一人(ひとり)、険しい顔をしている。 「・・・確かにあの顔は、俺達を連れてった奴だ。」


クロウはファレルの頭の上で言う。 「・・・まぁ、匂いも間違いなくクロガネだなぁ。でもなんでここに・・・」






ずっと黙っていたクロトが、ようやく口を開いた。



「・・・随分とまぁ、()()()が増えたもんだなぁ・・・いいご身分だね。」


「!!」



台詞の端々に、明確な悪意を感じる。



「お前のせいで俺も()()()()こんなになっちゃったのに! 一人(ひとり)だけ楽しんで羨ましいもんだなぁ!!」



両手を広げ声高々に叫ぶクロト。その様子を見て、リイン達は怒り始める。



「ちょっと! 何その言い方!!」

「彼もなにか取り憑かれてる・・・とか?」

「その可能性もありそうですね・・・」




そして一言(ひとこと)、ルイスが言う。



「・・・お前、()()()()()()()()?」




「「 !!? 」」



その場にいるほとんどの者に、衝撃が走った。



◇◇◇



笑いながらクロトが言う。 「・・・幸せボケで、頭までおかしくなった? ルイス・・・」



「お、おい。どうしたルイス・・・あれどう見ても・・・」



クロウが恐る恐る言うが、それをずっと黙っていたレイが遮った。



「・・・やっぱそうだよねぇ。」

「・・・父さん・・・?」



カイキが首を傾げる。

ルイスの肩に手をかけながら、ゆっくりレイが話し出す。



「このメンバーの中で多分俺が一番(いちばん)最後に会ったんだけど、あの時と・・・雰囲気、全然違うんだよねぇ~・・・()()も感じないし。」



「っ!」



その時、僅かにクロトの眉がピクッと動いたのだ。




そしてルイスが言う。



「・・・確かにクロトは、俺を恨んでいるだろうな・・・けどな、アイツはいつも言葉を呑み込んでしまって本音は隠すんだよ。それにレッカの事は心の底から愛していた! それはどんな時でも変わらない・・・姿や匂いは隠せても・・・お前は、クロトじゃねぇ!!!」




ルイスの言葉は、この空間内に響き渡った。




「・・・愛は色んな形がある。ホンモノは、やっぱり偉大だねぇ。」


レイが小さく笑っていた。




◇◇◇



「・・・アハ、アハハハハハハ!! そんなモノで、ワカるのカ・・・」



急に、クロト(?)は高笑いを始めた。



「なァ、ひとツきかせテクレよ・・・おマエは、クロガネがマモのにナッてルとは、オモわないノカ・・・?」



ニヤニヤ笑いながら話す“それ”に、ルイスはただ一言(ひとこと)、宣言した。



「クロトは、絶対魔物にならない!!」



◇◇◇



「カカッ!!」(ボフン!)



それはひと笑いした後、煙と共に姿を変えた。



「っ!!」

「皆固まって!!」



レイの叫びに皆が反応する。



ゴオッと一気(いっき)に風が流れてきて、少し呼吸が苦しくなる。



「・・・!」

「ぅ・・・ケホッ!」

「クソ・・・やつは・・・!?」





ようやく風が落ち着き、ゆっくり目を凝らす。そこにいたのは・・・・・・



『・・・アヒャヒャヒャヒャ!!クダラナイクダラナイ! キサマモ、ナンテチッポケナンダロウナ!!』



大きな羽をばたつかせて飛ぶ、二本足を持つ巨大な龍の姿をした、()()()()()()()・・・・・




「うげぇ!!?」

「やっぱり魔物か!」

「え、龍なの!?魔物なの!?」




クロウ達はその不気味な姿に恐れていた。そんな中ただ一人(ひとり)、ルイスは武器を構えている・・・




「・・・容赦はしない・・・」



ルイスは腰に手をかけ居合の構えをとりながら、ソードブレイカー(レッカ)に魔力を込め始める。



「!? ちょっとルイス!?」

「ここで魔力はヤバいんじゃないのかよ!?」




ファレルとクロウが慌てふためく。

それもそのはず、ここは魔石が採れる鉱山。どんな魔力でも吸収する石が(つど)っている場所ゆえに、そんな場所で魔法を使おうものなら魔石が爆発、誘爆を引き起こし大惨事を招く恐れがあるからである。


オマケにここは行き止まりの空間、もし爆発したら人間のファレル達にはひとたまりもない。




『アヒャヒャヒャ!ベツニカマワヌゾ?ソウカンタンニワレハヤレヌガナ?』



魔物は嘲笑いながら羽を上下に動かして飛び続けている。そうしてる間にもみるみる辺りの魔石は魔力を吸収し続け、ビシビシと亀裂が走り広がっている。



それを見て、レイが大声で指示を出した。



「っ! ファレル君は結界(シールド)を張って! なるべく固まって範囲を狭く、強力なものを! こっち(ルイス君)は気にしなくていいから!」


「えっ! レイ!?」



ファレルは驚きながらも言われた通り皆を囲むように結界(シールド)を張った。



レイはルイスの肩に手を置いたまま叫ぶ。


「ルイス君! 一撃で仕留めないとこっちが逃げられなくなるよ!」

「分かってる!!」




ルイスが武器に込める魔力と、魔物の羽ばたきと、魔石のヒビから魔力が溢れることによって空気が流れ、強力な風が巻き起こっている。



『アヒャヒャヒャ! コノママジャサキニドウクツガクズレソウダナ? モウキサマラハタスカラヌ!!』




高笑いする魔物。それに向け、武器に魔力を込め終わったルイスは今にも鞘から技を抜き放とうとした、



その瞬間・・・・・・




―――――― ビシビシ・・・ドカン!! ガラガラガラ・・・! ――――――



『!?』

「なっ!」



突如魔物の頭上の岩壁が崩れ、瓦礫が魔物の頭に降り注いでいく。その瓦礫と共に何かが魔物の頭に降り立った。



『グギャ!?』



同時にこの山自体が崩れ始め、この空間も崩壊が始まった。

瓦礫が降り注ぐ中、崩れる音に紛れて何かの悲鳴が聞こえた。





「ルイス君! もうマズイよ!!」

「っ!」



降り注ぐ瓦礫の中を、レイに引きずられながら縫うように進む。

なんとか後ろを振り向くが、魔物はいつの間にか地面に突っ伏して、ゆっくり倒れたのが瓦礫の隙間から見えた。


その頭の上に、()()()が、いた事も・・・・・・





「っ・・・・・・クロト!!!!!!」




「・・・・・・」



その直後、鉱山は全て完全に崩壊した。何もかも爆発し埋めつくして・・・・・・





魔物を倒したのは、正真正銘・・・創世龍クロガネ本人だった・・・・・・






◇◇◇





―――――― 何かボールのようなものが飛んできた・・・



・・・・・・ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・



「がっ!」

「ぐえっ」

「きゃっ!」

「たぁ~・・・」



山肌を転がるように飛んできたのは、ファレルの張った結界(シールド)で守られていたカイキ達だった。



()~・・・皆、生きてますか~・・・?」



ファレルが頭を抑えながら尋ねる。




「なんとか・・・」

「吐きそう・・・」



リインとキリヤが弱々しく答える。



「・・・こっちも無事だよ。結界(シールド)がボール状だったから岩に突き刺さる事も叩きつけられる事もなかったけど、とりあえず気持ち悪い。」

「・・・・・・」



ユウキも答えてくれたが、カイキは何故か黙っている。




「・・・そもそもどしてこんなに吹っ飛ばされたの・・・?」



キリヤがボソッと呟く。それにファレルが答えた。



「あぁ・・・崩壊する中でレイが結界(シールド)に向けて風魔法をぶつけたんです。それで思いっきり吹っ飛ばされて・・・」



言いながら何かに気づいたファレルは辺りを見回し始めた。



「っ! ルイス達は!?」

「え! あれ!!?」



言われて急いで皆見回し始める。しかし、ルイスとレイの姿はどこにもない。


すると、ずっとパタパタ飛んでいたクロウが一点(いってん)を見つめながら答えた。



「・・・二人はまだあそこだ。匂いがする。」



クロウが見つめる先には、煙が上がっていた。周りの景色を見る限り、鉱山があった場所と思われる。かなりの距離だ・・・



「えっ! あんなに離れてるの!?」

「凄い飛ばされたんだね・・・」




リインとキリヤは呆然としている。



「・・・クロウ、状況分かりますか?」

「・・・複数の足音と戦闘音、魔物じゃないみたいだが・・・多分囲まれてる。」




目を閉じ集中して音を拾っているクロウの説明を聞いて、リイン達は慌てた。



「えっ!それ大変だよ!」

「急いで戻らなきゃ!」



しかし、ファレルが制止した。



「待ってください! 俺達は戻らず、このままリューに向かいましょう。」

「えっ! なんで、助けなきゃ!!」




リインが反論するが、ファレルはゆっくりと答える。


「・・・さっきも言ったように、俺達を吹っ飛ばした張本人はレイです。ある意味それはあの場所から引き離してくれたと言うこと! 戻れば彼の思いを踏みにじることになるんじゃないですか?」

「う、それは・・・」



ファレルの説明で思い(とど)まろうとしたリイン達だが、ユウキが遮った。



「けどさ、リューの道のり分かんなくない? レイしか知らないんじゃないの?」

「あぁ~・・・確かに。途中で鉱山挟んだからいまいちルートも分かりませんね・・・地図ルイス持ってますし。」




その時だった。



「・・・場所、わかる。」

「え・・・」



それは、カイキだった。



「場所、わかる。 この先。」



そう言って真っ直ぐ指をさすカイキ。その先には森が広がっている。



「・・・道、分かるんですね?」

「ん、大丈夫。」



ただ一点を見つめるカイキ。その雰囲気は、まるで別人のようでもあった。



ファレルは少し考えてから、答えを出した。



「分かりました。案内お願いしますねカイキ。」

「ん。」



その様子を見ていたリイン達が慌ててファレルに耳打ちした。



「あの! 大丈夫なの!?」

「カイキ君様子おかしいけど・・・」


「・・・リューはカイキの故郷でもあります。感じるものがあるのかもしれません。それに、ルイスも言ってましたがこのまま(とど)まってるよりは先に進んだ方がいいですしね。」




それを最後に、ようやく二人は納得したようだった。




ゆっくりとカイキは歩き出す。

その(あと)に続いて他の皆も静かに進み出した。


残してきた者達に思いを馳せて・・・・・・




(ルイス・・・ちゃんと来ないと、ぶっ飛ばすからな・・・)





◇◇◇




「・・・けほ。とりあえず・・・生きてる?」

「・・・見たまんまだ。」



崩壊した瓦礫を掻き分け、外の空気を吸っていたレイとルイス。その近くに他のメンバーはいない。



「・・・あいつら、どこに飛ばしたの?」

「一応リューの近くに飛ばしたつもりだよ。ルートは外れてないはずだけど。彼らなら何とか出来ると思うよ。」

「・・・だと、いいが。」

「今はまぁ、()()()()()()()()()()()()()()?」



レイが見上げるその先には・・・






「ルイスとクロウだな!」

「貴様等を拘束する!!」




崩れた瓦礫の中にいるルイス達を囲む形で展開している政府軍によって見下ろされていた。

その数は、百を超えているようにみえる。



「・・・ま、あんだけ騒いだし魔物いたし情報は流れてるよね~」

「・・・だろうな。」




普通に話し続けるルイス達に嫌気がさしたのか、政府軍の連中は次々に武器を構え始めた。

一人は(けん)だったり一人は銃だったり・・・その武器は様々だ。



「いい加減に静かにしろ!!」

「それ以上口を開けばこちらも容赦はしない!!」




「・・・どの口が・・・」




ルイスは一気に魔力を放出した。




―――――― ゴッ!!! ――――――



「っ!! 撃て!!!」



軍の銃を持つ者達が一斉に発砲した。しかしその(たま)はルイスに当たることはなく、




―――――― ・・・カランカラン・・・ ――――――



全てルイスの目の前で止まり、力なく落ちていく。



「くそっ!」

「構わん! 撃ち続けろ!!!」



次なる部隊がすぐさま発射する。弾丸が迫ってくる中、レイがルイスより一歩前に出て右手を突き出す。すると・・・




―――――― パキンッ ――――――



これまた全ての(たま)が目の前で止まり、氷漬けになったのだ。



「ちぃ!!」



政府軍は新たに装填したり次の攻撃の準備に入っている。

その間に、ルイスとレイはボソッと会話していた。



「・・・死なないでよルイス君。せっかくクロト君が無事っていう確証得られたんだから。」

「・・・・・・」




そう、あの空間内。魔物にトドメを刺したのは、クロトであった。それを確かに確認したのである。



「・・・あんたも気づいてたんだな。」

「ん? あぁ、まね。そもそもあの()()()()()の気配自体無かったしね。」

「・・・なるほど。」



その間にも、政府軍の近接武器部隊が突撃してきている。銃部隊も装填が終わって構え、次々に発砲してきている。



「・・・あんたも死ぬなよ。俺がカイキやファレルにぶっ飛ばされちまう。」

「あは、なら頑張らないとね!!!」




(たま)(けん)が迫る中、ルイスとレイは大勢の敵と武器相手に、立ち向かっていくのだった・・・・・・




◇◇◇






















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