○ 色彩 ○
◇◇◇
~ ルイスサイド ~
「さて・・・この辺でいいかな?探索を始めるぞ。」
「「おーっ!」」
「んで?こっちは何色を探すんですか?」
ファレルが尋ねてきたので俺はメモを見せながら説明を始める。
「こっちは白、黄色、緑と茶色だ。」
「後半不味そう・・・」
「食べ物じゃねぇんだからいいんだよ・・・」
すると、ファレルが腕を組みながら再び尋ねてきた。
「・・・その色・・・もしかして魔力の属性・・・とか?」
「・・・説明する前に答えをありがとう。」
「「あれっ!そうなの!!?」」
そしてリインとキリヤが揃って反応する。
そこで俺は、近くにあった透明な石を拾って見せながら説明を始める。
「本来、魔石になる前の石はこうやって透明なんだ。ガラスのようにな。他の魔石の色が乱反射してるのをこれら透明な石を通して見てるから鉱山内は紫に輝いているんだよ。」
「「ほへぇ~・・・」」
リイン達は興味津々に透明な石を見つめている。
ファレルは少し考え、再び口を開いた。
「・・・このチーム分けと採掘箇所の指定は、この色と関係あります?」
相変わらず察しがいいねぇ・・・
「こちらの採る分の魔石がこの色なら、レイ達の方は黒、赤、青・・・といった所ですか?結構メンバーに有効な色がどちらにも揃っているように見受けられますが?」
「説明する前に正解ありがとう!!」
相変わらず頭が良すぎて逆にムカつく・・・なんかヤケクソに答えてしまった・・・
「カイキと・・・レイを一緒にした事がずっと気になってたんですよ・・・今のあの二人は・・・心配ですから。」
ファレルの言葉に、リイン達はキョトンとしていた。
そんな二人をよそに、俺は話を続けた。
「・・・だからクロウとユウキを付けたんだよ。なんも知らないユウキの前じゃさすがにやらかさないだろ。クロウもなんだかんだでちゃんと周り見てるしな。大丈夫だよ。」
それを聞いてファレルはフゥ・・・とため息をついた。
リイン達は未だに話がよく分かっていないようだ・・・
「・・・ま、チーム分けの理由はそれだけじゃないけどな・・・」
「え・・・?」
ボソッと呟いた言葉に、ファレルは気づいたようだった。
俺はキリヤの方に向き直り、言葉を紡いだ。
「・・・キリヤ、お前に・・・言っておかなきゃならないことがある。」
◇◇◇
~ レイサイド ~
「さて・・・ちゃっちゃと始めちゃおうか。」
「「はーい。」」
ルイス君に渡されたメモを眺めていると、みんな俺の周りに集まってきた。
クロウ君はゆっくり俺の頭に飛んできて着地する。
「こっちは何色なんだ?」
「んーと、黒、赤、青、灰色だね。あ、早速灰発見。」
自分の足元に灰色の魔石があることに気づき直ぐに拾い上げ持っていた布の小袋に入れた。
それを見ていたユウキ君が尋ねてきた。
「・・・袋、分けるの・・・?道具袋に入れないの?」
「あぁ、これはね、魔石は僅かな魔力でも吸収する性質があるからなるべく接触がないように保管しなきゃいけないんだよ。だから採る時も魔力を発さない道具でしなきゃいけない。加工する時もまた準備がいるけど・・・多分今回はあまり加工はするつもりないんじゃないかなぁ・・・」
頭の上でクロウ君がキョトンとしていた。
「どういうことだ?」
「・・・意外とあの子は優しいと言うことだよ。」
「ますますわからん。」
その時、カイキの視線に気がついたけど目が合った瞬間直ぐに逸らされた・・・
「・・・さ、こっちも探すの始めようか。」
前途多難だな・・・
◇◇◇
~ ルイスサイド ~
「話・・・?何?」
俺の言葉に真剣に話を聞く体制に入ったキリヤ。
「・・・お前の、身体についてだ。」
「!!」
皆、静かに話を聞いてきた。
「・・・恐らく、お前みたいにイジられて自我が保てているやつはいないだろう・・・今まで相手した連中のこと考えるとな。お前は奇跡に近いと思う。だからもし・・・」
その途中で、話を遮られた。
「それ以上言わないで!!」
「っ!」
遮ったのは、リインだった。
「それ以上・・・絶対、怖いこと言うつもりでしょ・・・?私は聞きたくないよ・・・」
「リイン・・・」
さっきまでの元気はどこに行った・・・
なんか勘違いしているようだから続けて説明する。
「・・・言っておくが、何があってもキリヤを死なせるつもりはないからな?俺が言いたいのは、もし元の身体が傷を負って修復出来る状態じゃなかったりあるいは消失した場合、全く別の器に移る覚悟はあるかってことだ。」
「・・・別の・・・うつわ・・・?」
そのまま続ける。
「要は移植だ。俺が新しい身体を造りそこにキリヤの核を移植する。身体の見た目はキリヤの写真かなんかあるだろ、それを見てそっくりに造り、移植の際はファレルの結界で核を守りつつレイと協力して行う・・・つまり中身は同じだが身体が違うのになるって事・・・その可能性も視野に入れてほしいんだ・・・」
しばらく皆静まり返ったが、ファレルがゆっくり口を開いた。
「・・・この場合、核とはキリヤの脳のことですよね・・・そして移植となるとそれなりに技術やら道具やら必要なはず・・・素人同然の俺達で大丈夫なんですか・・・?そもそも、そんな事考えなくとも身体を取り戻せば済む話では・・・」
その途中で話を遮る。
「時間がかかりすぎてるんだよ。キリヤも反応しないことを考えると身体はまだ無事だろうが・・・どこにいるか分からないからあちこち回るしかない・・・いつまでもつかも分からないからな・・・せめて身体の位置が確定出来れば一気に飛ばせるんだが、死人も暴れ回るからどの道確認しながら進むしかないだろ?それと、移植に関しては元の身体に戻る時にする必要あるから結局覚悟はいるんだ。レイは科学者だから技術の心配は無いし知識は俺もある。そういう事だよ・・・」
再び皆静まり返る。しばらくしてキリヤが、顔を上げた。
「・・・分かった、いいよ。違う身体でも、生きていられるなら。」
「キリヤ!?」
リインが焦る。無理もない・・・愛する人の命に関わる話だからな・・・
「そもそもここまで生きて来れたのもルイス君達のおかげだから。違う身体は慣れてるしね。」
少し笑いながら、リインに振り向く。
「身体は違っても、魂は俺なんだ。俺は俺なんだよ。」
「キリヤ・・・」
少し二人で見つめ合いながら、意を決したリインが口を開いた。
「・・・分かった。キリヤがそう言うなら・・・」
リインは少し辛そうだが、キリヤの答えに納得してくれた。
「・・・ありがとな、二人とも・・・けど、元の身体も諦めるつもりはないからキリヤは自分の身体を感知したらすぐに言えよ?まとめて飛ばすから。」
「あ、うん!!分かってる!!どんな事でもすぐ言うから!!」
これでこの話を一旦切り上げることにした。
「なら、急いでここ終わらせて進まないとですね。魔石探し再開しましょうか。」
「あ、うんそうだね!」
「俺も探すけど、指定の色見つけたら叫んでくれよ。すぐ飛ぶ。」
「レッカちゃん大活躍だねぇ~・・・」
そうして散って探し始めた時・・・
(・・・ん?)
ファレルが何かに気づいた。一体何に反応したのかは、俺には分からなかった・・・
(この辺りの石・・・黒く滲んでいる・・・?)
◇◇◇
「あ、ルイス君達来た!」
「ん、早かったなお前ら。」
魔石探しを終わらせ集合場所に全員が集まった。そして魔石をまとめた袋を持つ俺とレイが近づいて集めた石を見せあった。
「これでいいかな?ルイス君。」
「えぇ~・・・っと。ん、ありがと。助かった。」
石を数えて確認する。そしてレイの持つ袋から三つ、黒い石を出した。
「んじゃ、この三つはクロウにやるよ。」
差し出された三つの石を見てクロウは大喜びしたが、すぐに素に戻った。
「え?おっしゃー!!・・・って全部じゃねぇのかよ。」
「残りは使うんだよ。」
そんなやり取りをしていると、様子を見ていたファレルが袋の中まで覗き込んできた。
「・・・黒の魔石って、こんな色なんですね・・・?」
「うぉっ、どした急に?」
ファレルの様子がおかしくて少し驚いてしまった。
「・・・いや、さっき黒い石を見つけたんですけど・・・担当じゃなかったからスルーしてたんですけどね?滲んでてこんな艶っぽくなかったなぁって・・・出来てる最中だったんでしょうか・・・」
・・・なん・・・だと・・・!?
「それ、どこで見た!!」
「え!」
ファレルの服を掴んで、叫んだ。
「その石があった場所はどこだ!!!」
「えぇ・・・?えと・・・さっき探し始めた場所から少し西に行ったとこですけど・・・」
「っ!!!」
それを聞いてすぐに走り出した。
その様子に、皆慌てふためいていた。
「ちょっ!ルイス!!!」
「え・・・え?どういうこと・・・?」
その時、レイが静かに話し始めた。
「・・・ルイス君から聞いてるかもだけど、本来魔石は最初透明で吸収した魔力によって色が変わるんだ。中心からね。魔力の種類によってハッキリと色が付くんだ。」
「え、それって・・・」
「・・・何かがあるのは間違いないね、それも・・・ルイス君が取り乱すほどに・・・」
いるのか・・・お前が、ここに・・・
・・・・・・クロト・・・・・・!!!




