● 魔の先の扉 ●
「・・・どこにいるんですか・・・」
「・・・そういえば詳しい場所聞いてなかったなぁ・・・」
コルスの情報を得てやって来たモルドー渓谷。
ふもとまでたどり着いたのはいいのだが、まさかの洞窟がたくさんあってどこにお目当てがいるのか見当もつかない。
「・・・移動中に大体の特徴とかは聞きましたけど・・・どんな所に封じられているかは聞いてませんでしたね・・・」
「・・・多分知ってて黙ってたんだろうなぁ・・・あいつそういう奴だし。」
「何か探し出す手立てがあるのですか?」
「・・・奴の魔力、探ってみる。」
そう言って俺は目を閉じ、集中する。
空を仰ぐように、高台の洞窟も気配を探る。
すると一か所だけ、気になるところがあった。そこに指をさす。
「・・・あそこ・・・」
「・・・だいぶ遠いですね。」
『んー・・・』
レッカとファレルは同時に眺めるように手を当て、全く同じ動きをする。・・・まるで兄妹みたいだ。
場所は今いる地上からだいぶ上の、空に近い崖の所だ。
「飛んでいくか・・・ファレル、行けそう?」
「・・・やってみます。」
ファレルはコルスから貰ったバングルに魔力を集中させ、手を前に突き出す。
すると魔力は手の形となって顕現し、腕を降るとまるでロープのように伸びて上の方の崖を掴んだ。引っ張ってもびくともしない。魔力を維持するのに成功したのだ。
「おぉ・・・!」
「・・・よしっ!このまま・・・!」
そう言ってファレルは呼吸を整え、そのまま一気に体を引き寄せ掴んでいる崖まで弧を描くように飛んで行った。すぐに俺もレッカで飛んで行った。
「・・・出来た・・・」
「やったなファレル!今なら結界も自在に操れるんじゃないか!?」
「はは・・・そうだといいんですけどね・・・」
言葉は落ち着いていたが、ファレルも嬉しそうだった。
おかげで封龍まで一気に近づくことが出来たので、このまま進むことにした。
封龍がいるであろう洞窟前につく頃には、ファレルも慣れたようで魔力コントロールが更に上手くなっていた。
「・・・ふう・・・やっとついた・・・」
「お疲れファレル。ここまでこれただけでも上出来だ。」
流石のファレルも息切れしていて、すぐには動けなさそうだった。
「お疲れの所悪いけど・・・ここから先は、魔力も武器も通じない未開の地だ・・・ついてくる勇気・・・ある?」
そう言って俺は真っ暗な洞窟内を指さす。
それを聞いてファレルは呼吸を整える前に固まった。
「・・・・・・え・・・・・・」