○ 険しい道のり ○
◇◇◇
奴隷市場での一件で破壊者と判明したユウキを新たに仲間にし、次なる目的地『リュー』に向けて進んでいた俺達だが・・・
「・・・なっんでこんなとこ行かなきゃならないんですか~~~!!!」
ファレルの叫びが辺りに響く・・・
俺達は今、断崖絶壁な細い道を歩いていた。
「しょうがないだろ、魔物もいなさそうでリューまでの近い道がここだけだったんだから・・・」
「遠回りでいいので歩きやすい道が良かったです。」
ファレルの言葉にリイン達もウンウンと頷いていた。
さすがに無理させすぎたかな・・・でもあまり時間もかけていられないんだ・・・
「あ~あ、人間ってのは可哀想だなぁ~!」
フヨフヨ優雅に飛んでいるクロウを、ファレルはガッ!と鷲掴みした。
「・・・またタクシーになってくれてもいいんですよ?(にっこり)」
「・・・すんません。」
黒ファレル発動・・・
騒ぎながらも慎重に進み続ける中、キリヤが尋ねる。
「・・・ふぅ、ユウキ君はどこまで行ったんだろう・・・?」
「そうだな、そろそろ戻るとは思うけど・・・」
ユウキは今、あの身体能力の高さから索敵を買って出てくれた。まだ武具を扱いきれてはいないが、それでもとても身軽に進んで行った。
「・・・あ、帰ってきたよ。」
カイキが先に気づき、その視線の先に皆も目を向ける。
すると息も切らさず軽々と飛んで来るユウキがいた。
「ただいま。まだこの辺りいたんだ。」
「おかえり、お前みたいに身軽じゃないからな・・・」
早く進みたい・・・けれど魔力も体力も温存したいのでスピードを上げるに上げられないのだ。だから危険でも近道を進むしかない・・・
「それで、どうだった?」
「この先に潰れた町があったよ、荒れてるけどそこなら休めると思う。ここまでで魔物もいなかった・・・けど・・・」
急に言い淀むユウキに嫌な予感がした・・・
「おい・・・どうした?」
「・・・ごめん、面倒なの連れてきた。」
「は!?」
すると、何やらユウキの後ろから不穏な足音が響いてきた。
「・・・なんか、大量に来てない?」
リインが呟く。その直後、それらの正体が判明したのだった。
「うぉらー!金目の物置いていけーー!!」
「食いもんと武器も出しやがれ!!」
数にして十名ほど、いわゆる『野盗』と呼ばれる者達だった。
「・・・いやここで!?ちょっと場所考えてくれません!?」
「知るかンなもん!こっちも生きるのに必死なんだよ!」
「・・・人里行った方が安全に生きられると思うが?」
「行けねーんだよ!!ずっと外で暮らしてていつの間にかバケモンが増えて・・・ようやくこの辺まで逃げてやってきたが食料も尽きて、人も通らねーわで死にかけてたんだ!どうにかしやがれ!!!」
「八つ当たりかよ。」
まるで漫才のような言い争いはしばらく続いた。
「ということで・・・どうしよ。」
ユウキは考えるのを諦めたようだ・・・
「・・・ホントにめんどうだな・・・」
少し考えてたら、先頭の男が再び叫ぶ。
「おぅおぅ!とっとと出すもん出せよ!!命までは取らねーっての!」
持っていたバットのようなものを突き出しながら男は叫ぶ。
野盗達の姿を見てから、俺は一つ聞いてみた。
「・・・お前等、町まで護衛すれば大人しくするか?」
野盗達はここまで魔物から逃げ切り生き残っている。体格も良いし仕事を与えれば結構役立つのでは?と思ったのだが・・・
「護衛だぁ~・・・?」
「そんなのプライドが許すわけねぇだろ!?」
「守られるなんて有り得ねぇ!奪ってなんぼだろ!!」
今の言葉でさすがにカッチーンときてしまったので、ちょっと灸を据えることにした。
──── ガキン!! ────
ソードブレイカーを発動し、一太刀で野盗達が持っている武器を切り刻んだのだ。
「・・・はぇ?」
男達は驚きすぎて変な声が出てしまった。
「・・・もう一度言う、町まで護衛してやる。だからその後は仕事して真っ当に生きろ。」
圧をかけながら話す。その姿に男達は一瞬で怯え凍りついていた。
「「は、はいぃぃぃ!!!」」
剣を鞘に収めていると、ファレルが機嫌悪くしながら尋ねてきた。
「・・・護衛って・・・こいつらも途中まで連れていく気ですか?」
「いや、こいつらはサラベラに俺一人で連れていく。あそこなら悪いようにはしないだろ。お前等は先にユウキが見つけた場所まで進んでてくれ、幸い飛ばせば今日中に戻れる距離だしな。」
その言葉を聞いて、皆驚いていた。
「って、一人で戻る気なの!?さすがにそれは大変なんじゃ・・・」
「皆で行った方が安全じゃない?」
「・・・というか、なんで戻るんですか?距離を考えると進んだ方が近いのでは・・・」
「・・・他の地がこいつらを受け入れるとは限らねぇし、こいつら自身ちゃんとするか分かんねぇ。その点サラベラなら皆で見張ってくれるし仕事も山ほどあるしな。更生させるならあそこ以外他ないよ。あと、皆で戻るよりは少しでも進んでた方がいいだろ。俺ならすぐ飛べるしな。」
その言葉でようやく皆納得してくれた。ファレルはまだ、機嫌悪そうだけど・・・
「ユウキ、皆頼む。そこで合流しよう。」
「あ、うん・・・分かった。」
そうして俺は剣を沢山顕現させ乱暴に男達を運んで飛んだ。
「ちょお!落ちる!!!」
「既に死にそうだぞ~~!!!」
男達の叫び声はみるみる離れていった・・・
「大丈夫かな・・・」
「・・・ルイスがああ言った以上、進むしかないでしょう。行きましょう。」
こうしてファレル達も進み始めたのだった・・・




