番外編 凸凹コンビ
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リヒトはとある森を歩いていた。
「・・・・・・ふぁぁー・・・」
大きなあくびをしながら次の目的地まで歩いていた。
「この辺はあんまし魔力ねーなぁー・・・」
頭を掻きながらふいに空を見上げると・・・・・・
————————————— ・・・ヒュウウゥゥゥゥゥゥ・・・ ————————————
「・・・ん?」
何か音がしていた・・・それは視線の先から聞こえており、だんだんと大きくなってそれが何か認識出来るようになる頃には、すでに眼前にあった。
「・・・げっ。」
———————————— ゴッ!!!! ————————————
鈍い音が響くと同時にそれとリヒトは顔面でぶつかり、それは弾かれたように反対側に跳ねリヒトはその場にしゃがみ込んでしまった。
「~~~~!!!」
それは毛玉のような見た目だったが見た目以上の重さがあり、リヒトに多大な衝撃を与えてリヒトは顔を押さえて声にならない声で叫んでいた。
「・・・んだよっ!!」
半ばキレ気味にそれに目を向けると・・・やはり毛玉のようにしか見えないが、何やらモゾモゾと動いていた・・・
「・・・マジでなんだ・・・これ・・・?」
しばらくモゾモゾ動いていたそれから、急に目が現れリヒトと目が合ったのだ。
「!!!??」
リヒトは驚いていたがそれは目が合うなり・・・
『・・・ぐうぅぅぅぅ~・・・』
盛大な腹の音で答えたのだった。
「・・・はっ!?」
「おなか・・・すいたでしゅー・・・」
しかも喋ったのだ。
「マジで何なのお前!!?」
「なんかたべものー・・・ないでしゅかー・・・?」
這うようにのそのそ迫ってくるそれに、さすがのリヒトも少し恐怖を覚えた。
「いやいやキモいしこえーんだけど・・・お前魔物か・・・?見たことないタイプだが・・・そのまま寝てれば魔力得られるだろ。あとは知らん。」
それだけ告げてリヒトはその場を離れた・・・
◇◇◇
「何だったんだあれ・・・ハァー・・・」
頭をガジガジ掻きながら木にもたれ掛かって休むリヒト。思わぬことに時間がかかり、まだ目的を果たせていなかった・・・
———————————— ガサガサ・・・・・・ ————————————
頭上から何やら音がした。
「・・・嫌な予感・・・」
リヒトは察した。嫌な予感というのは、当たるものだ・・・・・・
———————————— ゴッ!!! ————————————
「ッ!!!」
再び頭の上に、さっきの喋る魔物が落ちてきたのだ。しかも今度は、リヒトの頭にしがみついて離れようとしない・・・
「っまたお前か!!!なんなんだよ一体!!つーか離れろ!!!」
リヒトは毛玉のようなその魔物の身体を掴んで引きはがそうとするが、ものすごい力でリヒトの髪を掴んでいるのでなかなか離せないしリヒト自身にダメージが入ってしまって一旦諦めることにした。
「はぁー・・・はぁー・・・ホントになんなんだよお前・・・魔力やれば離れてくれるのか・・・?」
息を切らしながら頭の上のそれに話かける。よく見ると毛玉のような身体に紛れて丸っこい耳や小さい手足がちゃんとあった。そして、小さく震えていたのが分かった・・・・・・
「・・・いっしょにいてくだしゃい・・・ひとり・・・いやでしゅ・・・そばにいてくだしゃい・・・」
ポロポロ涙を流しながら話すそれに、リヒトは思わず息を呑んだ。
・・・昔の誰かさんを、重ねてしまったから・・・
「・・・とりあえず離してくれ、さすがに頭いてーから。」
そう言われて魔物はそっと手を離した。リヒトはその魔物を右手で掴んで頭から離し自分の目線の高さまで下ろした。魔物は片手からあふれるサイズのモコモコだったが綺麗にリヒトの右手に座って収まっている。
「・・・さみしいのか?」
リヒトの問いに、魔物は小さくコクンと頷いた。
「ずっと、ひとりで・・・とんでて・・・おなかすいて、おちちゃったでしゅ・・・」
言いながらポッと背中に羽が生えパタパタと飛ぶ魔物。右手が軽くなり、リヒトは腕を下した。
「ボクの・・・そばにいてほしい・・・でしゅ。おねがいでしゅ・・・」
パタパタ飛びながら頭を下げるそれに、リヒトはそっと手を添えた。
「俺なんかで・・・いいのか?」
「!」
その言葉を聞いて、魔物は一気に明るい顔になった。
「もちろんでしゅ!あなたといっしょにいたいでしゅ!」
それを聞いて、リヒトもフッと笑った。
「分かったよ、お前が満足するまで傍にいてやる。」
その一言で魔物は嬉しくなり、リヒトの顔に飛びついてしまった。
「ありがとうでしゅ!!!」
「ぐえっ!」
その時リヒトは気が付いた。最初落ちて来た時のような『重さ』が無くなっていることに。
「・・・落ち着け、そういえばお前一応名前ってあるのか?無いなら勝手に決めるが。」
「ボクッ!『ポルン』っていいましゅ!!よろしくでしゅごしゅじんしゃま!!」
「ご主人ではない!リヒトだ。」
「・・・リヒト!!」
「・・・せめて、さん付けろ。」
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