● 愛の狩人、見参! ●
◇◇◇
レゾルトから聞いた話は衝撃のものだった・・・
「奴隷って・・・」
「おそらく・・・奴隷売買・・・それがあの場所で行われているようなんだ・・・身寄りのない女子供を捕まえて金持ち共に売っているらしい・・・そこで死んでも、中央に連れて行かれる・・・みたいなんだ。」
「っ!!それは・・・」
・・・死人として利用するって事か・・・!!
そしてコルスが話す。
「そこへちょうどお前さん達が来たからね・・・行ってほしいんだよ。この町の連中じゃ警戒されてるみたいで中にも入れなかったが、基本あそこは入るのは自由だ。出る時だけもの凄くチェックが厳しいらしい・・・知り合いがこっそり入って調べて分かったことだ。」
そのままレゾルトが話、頭を下げた。
「頼む、どうか力を貸してくれ!被害者を救助さえ出来れば、あとは我々警察が介入し逮捕出来る。我々が入るきっかけだけでも作ってもらえれば・・・」
苦しそうに話すレゾルトを見て、俺は少し考える。
「・・・そういう事ならもちろん手伝うが・・・いいのか?ただでさえこの町は政府に不満を持つ者達が集まっていて警戒されているのに、逮捕なんかしたら・・・」
そう恐る恐る言うと、レゾルトはフッと笑って答える。
「・・・誘拐、監禁、人身売買、場合によっては虐待や殺人・・・これだけ容疑があって逮捕しないわけにはいかないだろ?それに、市民を守る者として完全に屈するわけにはいかないからな。」
「レゾルト・・・」
「・・・政府の、奴らの力は圧倒的だ。我々では太刀打ちできないところもある。今回の件もそうだ・・・でも、我々だからこそ出来る事もある。
今回は、君達の力を我々に貸してくれ・・・そして我々の力が必要な時はいつでも言ってくれ。我々もこのサラベラの民達も、皆君達と共にある。」
そう言いながら手を差し出すレゾルト。俺は少し驚きながらその手を静かに取るのだった。
「・・・・・・ありがとな・・・」
少し離れて見てたファレルが、小さく笑ってから声をかけた。
「・・・それじゃあ行ってみますか。その知り合いの方にも会ってみなきゃですし。」
「・・・そうだな。」
その時、コルスがニヤッと笑いながら言う一言に俺とクロウは凍り付いてしまう・・・
「あぁ、そいつだがな・・・激しすぎて絞められないようにな?」
◇◇◇
「・・・いい人達だったね。」
印がついている森に皆で向かっている最中、リインが微笑みながら呟いた。それにファレルも答える。
「・・・そうですね・・・彼らのような人達が世界中に広まれば争いも無くなるんでしょうが・・・」
そう言いながらちらっと後ろを振り返る。そこに歩いているのは俺と俺の頭の上にうつぶせで乗っているクロウ。
「・・・さっきからどうしたんですか?あのコルスさんの言葉聞いてからみたいですけど・・・」
俺達のテンションはがた落ちしていた。理由はその言葉にある。あまりの違いに、さすがに皆気になっていたようだった。
「珍しいね、二人がそんなにしょぼくれるなんて。」
「ホントどうしたんですか・・・?その知り合い、二人も知ってるんですか?」
レイにファレルが次々聞いてくる。他の皆もこちらを見ているが、俺達は目線を合わせる余裕がなく俺達だけで会話をする。
「・・・なぁ、やっぱりあいつしかいないよな・・・」
「そうだろうよ・・・ずっと知り合いって言ってる時点で気づくべきだった・・・」
うなだれ続ける俺達を皆心配して見つめている。その時、レイが何かに気づいた。
「・・・なんか・・・来る。」
そう言って空を見つめるレイ。その言葉に皆も視線を空に向ける。だが俺とクロウだは反対方向に体を向けたまま下を向いていた・・・何が近づいて来たいるのか、匂いで分かったからだ・・・
「なんか・・・鳥っぽい・・・ものが来てます・・・?」
ファレル達にも認識できるぐらいにそれは近づいてきている、それが何か確認出来た時にはすでに目の前に土煙をたて降り立っていた・・・
・・・・・・ ズウウウゥゥゥゥゥン!!! ・・・・・・
降り立ったのは、体長も腕も体つきも巨大な龍・・・
「でっか・・・!!」
「・・・・・・っ!!」
皆衝撃のあまり皆言葉が出なかった・・・
皆がそっちへ視線を向けているうちに、俺とクロウはこっそりその場から離れようとするが・・・奴の目から逃れることは出来なかった・・・・・・
「・・・逃がさないワよルイスチャーーーーン!!」
「「ギャーーーーーーーーー!!!!」」
その大きい腕で、俺とクロウをまとめて力づくで抱き絞めたのだった・・・・・・
◇◇◇
「・・・え、なにあれ・・・」
「龍・・・だけど・・・こっち系?」
皆がポカーンとしている。無理もない・・・なんせこんな状態なんだから・・・
「んもう!ようやく見つけたワ~!相変わらず可愛いワねぇ!クロウちゃんもなんか小っちゃくて可愛いったら!!」
「小っさいは余計だ!!てか離せ!気色悪い!!」
「・・・ぐえ・・・」
クロウは必死に叫ぶが、俺はもろに奴の腕力に絞められているので叫ぶ元気もない。そんな俺を見かねたファレルが声をかけた。
「えっとすみません・・・ルイス達の知り合いの方・・・ですよね?再会を喜んでいるところ申し訳ないんですが、二人が苦しそうなのでそろそろ離していただけると・・・」
そう告げると、奴は前のめりになってファレルの顔を覗き込む。
「んん~~・・・?」
「な、なんですか・・・?」
ずずいっと一気に距離を詰められ、思わず一歩後退りをするファレル。次の瞬間・・・・・・
「んまぁーーなんてイケメンなの!!素晴らしい!一体どんな手触りかしら!!抱きしめたい!!!」
「!!!???」(ぞわっ!)
奴はまだずっと何かを叫びながら手を広げファレルに向かって突進していく。
その顔はものすごく歓喜に満ちている・・・ファレルは恐怖を覚え、思わず・・・
—————— ガッチィィィン・・・!!! ——————
「い゛っ!!?たぁぁぁい!!何よコレ!!?」
分厚い壁状の結界を作り出し、奴は思いっきり頭をぶつけた・・・
「な、なんなんですかコイツ・・・!」
「落ち着いてファレル君・・・(汗)」
ファレルが興奮しているのでさすがにレイがなだめていた。しかし奴の注意がファレルに向かったため俺達の拘束は解かれたのだった・・・
「・・・きつかった・・・」
「骨折れる・・・」
ゼーハー息を切らして俺達は倒れてしまった・・・そんな俺達をよそに、奴はぶつけた額を押さえながら不気味に笑っている。
「・・・フッフッフ・・・いいワ、燃えるワ・・・!こういう懐かない子を力づくで従わせるのがまたたまらない・・・!!」
「なんかおっそろしぃ事言ってますけど何ですかあいつーーー!!!?」
ファレルが恐怖でものすごく叫んでいる・・・こんなあいつを見ることになるとは・・・(笑)
俺は呼吸を整えまずは奴を止めてから皆に紹介する。
「・・・オイ、コルスに聞いたぞ・・・奴隷市場を調べているのはお前だろ?こんな事やってていいのか?」
「・・・ハッ!!」
ようやく我に返ったか・・・
「・・・こいつは見ての通り俺達の同族で、人間とかわいいもの、イケメンが大好きな・・・ゲイルだ・・・」
そう説明した時、ゲイルが俺の背中を思い切り叩いた。
「やだもぅそんな下品な名前呼ばないで!!お姉さまって呼んで?(ウフッ)」
そうファレルやレイに向かってウインクしながら言うゲイル。
ゲッと思いっきりファレルが引いていた・・・・・・




