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創世のソード・ブレイカー  作者: 柚木りん
第六章 新たなる地へ
40/70

● 龍の谷(その1) ●



◇◇◇



「うわぁーーーー!!すっごくいい眺めー!」

「ちょっとリイン!危ないよ!!(汗)」


「おいてめぇら!落ちても知らねぇからな!!!」



俺達は今、リヒト達の情報を求めて空の上を飛んで移動中だった・・・魔法で大きくなった龍のクロウの背に乗って・・・・・・




「・・・にしても、フッ・・・クク!!見た目は小さいクロウのまま、形だけ大きくなって・・・ヤバい、笑いが止まらない・・・!」

「おいこらファレル!笑いすぎだ!!」



ファレルはツボに入ったのか、クロウが叫ぶ背の上で腹を抱えて笑っている。







・・・なぜこんな事になっているのかというと・・・



・・・・・・それは、半日前に遡る・・・・・・





◇◇◇



「ぜっっっったい!!イヤだ!!!」

「・・・しょうがないだろう・・・知ってそうなのあいつしかいねぇんだから・・・」



龍のクロウと俺はもめていた。それは次の目的地についての事で・・・俺達にとってはある意味里帰りになる場所の事で・・・・・・




俺達の様子が気になっていたファレルが尋ねてきた。



「・・・その、『龍の谷』・・・?って何処なんです?そんなにイヤなとこなんですか?」

「名前だけ聞くなら・・・なんかいかにもって感じだよねー・・・」




クロウさんも笑いながら話に乗ってくる。



俺はため息をつきながら、ゆっくり説明を始める。



「・・・龍の谷ってのは、文字通り龍が住まう場所。人間と共存を望まない龍達の最後の砦ってところだ。そこは特殊な結界が張られていて普通じゃ入れないようになっている。魔物からも見つかっていない場所だ。

・・・俺達よりかなり昔から生きているじいさんがそこの主・・・(おさ)みたいになっててな。そいつ率いる者達はすべて、魔物からも身を守れる強者(つわもの)だ・・・自分達以外をすべて否定する者の集まり、だな。だから人間も嫌いなんだよ・・・」



「うわぁ・・・」



俺の説明を聞いて皆顔が引きつっていた。ファレル以外は実物の龍なんて見たことないし(クロウを除いて)得体の知れないものに恐れを抱くのは当たり前だ。


そんな中、考え込んでいたファレルがまた尋ねてきた。



「ルイス・・・ちょっといいですか?ルイスは以前に、龍はほとんどいないだろうと言いました。でもさっきの説明だとまだ意外といそうですし、ルイスもそこにいる者達について知っているってことですよね・・・?」



その質問に対し、俺は答えを考えながら話す。


「あぁ・・・悪い、(おれ)人間(おまえら)じゃ感覚が違うよな・・・

 確かに龍はまだ存在する。俺やコルスやクロウだってそうだし、俺が会っていないだけで人間に紛れて生活している者もいるだろう・・・でも、昔よりはるかに数は減っているんだ。昔は人間より龍の方が多かったしな。でも今は人口は逆転している。理由はもちろん魔物達だ。あの硬い鎧甲には龍でさえも(かな)わなかった・・・けどそんな中魔物に勝てる者達がいた。それがさっき話したじいさんや強者(つわもの)達だ。彼らは『龍』という種族を存続させるために戦える者を連れこの地を離れ、誰も寄り付けない場所へ飛び立ち暮らしている・・・それが、『龍の谷』だ。

集まっている・・・と言っても、俺が知っているだけでもほんとに数は減っている。昔は何千何万といた龍は今は二桁ぐらいだろう・・・そのほんの一部が谷にいる・・・こういうことだからほとんどって言った。俺の感覚で言って悪かった・・・」


「そうでしたか・・・」



俺の長々とした精一杯の説明にファレルは納得したようだった。

他の皆は固まってしまっていたが・・・




ファレルが、ゆっくりと口を開いた。




「でも・・・それじゃ、ダメなんじゃないですか・・・?」



「・・・え・・・?」




思わぬ答えに、気の抜けた声が出てしまった。


俺の態度に気づいたファレルは急いで説明し始める。



「あぁえっと・・・ダメと言うか、確かに生き残るのは大事です。ですか一族だけで閉じこもってしまうのは・・・結局衰退させてしまうと思うんです。(げん)に昔、食料の奪い合いをしてしまったんですよね・・・?

他の種族と交流し、お互いを知り支えあうことでより豊かになっていくんじゃないんですか?互いに関わろうとしないから、恐怖し恐れ攻撃対象になってしまう・・・そういう心に、魔物が生まれる原因もあるんじゃないんですか・・・?」



ファレルの言葉に、皆呆然としていた。



「・・・って、なに語ってんだって感じですけど・・・」


「あぁ・・・いや・・・」




思わぬ言葉に、俺も返事が遅れてしまったが・・・やっぱり、ファレルはすごいな・・・



「・・・俺、やっぱお前好きだわ。」


「・・・は!!?(ぞわっ)」



俺の言葉に、ファレルは完全に引いてしまったが・・・



「・・・待て、俺にそっちの()は無いからな!・・・あるやつは知ってるけど・・・(ボソッ)」

「はぁ!!?居るんですか!!?」



「どこの毛!!?」

「いやカイキ・・・突っ込むとこそこじゃないし、俺達は黙ってようか・・・」




クロウさんがムーッとなるカイキを押さえ、リイン達はハラハラドキドキといった感じで様子を見ている・・・いや、リインに関してはドキドキの方が強いか・・・?




俺は一旦呼吸を落ち着けて、ゆっくり想いを伝えた。



「・・・俺も、俺達も同じ思いだったんだ。より豊かになるように、皆幸せになるよう願って、この世界を創ったんだ。けど・・・魔物が生まれ、エギルが現れ・・・レッカを失い、クロトを奪われて・・・俺は自分を保つ事で手一杯だった・・・リヒト(あいつ)の言った通りだよ・・・俺は結局、何も救えていないんだ・・・」



頭を抱えてそう言った時だった・・・




・・・・・・パンッ!!!・・・・・・




「い゛っ!!?」



ファレルに、両手で思いっきり頬を挟むように叩かれた。




「・・・にすんだよ!!!」



痛みでちょっと涙目になってしまった・・・するとファレルは静かに言う。




「・・・腑抜けた面してるからですよ。」

「え・・・」



ファレルの言葉を合図のようにリインが立ち上がる。



「・・・そんな事言わないでよ!!私達は皆、ルイス君のおかげで今ここに居られるんだよ!?」



少し涙目になりながらリインは叫ぶ。それに続けてキリヤ、カイキも話し出す。



「そうだよ。俺なんかあの時一番お陀仏しそうだったのに・・・(ハァ~・・・)」


「縁起でもないな・・・!・・・まぁ俺も、助けてもらったし父さんもこうして取り戻せたし・・・」

「あははー、その節はお世話になりましたー。」



カイキの言葉にクロウさんも半笑いで答えた。



「・・・お前ら・・・」

「・・・分かりましたか?俺も含め、ここに居る皆ルイスが助けたんですよ。俺達が生きていることが、ルイスが救った証ですよ。」




皆を見渡しながらファレルが言う。




「・・・・・・」

「目、覚めたでしょ?」



ファレルはニヤッと笑いながら覗き込んでくる。

その視線に気にもせずに、俺の頬は緩んでいた。



「あぁ・・・そうだな・・・」



本当に、嬉しかったんだ・・・・・・










「・・・君達は似ているね、優しいとこも・・・不器用なとこも・・・・・・」




すると、クロウさんがしみじみ呟いた。



「・・・・・・え?」

「君達は・・・君とクロト君?だっけ・・・ホントによく似てるよ、気配も・・・性格も。

 ・・・だからこそ、調べるなら急いだほうがいいと思うよ。」



「・・・それ、どういうことですか?」



クロウさんの言葉に、ファレルが少し警戒して尋ねる。皆の空気が変わった。




「・・・皆はまず、魔物がどうやって生まれるか知ってる?」



質問に質問で返され、ファレルは少しむっとしてた。そして俺とカイキで答えた。



「・・・心の闇から・・・」「負の感情に魔力が宿る・・・じゃないの!?」



カイキはクロウさんとずっと調べていた。いきなりこんな質問をされてとても驚いていたが、クロウさんは両手人差し指を立て、顔の前で合わせて答えた。




「そのどちらもだよ。」


「え・・・両方、ですか?」



思わずリインが聞き返す。クロウさんは頷きながらそのまま続ける。



「あぁ。負の感情、それに闇が生まれ魔力が宿り魔物と化すんだ。まぁ今の魔物は別の方法で造られているみたいなんだけど、もともとはそういう風にこの世界に誕生したみたいだよ。(げん)に今までに俺達から魔物生まれたことある?負の感情なんて、誰もが持っているものなのに。」



言われてみれば確かに・・・と皆顔を見合わせていた。俺達皆が、とてもつらい経験をしているのに・・・



「・・・ま、生まれかけたやつならそこにいるけどな。」



今まで黙っていた龍のクロウが、カイキを見て呟いた。それを聞いた瞬間、皆カイキの方に向き直る。

・・・当の本人が一番びっくりしていた。



「・・・はっ?俺!!?」

「・・・カイキくーん・・・?」



クロウさんが『・・・どういうこと?』と目で言っているのが分かる。カイキは『何も知らん!!』と自分の顔の前で手をぶんぶん降っていた・・・俺とファレルは二人に気づかれないようにこっそり耳打ちしていた。




「・・・あの時の事ですよね・・・?クロウも気づいていたんですね・・・」(ボソッ)

「・・・まぁ、あいつも闇属性だし感じとりやすいんだろうな・・・鼻も利くし・・・」(ボソッ)





クロウさんはハァ・・・とため息をついてから再び話し始めた。



「・・・まぁ、話戻すよ?俺達はちゃんと何が正しくて何が悪いか・・・ちゃんと分かっている、光を宿しているから魔物は生まれない・・・負の感情自体は何も悪くないんだ、生きていくうえで必要な感情だしね。何も感じないのは、心が無いに等しいし・・・けど闇は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ッ!!!」



・・・クロウさんが何を言おうとしているのか、ようやく理解した・・・



「闇の魔力を持つ者は、他の魔力を持つ者より力は強く、()()()()()()()()()・・・というか、()()()()()()()()()・・・そこで心を保てるなら問題ないんだけど・・・クロト君の場合は・・・エギルの(もと)にいるし、何より自分を責めている感じがしたんだ・・・少し話しただけだけど、君とそっくりなあの不器用な感じ・・・多分彼がエギルの(もと)にいる理由は、隙を見て自分でケリをつけるつもりなんじゃないかな・・・?俺が感じただけだけどさ・・・」



「・・・・・・」



・・・あいつならやりかねない・・・レッカを失って、苦しんでいたのはあいつも同じだし・・・





クロウさんは間をおいて、意を決して話す。



「・・・だからこそ、そんな状態の彼は・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」





「っ!!!」



・・・その場にいた誰もが、凍り付いてしまった・・・




「・・・ち、ちょっと待ってください!そんな・・・今生きている人が魔物になるなんてこと・・・あり得るんですか・・・!?・・・あ、いや・・・クロト君は龍だっけ・・・」




リインが叫んだが、驚きすぎてパニックになっているのはその場の皆分かった。クロウさんが説明しようかする前に、ファレルが口を開いた。



「・・・いや、確かに可能かもしれません・・・負の感情、闇、魔力・・・素材の条件は揃ってますし、ましてや龍の身体です・・・より強力な魔物になる可能性があります・・・」

「・・・そんな・・・」



皆驚愕していた・・・が、クロウさんは俺を見据え話す。





「だから急ぐんでしょ?そして確実に助けるために、必要な事なんだよね?その『龍の谷』が。」


「あぁ・・・」



俺が静かに告げると、皆は俺の方を向いて静かになった。



「リヒトの事を知るため、そしてクロトを助ける手がかりも得られると思うんだ・・・だから、行きたい・・・」



俺の思いを聞いた皆には、笑顔があった。



「だったら、とっとと行くしかないですね!」

「早く準備しよ!」

「あ、傷薬とかも補充しましょう!」

「距離があるなら、食べ物も少し補充しないとね。」



ファレル、カイキ、リイン、キリヤ。皆の目には、恐れなど無かった。



そしてクロウさんは、立ち上がりながら話す。



「皆強いねー、なら移動は、このクロウ君の背に乗せてもらおうよ!俺が魔法で大きくするから。」


「・・・はぁ!!!???」



クロウさんに告げられ急に矛先が向かった龍のクロウは、言葉を理解するのに時間がかかったようだ・・・



「・・・でぇーーー!なんで俺なの!!てか俺行くとか言ってねーから!!」



精一杯叫ぶが、誰も話を聞いてなかった・・・



「へぇ?そんな事出来るんですか?それなら移動は楽ですね、ぜひお願いします。」

「えー!?空飛べるの!?楽しそう!!」

「・・・リイン、はしゃぎすぎだよー・・・」



ファレルは黒ファレルの笑みを浮かべながら龍のクロウに圧をかけお願いしていた。

リインとキリヤは楽しそうだった。



とその時・・・再びクロウさんが話す。



「あ、忘れてた。皆同じ名前が二人もいたらこんがらがるでしょ?俺の事は好きに呼んでいいからね。」



にっこり笑いながら話すクロウさん。確かに、クロウさんと龍のクロウを分けるのに使っているのはため口か敬語かだ・・・


しかし、名前か・・・




「・・・なら、『レイ』はどう?あんた、科学者でも有名なんでしょ?」



あのエギルが狙うくらいだし、コルスの話もある。だから名前の間を取ったんだが・・・



「・・・なるほど、いいね。なら今からレイって呼んで。タメもいいからさ。」



・・・前から思っていたけど、結構明るい方だ・・・



こうして皆準備を進める、新たなる道へ・・・





・・・クロウだけは嘆いていたけど・・・




「俺の拒否権なしかよ!!!???」






◇◇◇



・・・で、今に至る。




「もうかなり飛んで来ましたね・・・あとどれくらいですかね・・・」

「もう少しだな・・・」




景色を見ながら話す・・・




こんな俺に一緒に来てくれた皆を、ぎりぎりまで休ませたかった・・・ここから先は、大変だろうからな・・・・・・











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