● ダークナイトなスタートライン ●
「・・・まずはここを片付けないとなんですけど・・・」
「あー・・・そうだったなぁ・・・」
ファレルが新しく旅に加わることになり、その準備のために一度町に戻ることになった。
けれど家は魔物にぶっ壊されて、ファレルの荷物を探すのも一苦労だ・・・
「お金とかちゃんと残ってると良いんですけど・・・」
「金に関しては俺の貯金でしばらくは大丈夫と思うけど・・・とりあえず瓦礫どかすわ。」
「えぇ・・・お願いします。」
手分けして片づけを開始する。彼女との大事な思い出もあるだろう・・・俺とレッカで外を、ファレルが中を片付けることにした。
すると町の人達が集まり始めた。
「・・・あんた達、早くここから出てってくれないか。」
「・・・あぁ?」
ファレルは奥で大事なものを掘り出していて、こちらに気づいてない。
なんで、俺が相手をする。
レッカには瓦礫撤去を手伝っていてもらおう。
「・・・それどういう意味だ。」
「・・・あんた達破壊者なんだろ・・・!?だから魔物が現れた!あんた達さえいなければ・・・俺達は平和に暮らしてたんだ!!」
「そうよ!!あんた達が早く出ていけば、魔物もこの近くからいなくなるんでしょ!?」
・・・分かってないな、こいつら・・・
なんで魔物が増えているのか・・・いつの間にか破壊者のせいになってるよ・・・
俺が説明しようとしたときだった。
瓦礫を漁ってたはずのファレルが、こちらに近づいていた。
「それ・・・違うと思いますよ。」
「・・・何?」
「確かに俺達は破壊者です。でも魔物が増えているのは破壊者のせいじゃない。
・・・この町に魔物が出たのは俺のせいですけど・・・でも、政府が破壊者を集め始めてから、急激に魔物は増えた・・・破壊者が死んだところで魔物は増える一方です。どうやって生まれているかもわかっていないんです。俺達が出て行ったところで、この町にもいずれまた魔物が現れるでしょう・・・」
「んな!?」
ほぉ・・・
やっぱりこの人頭いいな。
冷静に物事を判断してる。
政府が狙ったのも分かるな・・・
「何言ってんだ!今までだって町の中には現れなかっただろう!!だったら・・・」
「今までは運がよかっただけですよ。」
「・・・っ!!」
やっと町の人達が黙ったところで、俺が話を続ける。
「皆も知ってのとおり、政府が破壊者を集めてしまっている。故に、魔物を倒す者がいないんだ。
だから魔物は増える一方だ。いつかは、町も・・・国も、襲われる。
・・・心配しなくても俺達はここを出て行く。政府の企みを暴くために・・・大事なものを取り戻すためにな。」
「ルイス・・・」
皆黙る。
まぁ無理もないけど。いきなり自分達が死ぬかもしれない状態に立たされたわけだからな。
・・・だからこその準備をしてたんだけどな。
俺は持ってきていた様々な武器を彼らの目の前に放り投げる。
——————————ドサッ!
「!?」
「ルイス・・・その武器は?」
「魔物の残骸から作った武器だ。ここぶっ壊した奴からも作ってた。これならだれでも扱えるし、魔物にも効く。」
「・・・あなたいつの間にそんなものを・・・」
「魔物どかさなきゃこの家片付けらんないからな。」
「まったく・・・あなたやっぱりただ者じゃありませんね・・・」
「そのセリフ、お前にそっくり返すよ・・・これをあんたらにあげる。武器屋もあるなら調整もできるだろ。少なくとも自分の身くらいは守れるようになったほうがいいんじゃないか?」
「・・・・・・」
まぁすぐにとはいかないだろうけど。
今なら魔物もしばらくやってくることはないはずだ。俺達を追ってくるなら、ここが襲われることもあまりないはずだし。
「それはそうとルイス。あとここ、全部片してもらっていいですか?」
「ん?ってもう終わってたの?大事な物全部回収した?」
「・・・もともとあまり置いてませんでしたし。・・・彼女との思い出の品も無事でしたので。ついでにお金も。」
「・・・了解。それじゃあ・・・」
ファレルの了承を得て、俺は瓦礫のほうを向き、手を合わせる。
——————————— 発動、ソードブレイカー!! —————————————
「・・・これは・・・」
「俺の武器も、アイラさんと似たようなもので。魔力を込めた分だけ剣を増やせるんだ。これを・・・」
俺の意思通りに動く剣を使って、瓦礫を運んでいく。
ある程度一か所に集めたら、一気に塵になるように破壊する。
もちろん、ちゃんと剣で囲いを作って周りに影響が出ないようにガードしてから破壊する。
これを繰り返して、瓦礫はきれいさっぱりなくなった。
ファレルはもちろん、ほかの皆もこの光景を見て驚いていた・・・
「破壊者の力って、こういう風にも使えるんですね・・・」
「破壊だけがすべてじゃないってこと。工夫すれば移動にも使えるし、俺の剣は。」
「・・・ますます興味が出てきました。」
こうして片付けも準備も終わった俺達は、すぐにここから移動する。
まだ町の人々は思うところがあるのだろう。こちらをにらんだり、動揺したりさまざまだった。
・・・まぁ、いずれ分かるはずだ。
この世界の、今の現状を。俺達の生きる意味を・・・
「・・・とりあえず・・・あのまま出てきちゃいましたから、どっかで野宿ですか?」
「あーまぁ・・・どっかに小屋でもあれば休めるけど・・・しばらく人里まではかかるし、そうなりますねぇ・・・」
最初から慌ただしい旅が、今始まる。