○ 目覚めの時 ○
◆◆◆
—————— カタカタカタカタ・・・・・・ ——————
荒廃した街、その中心に一人佇む男がいた。
その男の周りには、モニターやキーボードのようなものが空中に浮かび上がっている。モニターは沢山男の周りに浮かび上がっていて、同時に視認しながらキーボードを打っている。
—————— カタカタカタカタ・・・・・・ ——————
男はただ一心にそれの操作をしていた。そんな時・・・・・・
『・・・・・・ドン・・・ドン・・・・・・』
何処からか、かすかに音が聞こえた。それは僅かゆえに、場所までは特定できなかったが確かにこの街の中から音がした。
「・・・・・・」
少し気になり動きを止めるが、男はまた操作を始めた。
モニターに向き直り、カタカタと打っている。
ここは、人が寄り付かなくなったサグの街。
男の足元には、巨大な魔方陣が広がっていた・・・・・・
◇◇◇
・・・・・・ドン・・・ドン・・・!
ドガシャーン!!
「ブハッ!!」
とある建物の一室、そこの地下扉を蹴破り現れたのは、ボロボロな状態のファレル達だった・・・
まずはここまで気を失っているルイスを背中から一旦下ろしそっと壁にもたれかけさせて、振り返り皆に声をかける。
「皆さん・・・無事ですか・・・!?」
ファレルを先頭に、皆順々に地下から上がってくる。最後にカイキが出てきてようやく全員揃った。
息を切らしながら尋ねるファレルに、皆も呼吸を整えながら答える。
「だ・・・大丈夫・・・です・・・」
「っ・・・・・・!」
リインとキリヤは息も絶え絶え。カイキはと言うと・・・・・・
「・・・なっんで、上下に行ったり来たり・・・なんだよ・・・!!余計・・・疲れるわ!!」
ゼーハー肩を揺らしながら呼吸をするカイキの上を、クロウが泳ぐように優雅に飛んでいる・・・
「おつかれー♪」
「・・・てめぇ、あとで覚えてろ・・・」
カイキが恨めしそうに睨んでいる・・・
皆を眺めほっと一息ついていたファレルは、隣に立っていた彼女に声をかける。
「アイラ・・・ありがとう。アイラがいなければ、永遠に太陽を拝めないところだったよ・・・・・・(アハハ・・・)」
「ううん・・・私にはこれくらいしか出来ないから・・・私はずっと、ファレルと共にいるよ。まだ大変だけど、負けないで・・・」
ファレルはアイラをそっと抱きしめ、そのままアイラは光に包まれファレルの中に消えていった。
他の皆は声はかけなかったが、心の中でそっと感謝していた。
その時、ファレルの背中側で声がした。
「・・・・・・悪い。」
「!ルイス!」
あの戦いからずっと気を失っていたルイスが目を覚ましたのだ。
頭を押さえながら、ゆっくり立ち上がる。
その様子を、皆心配そうに眺めていた。
「ルイス君・・・大丈夫?傷、痛くない・・・?」
「ルイス・・・ごめん、俺・・・何も出来なくて・・・」
リインとカイキが不安げに声をかける。
「・・・大丈夫だ・・・悪かったな、皆・・・」
そっと笑顔をみせると、その姿に皆安心したようだ・・・
だけどすぐに、ルイスは建物の出口を見つめながら険しい表情になる。
「・・・ま、あまり休んでもいられないがな・・・」
「え・・・・・・?」
ルイスの言葉に、皆緊張が走る。
すると、ファレルが恐る恐る話し出した。
「あのー・・・もしかしなくても、この・・・ビンビンに感じる気配・・・ですか?」
ルイスが向いている方向を指さしながら尋ねる。
それを聞いてクロウやカイキも反応した。
リイン達はよく分かっていないようで、お互いに顔を見合わせていた。
「・・・あぁ。目覚めてからすごい魔力を感じている・・・けど、いつもと質が違うな・・・」
「質・・・?」
カイキが思わず聞き返す。ルイスはカイキの方を向きながら答えた。
「・・・俺達やよく出くわす魔物とは違う・・・なんというか、お前と似てるんだよ・・・カイキ。」
「・・・・・・え?」
それを聞いてカイキは固まってしまう。ルイスはまだ確証を得ていなかったが、答えは絞られていっていた・・・・・・
「ルイス・・・それって・・・・・・」
「・・・まだ奴かは分からない・・・でも、少なくともこの先に居るのは・・・」
・・・・・・本物の魔導士だ・・・・・・
時は一つじゃありません。タイトルは二人を指しています。




