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創世のソード・ブレイカー  作者: 柚木りん
第五章 君が求むは
32/70

◯ 放出の雨 ◯




◇◇◇



「・・・ハッ!そんな体でどうしようっての!?笑わせないでよ!」

「・・・・・・やってみるか・・・?」



俺の攻撃を受け止めながら奴は鼻で笑う。

俺は剣を握る右手に重さをかけつつ、左手に魔力を込める。




「っ!」

「・・・ハァ!!」




その左手を奴の眼前めがけて押し込む。

と、同時に大きな音と煙が辺りに広がり奴は後ろに吹き飛ばされた。




—————— ・・・ズガアァァン・・・!!! ——————



パラパラと瓦礫が落ち、砂ぼこりが舞う。

俺の息遣いだけが、静かに響く。



「・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」



・・・確かに手ごたえはあった。魔力がぶつかる感覚・・・この手に残ってる。



だが・・・・・・




「・・・フフ・・・アハハハ・・・!」



・・・・・・効いてない・・・!!!





「・・・・・・ヘェ・・・まだこんな力が残ってたんだ・・・」

「っ!!!」



奴は左手で顔を押さえながら、笑っていた。

俺はもう一度武器を構えなおす。しかし、こちらもボロボロ。長時間の戦闘は不可能と考えていた。


が・・・・・・そんな考えは、無意味に終わった・・・・・・




「・・・あーあぁ・・・もう少し遊びたかったけど・・・」



奴はゆっくり、顔を押さえていた左手を離し、そのまま人差し指を出して天井に向ける。



「・・・・・・()()()()()。」



「「!!!」」




その言葉を皮切りに、急に俺の身体から力が抜けて膝をついてしまった。



「・・・な、ん・・・」


「ルイス!?」



カイキの声が響く。ゆっくりと辺りを見回すと、他にリインやキリヤも無事なようだが・・・



「こ、れは・・・」

「お、おい!ファレル!?」



クロウの声が聞こえて振り向くと、ファレルも頭を押さえて片膝をついていた。どうやら俺と同じ状況になっているようだ。




—————— コツ・・・コツ・・・ ——————



カイキ達が俺達に駆け寄って来る中、リヒトがゆっくりと近づいてきて笑みを浮かべながら語り始める。



「お前らさぁ・・・ここがどこだか忘れてないか?

 戦っていないそこの女子供らはともかく・・・」

「え゛!」

「どういう意味だ!!」



リインは少しショックを受け、カイキは吠えたが気にせず話を進める。



「お前達は魔力を放出した、この()()()()()()()()()()()。しかもこの竜巻の近くでな。その魔力も、一緒に竜巻の中にのまれ地上に流れてるんだよ。」


「・・・・・・っ!!!」


「この空間にいるだけで、徐々に魔力は奪われていくだろう。長時間は居座れないだろうな。」




二ヒッと歯を見せ無邪気に笑うリヒトを見て、今まで感じていた違和感の正体に気づいた。

その答えを知るきっかけを作ったのは、クロウだった。




「・・・ってならお前はどうなんだよ!お前だって魔力吸われてるだろ!?」


「・・・あぁー・・・そう見える?」



リヒトは右手で頭を抱える仕草をするが、口元は笑っていた。



「・・・俺の本体はここには無いんだよ。別の場所から魔力を供給してる。それにここで吸われてへばるほど俺の魔力は少なくないんでね。俺には一切関係ないって事だよ。」

「んなぁ・・・!!」

「ちょっ!それなんかズルくないですかー!?」



クロウはワナワナ震えていて、リインは指を指しながら叫ぶ。しかし、リヒトはそれをぶった切る。



「素人は引っ込んどいてもらえますー!!?」



「ムグッ・・・」(ムスッ)

「・・・まぁまぁ・・・」(汗)




再びリヒトは俺の方に向き直り、話始める。



「とまぁそんな感じで。()()()()あと少し魔力欲しいから・・・協力。してね?」



そう言いながらリヒトはもう一度左手人差し指を上に向ける。思わず目で追ってしまったが、その先にあったのは・・・・・・




「・・・・・・え・・・?」


「・・・フッ。」



・・・ファレル達も、そこにあるものに気づいて皆言葉を無くしていた。

竜巻の先端・・・この空間の天井付近に漂っていたのは・・・




・・・・・・俺やレッカに、忘れられない記憶を植え付けた存在達・・・・・・




「・・・・・・カ・・・リン・・・?」



この遺跡の、住人達の姿だった・・・・・・




◇◇◇



「な、に・・・あれ・・・!」

「人・・・ですか・・・・・・」





・・・竜巻の先端。まるで地上に引き寄せられるように、この遺跡の住人達が漂っていた。皆意識がないようで、苦しそうな表情をしていた。その中に、以前俺とレッカをここまで引き寄せたカリンの姿もあった・・・




「・・・・・・なん・・・で・・・・・・」




言葉が出なかった。確かにあの時成仏した。俺もレッカもこの目で見たんだ。

だけど今目の前に起こるこの光景に・・・





感情を、押さえられなくなっていた・・・・・・







『・・・・・・・・・っ!!!!!』




◇◇◇




—————— ・・・・・・ゴッ!!!・・・・・・ ——————




「っ!ルイス!?」



カイキの声が響く。あの光景を見た瞬間、感情を押さえられなくなり魔力を一気に放出した。

竜巻が吹き荒れる中、ルイスの溢れ出る魔力も合わさって、この空間内は嵐のごとく暴風が吹きすさぶ。




「おい、しっかりしろ!!」



意識が朦朧とする・・・押さえられない・・・・・・



「・・・フフフ・・・アハハハ!!お優しいねぇ、創世龍!!お前のおかげでかなりの魔力が溜められたよ!・・・ま、聞こえてないか。あれは()()()()()()()()()()・・・」



「!?どういうことだ!!」



カイキが叫ぶが、風の音に紛れてしまう。


リヒトは笑いながら、それに答える。


「忘れたの?ここの住人達はとっくの昔に死んでるんだ。そしてちゃんと成仏もしてる。()()はこの地の魔力が吸収されたことで場が刺激されて現れた場の記憶だ。本物じゃないんだよ。」




そう、笑いながら答えた時だった・・・・・・





—————— ビュッ!!・・・・・・ガキィン・・・ ——————





◇◇◇




「ッ!?」




リヒトが何かに驚いたと同時に、光る物が飛んで来る。

それがリヒトに掠めたと思ったら、リヒトは霧のように消える。

その掠めた物が音を響かせ壁に突き刺さった時、それが剣だと知る。




「・・・・・・ハァ・・・・・・」



そう、ファレルの剣だった。



「お、おい・・・ファレルさん・・・?」



思わず近くにいたクロウが敬語になるほど、ファレルは明らかに怒っていた。




そんな中リヒトの声が、辺りに響き渡った。



『・・・アハハ、さすがだねぇ・・・やっぱ面白いよあんた・・・とりあえず今日はこのまま帰ってあげるよ、一応目的は達成してるし・・・あ、あとさ・・・』



そう答えながら一息置くと、次第に竜巻は消えていった・・・あの住人達の姿も・・・・・・

そして再びリヒトが答える。



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・』



それきりリヒトの気配は完全に消失した。時を同じく魔力が切れたのかルイスの体も崩れ落ちる。



「ルイス!!」



ファレルが急いで駆け寄り介抱する。



「・・・・・・っ・・・」

「・・・ハァ・・・気を失っているだけですね・・・」

「・・・おい、ファレルの方こそ大丈夫かよ・・・俺にぶつかるほど吹っ飛ばされてたじゃねぇか・・・」

「・・・一言余計なんですよ・・・頭ちょっと打っただけなので気にしないでください。」



ルイスの周りに仲間が集まって来る中、カイキは少し遅れてやって来た。

どうやら放り投げたファレルの剣を引き抜いて戻って来たようだ。



「・・・ファレル。これ・・・」

「お、ありがとうございます。」



剣を受け取り鞘に納める。そしてそのままルイスを背中に背負い、立ち上がる。

その時ルイスの左腕は力なくファレルの肩から落ちた。



「とにかくここを出ましょう。先ほどの衝撃であちこち崩れかけてますし・・・ルイスも休ませたいですから。」

「そ、そうですね!」

「でも・・・こっからどうやって出るの?」



リインの言葉に皆ハッと向き合う。ここまで案内してきたルイスは、今意識不明の状態だ。行きは道なりに進むだけだったが、出口までは通路がいくつもあるという・・・ルイスが意識を失っていることで、レッカも剣のままだ・・・・・・


皆で頭を抱えていると・・・・・・




「私が案内出来るよ。」


「「!!?」」



皆驚き振り返る。

そこに居たのは、遺跡の入り口で皆を一度制止した・・・・・・




「・・・・・・アイラ・・・」

「・・・一応最短ルート分かるよ。そこから行けば、サグの建物内の地下扉に出るはずだよ。」



アイラは進むべき方向を指さしながら答える。



「えっと・・・なんでそんな事知ってんすか・・・?」

「・・・・・・(ニコッ)」



カイキは尋ねるが、アイラは静かに笑うだけだった。おそらく、これ以上聞いても答えてはくれないだろう。


その様子を見たファレルは、小さく笑って口を開いた。



「・・・分かった。案内をお願いするよアイラ。」

「うん!」



そうして皆立ち上がり、武器も仕舞って走り出す。その時、誰も気づいてはいなかったがファレルの揺れる背中の上で、ルイスは一粒の涙を流していた・・・・・・






「あ、でも道入り組んでて最短でも約一キロあるから。シバルから数えて・・・合わせて二キロぐらいだね。」





(一同)「え゛!!?」







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