○ 愛の繋がり ○
◇◇◇
「・・・アイラ・・・?」
俺達の前に現れた白い影。それは、ファレルが会いたくても会えない・・・亡くなった恋人、破壊者のアイラさんだった・・・・・・
「・・・なん・・・で・・・」
「・・・ここならあんたに会えると思ったよ・・・」
「な!!」
俺の言葉を聞いたファレルは、動揺を隠しきれなかった・・・
「知ってたのか・・・?このこと・・・!!」
「確信してたわけじゃない!ただ、アイラさんはずっと弓の中にいただろ?クロウの洞窟を抜けてから、あそこの力を吸収していたようでな。少しずつ、魔力が高まっているのを感じてた・・・そしてこの魔力が満ちる、幽霊も存在できるこの空間で顕現したってわけだろう・・・」
俺達の様子を見ていたアイラさんは、ゆっくり口を開いた・・・
その頃、俺達の後ろでカイキ達がこそこそと話をしていた。
「ねぇ、クロウ・・・あの人、誰?」
「いや俺が知るかよ、てか俺に聞くな。多分、俺と会う前の二人の知り合いじゃねぇの?」
(あの気配・・・洞窟を抜けてからファレルに感じていたものと・・・)
「ふーん・・・」
「ほわぁー・・・綺麗な人だねぇ・・・」
「ファレルさんの恋人・・・かな?でも、あれって・・・」
リインとキリヤは見惚れていた。しかし、皆薄々気づいていた。
ここで出会うということが、どういう事なのかを・・・
「・・・ファレル、ルイスも。こうして話をするのはお久しぶりです・・・」
ゆっくりと、アイラさんは口を開いた。
ポツリポツリと絞り出すように話すアイラさんを見て、ファレルは気持ちを押さえられなくなっていた。
「アイラ・・・本当に・・・君、なのか・・・?」
「・・・・・」
静かに、悲しそうに・・・アイラさんは笑う・・・・・・
「・・・ごめんね。こんな形で再開なんて・・・本当は、あなたを戦いに、巻き込みたくなくて・・・何も、言えなかった・・・そのせいで、あなたを・・・苦しめた・・・!」
ついには泣き出してしまったアイラさんを、ファレルはそっと抱き寄せる。
頬に伝う涙を親指で拭って、もう一度抱きしめる。
「俺の方こそ・・・!!守れなくて・・・すまなかった・・・!こうしてもう一度、君に触れられるとは・・・思わなかった・・・むしろ、嬉しいよ・・・アイラ・・・!!」
「ん・・・私も・・・ずっとこうして触れたかった・・・!!」
アイラさんも腕をファレルの後ろに回し抱きしめる。
お互いに涙は止まらなかった・・・
しばらく待って、申し訳ないが話を切り出そうとした時・・・
アイラさんが、ファレルから離れた。
「・・・ごめんね・・・このまま、皆・・・引き返してほしいの・・・」
「え・・・・・・」
俺達は、何の事か分からなかった・・・ゆっくりと、アイラさんはファレルから距離を取る。
「・・・どういうこと?さっきも言ってたよね・・・」
俺は尋ねる。
アイラさんは少し黙って、意を決して話し出した。
「・・・皆の事はずっと弓の中から見ていた・・・皆が出会って強くなっていくのを・・・・・・」
そこで一息置いて、そのまま続ける。
「でも・・・あれはダメ!触れればたちまち飲まれてしまう・・・皆の光じゃ、通用しないの・・・!!」
「なっ!」
俺達皆に衝撃が走った。
「・・・ちょっと待て!あんた・・・知ってんのか!?この先にいるのが誰なのか!この先に・・・何がいるのかを!!」
俺の言葉に、アイラさんは小さく頷く。
「・・・あれは人ではない・・・一寸の光もない、純黒の闇・・・そこらの魔物とは比べ物にならない力・・・ファレル達は、一度見てるはず・・・・・・」
「「!!!」」
その言葉を聞いて、俺達は互いに顔を見合わせた。
「あの男か・・・・・・!」
記憶を喰らう魔物の中で見た男・・・カイキやクロウの前にも現れた・・・
俺達を、ここまで誘導した男だ・・・・・・
「・・・アイラ。」
その時、考え込んでいたファレルが口を開いた。
「・・・それで?俺らに引き返せって?」
「ファ・・・ファレル、さん?」
・・・なんかファレルの様子が・・・怖いんだが。
「アイラ・・・俺が頑固なのは知ってるだろ?」
「・・・・・・」
少しずつ、ファレルはアイラさんに近づいていく。
「・・・俺は知らなきゃいけない、君がなぜ殺されなければいけなかったのか・・・
そのきっかけを作った魔物が一体何なのか・・・最初からすべて知らなければいけない・・・だから、俺は進むよ。たとえ君が止めても・・・それにどうせ、入り口はルイスが燃やして出るの大変だし。(笑)」
「うっ・・・まぁ、そうだけど・・・」
急に話が飛んできて驚いた。まだキレてるのか・・・?
「アイラは、応援してくれるよね?」
微笑みながらそっとアイラさんの肩に触れる。アイラさんは涙が止まらず、少し困った表情になりながらも・・・小さく、確かに笑っていた・・・・・・
「・・・ズルいよ・・・私が断れないの分かってて・・・言ってるよね・・・」
ファレルはもう一度アイラさんの涙を親指で拭いながら、彼女の言葉を待っていた。
その表情は、とても穏やかである。
「・・・分かったよ。もう私からは、何も言わない・・・だからどうか、気をつけて・・・・・・」
「ん・・・ありがとう・・・ずっと隣にいてくれて・・・」
そうして二人は力強く抱きしめ合い、熱い口付けを交わす。
そのままアイラさんは、光となってファレルの中に消えていった・・・・・・
「わ!ちょっと!!」
「子供は見てはいけません!!」
・・・後ろでリインがカイキの目を隠していた。
「・・・ファレル。」
「大丈夫・・・アイラは俺の中に眠った・・・今度こそ、一緒になれた・・・!」
自分の前で小さく拳を握るファレル。
彼女の存在を確かめるかのように・・・
「行こうルイス!立ち止まってはいられない・・・!!」
「・・・ハッ!そうだな!!」
俺とファレルはお互い笑みがこぼれ、拳と拳を突き合わせた。
「お前ら!早く来い!このまま進むぞ!!」
「あ、はい!!」
「待って~!!」
俺は後ろにいたカイキ達に声を掛けて、足を進める。
リイン達は返事をしたが、カイキはボーっとしていたようだった。
「・・・・・・」
「あ?どうしたカイキ・・・」
「ん、いや・・・・・・」
クロウがすぃーっと飛びながら振り返る。
カイキは返事をしながら、ゆっくりと歩き始めた。
(・・・少しだけ、羨ましい・・・と、思ったのは・・・なんでだろう・・・)




