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創世のソード・ブレイカー  作者: 柚木りん
第四章 導きの楔
22/70

● 『悪魔』 ●



◇◇◇



「・・・これからどうしましょうか・・・」

「・・・ん?」



コルスの店で晩御飯を皆で食べている中、ファレルが口を開く。



「昼間カイキ達が出会った存在、明らかに今までの敵とは異質でした。これまで以上に警戒する必要があるでしょう。しかしその前に、あと一日休みがあるんでどうします?」

「ってそっちかい!!」



クロウがナイス突っ込みを入れる。

ルイスから言い渡された休みはあと一日。ルイスはいまだに武器作りのため隣の工房に籠ってる。



「そうですね・・・それなら私達は鍛えることにします!」

「鍛える?」



リインが箸を握りながら力強く話す。



「はい!だって私達ずっと助けられてばっかりでしたから・・・もっと体鍛えて強くなりたいんです!

武術をもっと極めれば・・・!」

「いや・・・あんまり無理しないでくださいね?(汗)」



張り切りすぎるリインをなだめるファレル。その様子を見ていたカイキが、ポツリと話す。



「・・・俺が付き合ってやろうか?」

「・・・へ」



思わぬところからの返事に、リインは空気が抜けたような声が出てた。



カイキはご飯をパクパク食べながら続けて話す。



「・・・俺も感覚取り戻したいし、組手とかなら相手出来るでしょ。それでよければだけど。」



カイキのセリフが終わる前から、みるみるリインの顔が明るくなっていった。




「・・・って、なにその顔・・・」



それに気づいたカイキが、みるみる引いていった。



「付き合ってくれるの!?カイキ君!!」

「うわっ!?」



なんとリインは、ガバッとカイキに飛びついて抱きしめてしまった。



「ありがとー!!君がいてくれると心強いよーー!!」

「やめろ!!くっつくな!!」



まるで小さい子をあやす様に抱きしめなでなでを繰り返すリインに、さすがのカイキも戸惑っていた。

それを見ていたキリヤは、完全に固まってしまっていた。




「あ・・・アワワワヮヮ・・・」

「・・・大丈夫ですか?」



思わぬ彼女の行動に、キリヤは自分の体の事もあってどうすることも出来なかったようだ。

そんな彼を優しくファレルが慰め、そのままリイン達に提案した。



「それなら、この街の広場にいい所がありますよ。ここで作った武器の試し打ちが出来るそうです、いろんな種類が。たまに大会も開かれているみたいですし、行ってみては?」

「え!!そんなことやってたんですか!?知らなかった・・・」

「なるほど・・・この街の武器が使えるのか・・・面白そうだな。」




武器職人達の腕試しの場でもあるこの企画。そこでは大会でも職人達が作り上げた武器を使うことができ、不定期に開催される大会に優勝すれば賞金がもらえ、使用者が武器を気に入ればその場で買うことも出来る便利な仕組みだ。



「分かった。明日行ってみようリイン!」

「はい!!」

「お、俺も行くよ!!」



焦ってキリヤも答える。

彼女が取られそうと思っているようだ・・・




「なら俺は・・・」



ファレルが皆の会話を確認してからボソッとつぶやく。

それをクロウが見ていた。



「・・・・・・」






◇◇◇




「・・・なーんか面白いことになってんな。」




リイン達の武器を作りながら、独り言をつぶやいていた。




「なんだい・・・気になってたんなら自分で行けばいいのに。」



独り言・・・のつもりだったんだが、コルスが返事をした。




「・・・別にそういうわけじゃないんだが、返事するなよ。」





一応この街に(ブレード)を展開して情報を得ていた。ゆえにカイキ達の事も知ってたんだが・・・




「・・・お前は、どう思う?」

「・・・・・・」



ずっと気になっていたことを尋ねた。

カイキ達が出会った、あの男・・・・・・



魔物でもなく、死人でもない。

人のように話すが、人ではない・・・




「・・・さぁね、わしも初めてだよあんなのは・・・だが一つ言えるのは・・・・・・」

「ん?なんだ。」



コルスは少し間をおいて、再び話し始める。




「わしが知らないって事は、わしが生まれるより前の事。

 わしら龍より()()()()()()()()()()()()ってことにならないかい?」



「・・・・・・」




カイキが言ってたやつが、動き出したって事か・・・?






◇◇◇



「そんじゃ、行ってくるね。」

「鍛えてきます!」

「・・・不安だ・・・」




カイキ達は別れを告げ、出かけて行った。

ファレルは三人の後姿が見えなくなるまで見送った。



「・・・・・・(じーーーーーーーーー・・・・)」

「えーっと・・・」




そんなファレルを、後ろで静かにクロウが見つめている。




「・・・今度はお前が外に出るってか?」

「やだなぁー出ませんよ。ただ、ここはより情報を集めやすいそうなんで調べてくるだけですよ。」

「ん、情報?」



工業の街なだけあって、機械もたくさん。そしてここではネットが繋がっている。

パソコンで調べるためのビルも用意されているホント便利な場所だ。





「・・・なんですかクロウ。言いたいことがあるなら言ったらどうです?」

「んにゃ、べつに?暇だし俺もついてく。」

「・・・そですか、お好きにどうぞ?」



なかなかない組み合わせで調査に出かけていく。

クロウはファレルの頭に乗ってそのまま進む。

今では誰かの頭に乗るのは当たり前になっていた。




◇◇◇



「・・・おぉ。」



ビルに入ると、思った以上にたくさんのパソコンが並んでいて、その分人もたくさんいて圧巻の光景だった。

さすがの二人も言葉を失う。




「・・・さすが工業の街、ここまでパソや人たくさん見たのはさすがに初めてですよ・・・」

「おいおい・・・パソコン使うんだろ?空いてるとこないんじゃないか・・・?」

「あっ!ちょっと探しますよ!」



あまりの人の多さに、空いているパソコンがあるか二人で探す。

しばらく歩き回っていると、窓際の端の方に一台空いているのを見つけ座る。

クロウはその時に、その台の上に飛び移って画面を一緒に覗き込む。



「何を調べるんだ?」

「一応、これから行くカグナ遺跡の事について調べようとは思ってましたけど・・・」



一度間をおいて、もう一度話す。



「あなた達が出会った男の事や、魔物や死人について何かないかと思いまして。」

「・・・そんなことそれに載ってんのか?」

「別に載ってるとは思ってませんよ。ただ、噂話とかそういう小さな情報でいいんです。そんなのがないかと思いまして。」

「なるほど・・・」




慣れた手つきでパソコンを操作していくファレル。話した通り、最初にカグナ遺跡の事について調べ始めた。すると意外と早く見出しが出てきた。




「・・・出るもんだな。」

「えーっと、なになに・・・」




『カグナ遺跡。およそ千五百年前からある地下遺跡。遺跡の中や出入り口もカラクリが仕掛けられており、一度入ったら二度と出られないと言われている。地上にはサグという街が広がっているが、よく聞こえないはずの声が聞こえるという噂が絶えなかった。』



「・・・おいおい、マジかよ・・・」

「ここまではルイス達が話してたことと大体同じですね。エギルの施設があるという街はサグと言うんですか・・・」



そのまま二人は続けて記事を読んでいく。




『ある時、政府がサグを買い取った。その日以来、一般人は立ち入り禁止になり声がどうなったかも分からない。誰も街に立ち入らなくなった。』




「これは・・・」

「・・・この時からエギルがやってきて実験を始めたって事か・・・?」




別の記事に、サグについて誰かが日記を書いているのを見つけた。その記事も開いてみる。




『数年後、久しぶりにサグに行ってみた。しかし、目を疑った。そこには荒廃した街が広がっていた。誰もいない・・・政府は撤退したようだった。

少し散策してみる。すると、誰もいないはずの建物の扉が動き出した。俺は警戒して足を止める。そこから出てきたのは、赤い眼をした男の子だった。』




「ん!?赤い眼!?」

「これ・・・あいつじゃないのか?」



そのまま日記に目を通す。




『どうしてここにいるのか尋ねてみた。男の子は何も答えなかったが、サグの入り口を指さした。俺は同じ方向を見た。すると頭の中に声が響いてきたんだ。

(早くここを出たほうがいい。ここは呪われた。)

俺は驚いてすぐにその子に向き直った。しかし、すでにそこには誰もいなかった。・・・俺は幽霊でも見たのだろうか・・・その後は一切人の気配がなくなった。あの男の子は一体何だったんだろう・・・人であって人でないような、真っ黒な闇・・・まるで・・・』




「・・・()()のようだ・・・だって!?」

「・・・なんだよ・・・これ・・・この赤い眼ってルイスの事じゃなくて・・・!」




『それからすぐに街に戻った。そしてサグの話をする。しかし驚いたことに、誰もサグの事を知らなかった。何度話しても、誰に話しても全く知らない。行ったことがある人に話をしても、覚えていないと言われた・・・一体俺は何を見たのか・・・夢でも見たのか、幻だったのか・・・俺もいずれ、この街の人達と同じように、記憶がなくなっていくのだろうか・・・・・・』



日記はそこで終わっていた。

日記を読み終わった二人は、あまりの内容に衝撃を受けていた。

()()()()()

そう聞いて、ファレルは前にルイスから聞いた話を思い出していた・・・




「・・・ねぇクロウ。ルイスの弟は、()()()()()()()・・・?」

「え?あ、あぁ。光属性のルイスに対してクロトは闇。だからクロガネとも言われてたんだが・・・ってまさか・・・」




ファレルは今までの情報をもとに推理する。

龍は人にも化けられるが、この日記の主は『悪魔』と称した。そこがどうにも引っかかる。




「この日記の主、会えませんかね・・・」

「って何処の誰か分かんねぇだろ?しかもこの記事はかなり昔のだ。生きてるのかさえ・・・」



クロウの言葉をよそに、ファレルはさらに検索する。検索単語をカグナ遺跡から変更し、何とかこの日記の主の痕跡を探す。すると・・・




「あのー・・・」

「っへ!?」

(ビクッ!!)



検索に集中していたため、いきなり声をかけられファレルもクロウも驚いた。

声をかけてきたのは、ここのパソコン施設を管理している職員の一人だった。



「あ、すみません!驚かせてしまいまして・・・実はここのパソコンすべて管理室からチェック出来るんですが・・・」

「・・・マジですか・・・」



「あぁ!!もちろん不正ログインとか違法なことがないように調べるためですよ!それで今回もチェックしてたんですが・・・聞いたことない遺跡を調べてる人がいるなぁって興味持ちまして・・・」

「って、カグナ遺跡の事ですか?」



名前を聞いて、職員はうなずいた。



「あ、はいそれです!そんな所検索する人初めてだったんで・・・そしたら次は日記見だして、その人の事調べているみたいだから大丈夫かなって・・・」

「・・・それ、俺達の事疑ってたって事ですね・・・」




監視されてた上に明らかに怪しいと疑われていたことに、さすがのファレルも少し怒りを覚える。



「す、すみません!ただ、その日記を書いている人はここにはいないみたいなので・・・」

「え・・・」



思わぬ答えに、ファレルとクロウは顔を見合わせた。



「それ、どういうことですか?」

「あ、えっと・・・私は会ったことはないんですが。サグの街の事をずっと話す人がいたらしいんですけど、誰も聞かず信じてもらえないと、数十年前にこの街から出て行ったそうなんです。今は街の外れの森で隠居暮らししているとか・・・」



・・・どうやら日記の主と同一人物らしい。そう確信したファレルは質問する。



「あの、その人の話を聞きたいんです。居場所とかご存知でしょうか?」



しかし、職員は首を横に振った。



「・・・いいえ。さすがに場所までは・・・ただ、その人の家の前に湖があると聞いたことがあります。それを目印に探されてみては・・・?」

「・・・分かりました。貴重な情報ありがとうございます!」



そう言ってファレル達はその場を後にする。すでに外は日が落ち始めていた。



出て行くファレルとクロウの後姿を見送りながら、職員は首を傾げていた。



「・・・あれはペットなのかしら・・・?」




◇◇◇



「どうするんだよこれから!戻んのか!?」




二人は駆ける。街の外に向かいながら。



「いえ!まだもう少し時間はあります!なのでその人に会ってみようかと!幸い、外れの森は二つ。地図によると、湖があるのはそのうちの一つです!飛ばせば間に合うかと!」

「ハッ!なるほどな!俺も興味出てきたから付き合うぜ!もしかしたらその赤眼って奴が、昨日会ったやつかもだしな!!」




そのまま二人は、人ごみに消えていった・・・





◇◇◇




「んーーーー・・・終わったぁ・・・」

「たく・・・一人でやれっての。」



ようやくリイン達の武器製造が終わり、一息入れる。

そのままレッカに指示を出す。



「レッカ。カイキ達が戻ってくるから迎えてくれないか?」

『了解!('▽')ゞ』

「ん、どっか行くのかい?」



支度をしながらコルスの質問に答える。



「ちょっと・・・ファレル達を迎えに行ってくる。」

「ファレル?・・・あぁ、なんか街の外に出たみたいだねぇ・・・日記の主に会うとか・・・」




(ブレード)を展開していた俺はともかく、どっから情報を集めてんだこいつ・・・




「なんか・・・嫌な予感がしてな・・・」

「・・・・・・」




・・・ただの思い過ごしならいいんだがな・・・








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