○ 光を求めて愛に生く ○
「・・・ハァ、ハッ・・・ハァ・・・」
その女性は弓を手に走っていた。
後ろからは大きな大きな魔物が迫っている。
「・・・チィッ!!!」
振り向きざまに矢を放つ。
魔力を宿すその矢は放たれた途端数を増やし、魔物の体を粉砕した。
他に敵がいないか確認し、警戒を解く。
「・・・一体どれだけいるの・・・」
彼女は数少ない破壊者の一人だ。
昔は程よくいた破壊者は、今は政府によって集められ表立った破壊者は存在しない。
集められた破壊者がその後どうなったか、誰も知らない・・・
「・・・政府は一体何を企んでいる・・・」
彼女はずっと政府を追いながら魔物と戦っていた。
愛する人との平穏な暮らしを手にするために・・・
―――――ガサッ!!
「――――ッ!!」
彼女が目にしたのは、ありえない光景だった・・・
◇◇◇
「こっちから気配がしたんだな!?」
『うん!!』
昨夜の一件以来、ずっと進み続けていた少年と少女は急に速度を速めた。
魔物の気配以外に、破壊者の気配がしたからだ。
しかし、時すでに遅し・・・
「―――ッ!!!」
そこで彼らが目にしたのは、白い花畑の中心にある魔物の死骸と
消えかけていた女性の姿だった・・・
「っおい!!しっかりしろ!!」
急いで手当しようと少年は駆け寄り抱きかかえる。
人は誰しも、少なからず魔力を持っている。
その魔力の質量や魔法の度合い、しかも破壊者なら破壊者独自の特殊な力を持っていて大抵の傷なら回復できる。
しかし・・・
消えかけている人を治すことなど、誰にも出来やしない・・・
ある種を除いては・・・
「・・・きみ・・・は・・・?」
辛うじて意識を取り戻した彼女は、弱弱しく少年に訊ねた。
「・・・ルイス・・・今治療するからもう喋るな・・・」
この瞬間にも、彼女の体は消えかけていた。
もう腰から下は、塵となっていた・・・
「・・・そっか・・・ルイス・・・きみも・・・ブレイカー・・・なんだね・・・」
そう言いながら彼女は、微笑んでいた。
「きみ・・・は、どこか・・・ファレルに似てる・・・
私はもう・・・だめ・・・だから、きみに・・・お願いして・・・いい・・かな?」
「・・・何?」
何を言い出すのか・・・この人は・・・と、ルイスは驚いていた。
しかしそれは、悲観して出てきた言葉では無かった。
「きみ・・・が、ここにいる・・・ってこと・・・は
きみも・・・政府と・・・戦ってるってこと・・・じゃない・・・?」
「・・・“も”ってことは、あんたも・・・」
政府に連れて行かれていないということは、その存在を隠していたということ。
それは政府にとっての反逆という意味。・・・国の敵だ・・・
「・・・この弓を・・・彼・・・ファレルという・・・男に・・・渡してほしいの・・・」
そう言ってルイスに弓矢を差し出す・・・
それを持つ手は・・・今にも落ちそうだった・・・
「・・・ずっと・・・いっしょに・・・いる・・・から・・・」
ルイスはそっと受け取る。
それと同時に・・・
「黙ってて・・・ごめ・・・んね・・・」
彼女の体は頬をつたう涙と共に塵となり・・・彼女の武器に吸い込まれた・・・
弓には“アイラ”と書かれていた・・・
「・・・政府軍・・・か」
『・・・この魔物達も・・・あいつらが飼ってるやつらみたいだよ・・・』
ルイスは政府がどんな存在か知っている。
破壊者達を集めていても、魔物狩りに駆り出すこともない。
破壊者達を使って何かしてるとは思っていた。それが何かはわからなかったが、
だがこの魔物の死骸を見てルイスは確信した。
「・・・まさか魔物を造ってるなんてな・・・」
ルイスは彼女の、アイラの弓を肩にかけ、少女を連れて新たな決意を胸に再び歩みだした。
少女の声はルイスにだけ聞こえる。
傍目にはなんて言っているか分からないが、ルイスは少女の言葉を聞いて何かを答えた。
進む先は、決まっている・・・
◇◇◇
「・・・ん?」
一瞬空気が変わったような感じがした。
町の外・・・花畑があるほう・・・かな?
「・・・ねぇ、ちょっとファレル?」
「・・・え?」
気を取られていたら部屋の奥から声をかけられた。
かけたのは、俺の彼女のアイラだった。
「・・・アイラ、ごめん・・・ちょっとぼーっとしてた。」
「んもう、どうしたの?体調悪いの?」
「いや・・・なんでもないよ、大丈夫。」
俺の体調を心配する声。・・・とても安心する。
・・・だが最近違和感を覚えた。
・・・彼女は・・・俺に触れなくなった。
「こっちにコーヒー置いておくよ。」
「・・・ん、ありがとう・・・」
一抹の不安を抱えながらその日の夜を過ごした・・・
次の話で彼に会いに行きます!
分かりづらくてごめんなさい!!