● 海の目覚めは深淵の涙 ●
◇◇◇
「・・・・・・ん・・・」
目が覚めるとそこは、
「・・・ここ・・・は・・・」
薄暗い、倉庫のような部屋だった。
明かりは確かにあったが、部屋の入口と思われる扉の近くに小さなろうそくが立っているだけだった。
ろうはすでに半分くらい流れており、明かりは少しずつ小さくなっている。
そんな部屋の片隅にある少しボロいベッドの上に、俺は寝かされていたのだ。
「・・・・・・っ?」
頭が追いつかない・・・俺は一体なんでこんなところにいる・・・?
「っ!!」
気を失う前のことを思い出そうとすると頭が痛む・・・その時気づいた。体中手当てが施されていることに。誰かが俺を運んでくれたのか・・・?
そういえば・・・あの時何か見たような・・・
確か・・・赤い・・・・・・
「なんだ、起きてたのかい。」
「ッ!?」
記憶を整理していて扉が開いたことに気づかなかった。
いつの間にか、小さいじいさんと若い女と・・・ローブをまとった大柄なやつが部屋の中にいた。
「だ、だれだ!?」
「落ち着け。別にあんたの敵じゃないよ。」
「あ、あの!すっごいケガしてたので!動かない方がいいよ!」
女は慌てた様子で俺のもとに近づき、暴れないよう制止する。思わず後ずさってしまったが、どうやら俺を手当てし、ここまで運んでくれたのはここにいるやつらのようだ。
「・・・・・・っ」
「あ、あの!驚いたよね!私はリインって言います。ここにはいないけどルイス君が君を見つけて、ここまで連れてきたんだよ。」
「・・・ルイス・・・?」
そういえば、ここにはあの赤い眼のやつはいない・・・あの時、確か数人の気配はしていたし・・・
こいつらもいたのか・・・?
「・・・あんたらが・・・助けてくれたのか・・・?」
恐る恐る尋ねる。少なくとも警戒するべき相手ではないようだ・・・
「ん、今はとにかく休んで。とりあえず無事でよかったよ。」
・・・・・・無事・・・・・・?
いいや。まだだ。
まだ父さんが残ってる・・・
このままじゃ、父さんまで死人に・・・・・・
「・・・ところであんた、ちょいと聞きたいことがあるんだが・・・」
ふいにあのじいさんが口を開いた。相変わらずあのローブのやつと扉付近にいる。
・・・二人とも普通の人間の気配じゃない・・・何者だ・・・?
「あんたもしかして・・・魔導士クロウの息子かい?」
「え・・・」
父さんは科学者で魔導士だが、あまり表に出ることはない。俺も初めて会ったのになんで俺達の事しってる・・・?
「しかも。破壊者だろう?武器は・・・体に収納しているのか?」
「・・・・・・っ」
・・・なんでそこまで分かるんだよ・・・やっぱり・・・人間じゃない。
「お前・・・何者だ・・・」
「別に?さっきも言ったが、あんたの敵じゃないよ。」
もう一度、このじいさんに対して警戒する。ローブのやつは俺達の様子を見てオロオロしている様子だったが、二人とも扉近くから動く気配はない。
・・・あれから魔力は不安定だったが、武器ならなんとか出すことが出来そうだ・・・
手当てしてもらったけど、長くはいられない・・・
そう思っていた時だった・・・
「お疲れ、様子はどうだ?」
「・・・っ!」
思わず武器を出そうとしていた手をしまう。
仲間と思われるやつらが帰って来たようだ。
その中には・・・鳥?みたいな動物を頭に乗せたメガネの男と・・・・・・あの、男は・・・
「・・・赤い・・・眼?」
「・・・お、身体の方はどうだ?」
男はこっちを見て近づいてくる。
しかし俺は・・・動けるはずもなかった・・・
なぜなら、あの時見た顔と・・・同じだったから・・・
「なぁ、お前にちょっと話したい事あるんだが・・・」
たった一瞬だったけど・・・忘れるはずがない・・・
あの、フードから垣間見えた・・・あの顔と瞳・・・間違いない・・・・・・!!
「・・・・・・っ!!!」
「!!ルイス!!」
メガネの男がそいつの名前をとっさに叫んでいた。
しかし、俺は見向きもせず・・・左手でそいつの胸ぐらをつかんで押し倒し
「っ!」
右手で術式で収納していた武器を取り出し・・・降り下ろしていた・・・・・・




