番外編 その涙は海を包む
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「・・・・・・ハァ・・・・・・」
雨が降る森の中、あてもなくさまよっていた。
食事も睡眠も取る気になれず、ただただ歩き続けた。
「・・・クソ・・・ッ!」
拳を木に打ち付ける。
あの時何も出来なかった自分が悔しくてたまらない。
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俺の父さんは科学者で魔導士でもあった。
数を増やし続けている魔物についてずっと調べていた。
俺も破壊者として小さな魔物を捕まえたり襲ってくる奴らを倒したりして協力していた。
しかしある日のこと・・・・・・
「貴様一体・・・ッ!!」
「見事な力だ・・・我らのために役立ってもらうぞ!」
魔物を操る男が襲ってきた。
俺も父さんもあらがったが、なぜか力が効かず捕まってしまった。そいつと共にいたフードをかぶった黒衣の男はただ黙って見つめているだけだった。・・・そいつが何かしていたのだろうか・・・
考える間もなく、男の研究所らしき所に連れて行かれてしまう。
「さて、魔導士の息子よ。お前は実験にうってつけだな。」
「・・・このぉっ!離せ!!!」
抜け出そうと暴れまわるが、魔物は通常よりもはるかに強い力で押さえつけてきた。
いつの間にかあの男達は父さんと共に消えていて、魔物達がメスやドリルを準備していた。まるで操り人形のように黙って動いている。
「・・・・・・ッ!!!」
・・・殺される・・・
そう思った瞬間、俺は持ってる魔力を解放してその場にいたすべての魔物を消し飛ばした。
その後の事はほとんど覚えていない・・・
ただがむしゃらにその場から走り出していた。父さんも置いて・・・・・・
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「・・・ッグ!げほけほ・・・」
それから今に至る。
もう何時間歩き続けただろうか・・・
目も霞んできて足もおぼつかない。
父さんは無事だろうか・・・・・・いや。
何を言っている・・・自分だけ逃げておいて・・・
「・・・ッ!!」
でも今の俺の力では勝てないのも明らかだ。
今ここで戻ったとしても捕まって殺されるのがおちだ。
「誰か・・・ッ!」
かすれる声で来るはずもない助けを呼ぶ。
そのまま倒れこんでしまった。
「・・・・・・ッ・・・」
もう一歩も動くことが出来ない。
意識が遠のいてきた・・・その時。
「・・・・・・?」
かすかに気配を感じた。
複数の気配。それは少しずつ近づいてきていた。
「・・・・・・・」
このご時世、ただの人間がこんな森の中いるはずがない。
魔物か、はたまた最近話題の死人か・・・もうどっちでもいい。
どうせなら・・・死んだ方がましだから・・・・・・
======ガサッ!======
「・・・お前・・・」
誰かが垣根を超え、覗き込んできた。
もう俺は限界を迎え意識が途切れたが、
その直前に目に映ったのは
あの男と同じ赤い眼だった・・・・・・




