○ 進む先に魔ありて ○
◇◇◇
「・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「・・・っくそ!あいつら・・・」
「あ、ここ!しばらくここに隠れてましょ!!」
マントを目深にかぶる二人が、森の中逃げるように走っていた。
一人は小柄で声からして女性だろう。
もう一人は普通の人間とは思えないほど大きい体をしていた。
二人は何かに追われているようだった。
二人を追っていたのは・・・
「・・・さすがにあたし達だけじゃそろそろ危ないね・・・」
「・・・そうだね・・・でも今は破壊者っているのかな・・・」
「探さなきゃ・・・本当の破壊者を・・・」
◇◇◇
「ねぇ聞いたぁー?」
「あ、あの話?うんあたしも聞いたよー」
「ホントならすごいわよねぇー」
俺達は新たな街にたどり着いたが、そこはある噂で溢れていた。
「・・・なんか盛り上がってますねぇー」
「ちょっと気になるな・・・調べてこいクロウ!」
「って俺かよ!!」
噂の内容が気になり、クロウに頼んで調べてもらうことにした。
クロウはしぶしぶ飛んでいき、噂をしている彼女たちの周りでそおーっと盗み聞く。
その間俺達は気づかれないよう少し離れた場所に行く。
「あの噂・・・一体何が気になるんです?」
「あぁ・・・実は・・・」
俺が気になっていたことをファレルに説明しようとした時・・・
「・・・っちょおいお前ら!!なんかやべえぞ!!」
噂を聞いてきたクロウが大慌てで飛んできた。
「ぅおっ!あ、聞いてきたんですね。」
「あぁ、お疲れ。どうだった?」
「・・・少しは調べてあげた感謝くらいないのか・・・」
◇◇◇
「妙な気配?」
「あぁ」
あのまま街にはとどまらず、外に出て歩きながらさっき言いそびれたことを話す。
それは噂とも関係していることだった。
「最近、魔物に似た気配を感じててな。同じ頃にその噂も流れてて、ちょっと気になってたんだ。」
「なるほど・・・だから調べるんですね。」
『死人が蘇る』
そんな噂が広まっていた。
魔物が人に化けることはあるが、それは生きている人に成り代わっている状態で 今回みたいに死んだ人に化けるなんて聞いたことも見たこともなかった。
「・・・つーか普通ありえないよなぁ・・・死んだ人間になって何がしたいんだっつの。家族満足させたいのか?」
「ってそんな気の利く魔物いないでしょう。・・・でも魔物の力なら化けなくても本当に蘇らせることが・・・」
「ありえない」
ファレル達の会話に割り込んで否定する。
「そんな力ありえない・・・そんなのがあったら・・・」
「ルイス・・・」
俺はあいつらを・・・故郷のみんなを蘇らせた・・・
「「!!」」
突如変な臭いが風で流れてきて、俺とクロウが反応する。
「うっわ・・・なんだこの臭い・・・!?」
「これは・・・血と死臭!?」
「えっ!臭い!?」
ファレルは俺達の反応に驚いていた。
無理もない。龍の鼻は人間の何十倍も利くのだから。
「こっちだ!」
「えぇ!!行くのかよ!?」
俺達は嫌がるクロウを引き連れて臭いのする方に走り出す。
臭いはだんだん強くなり、もう少しでその場所にたどり着こうという時・・・
「キャアアアアアァァァァァァ!!!」
「「「!!?」」」
突如として悲鳴が聞こえてきた。
それは臭いがしている場所からほど近いところ・・・いや、その臭いの元に追われているようだった。




