出会い1
?「コラ!爽葉あんたまたコンビニ寝坊したらしいわね!!」
仕事を終えて暗くなった夜道を帰ってきた俺を出迎えてくれたのは大きな怒号だった。
爽葉「あのハゲまたチクったのか」チッ
?「店長さんにハゲって言わないの!確かにハゲてはいるけど....」
この怒号の主である女は俺を古くから知る人で俺を育ててくれているお節介焼きの女性。
きれいな銀髪でショートのお姉さんは俺より年上だが身長もあまり変わらない女性だ。
爽葉「分かってますよ。次からはちゃんとしますから」
?「前もそう言ってたじゃない!!」
またこれだお節介焼きの彼女の相手をするのは疲れてしょうがない。
ただでさえ仕事終わりで疲れているのにたまったもんじゃない。
爽葉「それじゃあお休み~椋最さん。」バタン
椋最「開けなさい話は終わってないわよ!」ドンドン
椋最が爽葉の部屋をドンドンと叩く音がするが気にせず布団に入り横になる。
爽葉「いつもコンビニに行って働いて帰ってきて朝起きたらまた働いてってもう疲れたよ。」
爽葉「明日は休みだから思いっきり走り回ってやる!」
そう決意して爽葉は眠りについた。
ピロロロロロ
着信音が鳴った。
それは先程爽葉の扉を叩いていた椋最のズボンに入っていた携帯電話からだった。
椋最「椋最よ。....そう...。分かったわ....。すぐ行くわ。」
彼女は携帯の電源を切る。
そしてテーブルに向かい、紙に何かを書いてそこに置いた。
そして椋最は暗くなった外の世界に出ていった。
目が覚める。
今日は仕事が休み。
つまり俺は自由だ。
直ぐに着替えて朝食を用意して食べる。
机に置いてあった紙を見る。
爽葉「しばらく帰れないかも知れません...か。」
クシャッ!
爽葉は見ていた紙を握りつぶした。
爽葉「なんだ。いつもの事じゃん。小さい頃からそうやって俺との約束を破ってきたじゃないか」
爽葉「正直、今更感あるわ」
爽葉は食事を終えて外に出る。
大きく背伸びをして両腕を力一杯に上げる。
そして爽葉は走り出した。
男「くそ!今日も捜索かよ!」ドン
少女「物に当たらないでくれませんか?」
男「悪いな。どうしても上の命令が腹立たしくてよ」チッ
少女「貴方の気持ちも分からなくは無いですがコレはコレです。耐えてください。」
男「全く笑えねぇぜ」
ブツブツ言っている男はひたすらに車を走らせる。
見つかるか分からないものを探しながら。
少女「そういえばですね。昨日例の奴について情報があったみたいです。」
男「は?なんだそりゃ聞いてねぇぞ!?」
少女「貴方そうとう嫌われてますね。」
男「くそヤロ~。」ギリギリ
イライラしている男の隣で真顔の少女は冷静に話をする。
少女「どうやら例の奴を別の捜索隊が遭遇したらしいです。」
男「結局他の奴も居たのかよ...それで?取り逃がしたと」
少女「ハイ」
男「くそ!屑が!!」バンッ
少女「だから物には当たらないで下さい。それに逃がしたようですが奴には致命傷は与えたそうですよ。」
少女「奴が見つかるのも時間の問題かと」
男「はやく帰りてぇ」
そして今日もまた森の奥へと進んで行った。
爽葉も走っていた。
先のもの達とは違った山の獣道。
山奥の森で生まれ育った爽葉は山の急な崖を難なく走り抜ける。
猛スピードで走る彼は次々と立ちはだかる木々を華麗に避ける。
爽葉「俺を止められる奴は誰もいないぜ!!」
さらに走り続けていた爽葉はふと目の端に何かを捉えた。
人がいる?
立ち止まりソレに近づく爽葉。
そこには少女が息を荒げながら倒れ込んでいた。
爽葉「おい!大丈夫かよ?」
爽葉の問いかけにも答えなかった少女の容態を見てヤバイと判断した爽葉は彼女を抱き抱えた。
冷たい冷た過ぎる!
早く暖めないと!
爽葉は彼女を抱えて家へと向かった。
そのあと一台の車が通って行ったことに爽葉は気がつかなかった。
少女を運んできた爽葉。
とりあえず布団に彼女を入れて看病を行う。
身体中に沢山の出血があったが布とテーピングで何とか収まった。
今まで生きてきてコレほどひどい怪我を見たのは初めてだった。
やがて荒々しかった少女の息が静かになっていた。
こんな怪我をしていたのに生きていられるのが不思議とまで考えていた。
だがとにかく。
男「何とか一命は取り止めたか」
スースーと落ち着いた顔で眠る少女。
それを見た俺は痛感する。
片腕は何があったのか分からなかったが、とにかく1つ言えることがあった。
美しすぎる。
少女は真っ白の髪に真っ白な肌。
全てに置いて白く、儚く輝いていた。
男「やべぇだろ....これは最早芸術だろ。」
ちょっと興味本意で彼女の頬を触れた。
触れた感触はとてもスベスベと気持ちよかった。
だが顔色が良くなっているが少し冷たかったのを感じた時は少し疑問に残った。
今日頑張っても、頑張らなくても明日はくる。
だけどねその明日は今日の頑張りで、きっと違う明日が来るよ。
明日という未来を決めるのはきっと今日なんだから。