実験。
こちらはR15にしているので念のため一部伏せ字にしてあります。
残酷というかエグい描写があります。
苦手な方は読み飛ばして下さいm(__)m
クロイスはヘルトの髪を放すと、数歩後ろに下がり天幕の壁に凭れた。
ゆったりと胸の下で手を組み、うっすらと嗤う。
「報告によると病はコモイタチの糞による寄生虫。山から餌を探して人里近くに降りたものが川辺に糞をする。その中に寄生虫が潜んでいるそうだ」
ヘルトは聞いていないようだった。
ガチガチと歯を鳴らし、自由になる足と首の上だけを落ち着かなく動かし続けている。
「また寄生虫は糞の中に卵を産む。水に混じったそれらを摂取することで病を発症する」
「さてここで疑問が一つ」とクロイスは人差し指を立て唇に充てた。
「では罹患した患者の■や■、■■■といったものでは果たして発症すると思うか?」
「……ひぅっ!」
意味ありげに流し目を送られ、びくん!と大きく肩を揺らして、ヘルトは涙目になる。
クロイスと入れ替わるように前に出た兵士二人が懐から肘まで覆う手袋をこれ見よがしに嵌めた。
顔の下半分には布を巻く。
その足下には先ほど持ち込まれた桶が。
「くっさ!俺も鼻塞ぐもの用意しとけば良かった」
緊迫した場をぶち壊す副官の声にクロイスはそちらに冷ややかな視線を寄越す。
「おっと……」と両手で鼻を塞ぎながらカルロは口を噤んだ。ボソリとよくこんなかで涼しい顔できるよね。と呟く。
「……魔法で臭気を消してるからな」
「ずっる!」
言われて見るとクロイスの足下には青い魔法陣が浮かび上がっていた。
「俺も俺も」とまくし立てるカルロに、クロイスは
面倒そうにパチンと指は鳴らす。するとカルロの軍服の胸に青い小さな魔法陣が浮かんだ。
「おお、消えた消えた」
緊張感のない掛け合いを繰り返すクロイスたちをよそに兵士たち二人は軍服の上から黒い上掛けを着込み、鼻を覆う布も、両手も塞がれているヘルトは顔面蒼白で「……おぶぇ!」と嘔吐を繰り返していた。
「では、始めます」
兵士の一人が桶を持ち上げた。
それを持ったまま、ヘルトの前に立つ。
そうするとヘルトの目にも桶の中身がしっかりと見え、目を剥いて「ひぎゃああぁ!」と叫び首をぶんぶんと振った。
「ぎ、ぎざまらぁ!なんだそれは!それをどうするづも……ぅえぇ」
「えーっ?閣下が言ったでしょ?実験だって。人体実験だよ。じ・ん・た・い・実験!発症者の■■やらでも果たして発症するのか。おたくで実験するのさ!」
グチャリ、と音がする。
見ると桶の中に半分埋まった柄杓を兵士の一人が取り上げていたところだった。
ヘルトは半狂乱で首を振り続ける。
無事な右目からは涙が溢れ、鼻からは血の混じった鼻水が流れ出す。
「あぶ、おぇ……っ」
嗚咽の止まらない口元からは半透明の胃液と唾が漏れ顎を濡らしていた。
「キッタナイなぁ。まあ、これからもっと汚いなるし?別にいっか。ああ、これね?おたくのために特別に用意した特製ジュース。中身は……」
カルロは繋がれたヘルトの背後に回ると、耳許に唇を寄せて囁く。
「発症者■と■■■、それを■でとろかせてみました。あ、ちょっと唾とかも入ってるかな?ちなみにこの先二日はこれが毎食出るからね?案外栄養あるらしいよ?お代わりも沢山あるし、これで発症しないようなら次はコモイタチの糞も混ぜて、その次は肝も生で混ぜてみるから。さて、どこで発症するだろうねぇ?」
「や、やべ……やめて!やべてっ!!」
泣き叫ぶヘルトに、クロイスは腕を組んだまま静かな声で言った。
「おまえはやめてと言ったメリッサに殴るのを止めたか?女の顔を腫れ上がるほど殴る蹴るしたんだろう?」
「……ァ?メリッサ?」
「さっさとやれ」
「ヒギャアアアア……っ!!!!!」
頭から汚物を被ったヘルトは甲高い悲鳴を上げてから、どろりと頭から額を伝う感触に目と口をキツく閉ざす。
二度、三度と繰り返されるうちに、流れ落ちる感触は頬に唇に顎に肩に胸元に広がっていく。
強烈すぎる臭気と、鼻の穴が詰まり呼吸ができなくなるのに、うっすら唇が開くと見計らったように柄杓の先が口元に差し込まれた。
「フギッ!」
口の中に入り込むとろみのある感触と舌を刺激する味に、ヘルトは慌ててペッと吐き出し、口を閉じる。胃液が食道を逆流し、喉もとまで湧き上がっていたが、歯を食いしばって耐えた。
「……っ!」
桶を持っていない兵士がヘルトの顎を掴んで無理矢理上向かせる。
「口を開けろ」
ヘルトは顎を掴まれたままとにかく遮二無二頭を横に振った。
だが頬を挟み込んだ指が歯をこじ開ける。
「……っ!っ!っ!」
口の中に大量に流し込まれる異物に刺激され、湧き上がっていた胃液が喉から口に吐き出される。口の中で混ざり合ったものを外に出してしまいたいが、顎を掴まれ上向かされた状態ではせいぜい唇の端から僅かにこぼれ落ちるだけだった。
「飲み込め、ほら!」
無慈悲な声と共に鳩尾を殴られる。
ごぼ、と口から■■が溢れたが、同時に少なくない量が喉の奥にも流れた。
ふいに顎から手が離れ、ヘルトは下を向いて口の中のものを吐き出せるだけ吐き出す。
自身の喉元や胸をそれは汚したが、そのようなことはすでに些細なことに過ぎなかった。
「……はぁ、は、だす、だすげ、で、もう、やめ」
懇願をするが、返ってきたのは朗らかなまでに明るい声。
「えーっ?まだまだいっぱいあるよ?これ作るのも大変だったんだから、ちゃんと全部、飲もうね!」
笑顔で返された言葉に、ヘルトは意識を手放しかけ、足に刺さった刃物の痛みに悲鳴を上げる。
「醜悪だな。後は任せる」
「「はっ!」」
天幕から出て行く背中を目で追ったヘルトの耳を「さて、続けようか」と悪魔の囁きが打った。




