#089 機密情報
宮島は確かにゾンビの首をはねていた。しかし、そのゾンビはまだ動いていた。首がない状態で……
「もう少し斬っておくか……」
宮島はそう言うと剣でゾンビの手足を切り取った。これでゾンビも死んだと思っていたが、今度はその切り取られた手足が何故かゾンビの胴体とくっついたのだ。
「再生型ゾンビ!?」
土井はそのゾンビを見るとそう言った。この再生型ゾンビは小牧と冨沢が見つけたゾンビで、まだ倒し方が分かっていなかった。なので対策官にとってはゾンビの中で一番厄介なものだったが、それと同時にこのゾンビに遭遇することも小牧と冨沢が遭遇して以来なかった。しかし今、宮島と土井の前に再生型ゾンビがいた……
「仕方ない。これを使おう…… 少し離れてくれ」
宮島はそう言うと土井を病室の外に出させた。そして電撃棒を持ち、安全装置を外した。
ドーンッ!
宮島のいる病室で突然大きな音がした。そして黒焦げになったゾンビが床に倒れていた。
「倒しました?」
土井がそう聞くと宮島は病室の外に出てきた。そして土井にこう言った。
「いや、動けない状態にしただけだ。あれをくらっても死なないのではどうしようもない。とりあえず殺所行きだな……」
宮島はそう言うと菱田川達が待つ場所へと歩き始めた。しかし土井は宮島があのゾンビをどうやって動けなくしたのか気になったので、集合場所に行く前に再生型ゾンビのいた病室の扉を開けた。
「え?」
その病室は床が血まみれだった。そんな血の上に手足を切り放され、ダルマ状態になっている黒焦げのゾンビが倒れていた。しかし、そのゾンビからは低いうなり声が聞こえた……
ゾンビ殲滅局東京本部、本部長室……
ガチャッ!
宇土は扉を開けるとすぐに席に座っていた仲野に一枚の紙を見せた。
「失礼します。この紙に書いてあることは本当ですか?」
仲野は突然どうしたのかと思ったが、宇土に見せられている紙を読み始めた。するとその紙にはとても重要な事が書いてあった。
「この紙は自分が報告書を書こうとしていたら、たまたま見つけた物なのですが本部長はこれを知っていましたか?」
宇土はいつもと違い、鋭い目で仲野を見た。すると仲野は突然立ち上がった。そして部屋から出ていってしまった。もちろん宇土はその仲野の後を追った。
「どこに行くんですか?しっかりと質問に答えてもらわないと困るんです!」
宇土がそう言うと仲野は歩きながらこう言った。
「俺もこの情報は今知った。だから潜入捜査官をまとめている郡山に聞きに行くんだ!」
仲野はそう言うと副本部長室と書かれている扉を開けた。その部屋では郡山が一人で大量の潜入捜査で得た情報の書いてある紙をまとめていた。ゾンビ殲滅局は他の国家機関と違い、紙が主流である。しかしそれに理由がない訳ではない。それはネットに頼りすぎていざとなったときに使えないと駄目だからだ。しかも、それがゾンビと戦う対策官だとなおさらだ。なのでゾンビ殲滅局ではいまだに報告書等を紙で出させていた……
「これはどういうことだ?」
仲野がそう聞くと郡山は慌てることもなく、こう言った。
「それがどうかしましたか?その情報はまだ確かではないので、今調べさせている所なのですが」
郡山がそう言うと今度は宇土が口を開いた。
「これは攻防戦前の話ですが、その時スパイ狩りをしたんですよ。確か調べさせた中の一人に事情は説明出来ないけど白という奴がいたんです。その報告書を書いた伊中という人は潜入捜査官ですよね?」
宇土がそう聞くと郡山は黙ってしまった。どうやら、何があっても潜入捜査官の事は言えないようだ。
「なら仕方ないですね……」
宇土はそう言うと拳銃を取り出した。そしてその拳銃を郡山に向けた。
「宇土!さすがにそれは……」
仲野はそう言ったが、宇土は聞かずに拳銃を郡山の顔の前まで持っていった。しかし郡山は何も言わずに宇土を見ていた。
「おいやめろ!流石に問題に……」
「ならない」
仲野が全て言い終わる前に郡山が突然口を開いた。
「この拳銃は偽物だ」
宇土はそう言われると引き金を引いた。すると銃口からは弾丸ではなく、真っ赤な薔薇が出てきた。
「分かってたんですね」
宇土はそう言うとその手品用の拳銃をしまった。すると郡山は宇土にこう言った。
「当たり前だ。本物の拳銃を10年近く見てきている人間だからな」
宇土はそう言われると無言で部屋から出ていった。仲野はそんな宇土を追いかけて部屋から出ていってしまった。すると部屋の中に一人になった郡山は一枚の紙を机の中から取り出した。
「もしバレたら今潜入捜査している潜入捜査官が殺されるかもしれないからな……」
郡山はそう言うとその紙を見た。その紙には潜入捜査官と書かれており、その下に柚木や伊中の名前が書いてあった……
宇土舞哉
准高司令官
武器……拳銃
※攻防戦前のスパイ狩りについては「番外編 相須三歩」に詳しく載せています




