#009 悲劇
大東京埋め立て場、コントロールセンター……
『私に言わず、どこに行ったのよ』
九条は心の中でそう思いながら、建物の中を走っていた。けれどどこを探しても部下はいなかった
「あとは屋上だけか……」
九条は階段に移動するとボソッと言った
階段を上っていくと扉があった。どうやらその扉の先が屋上らしく、鍵も掛かっていなかった
『でも屋上にいるなんてことは……』
九条はそう思いながらも扉を開けた
「これは……」
九条は扉の近くに赤色の液体があることに気がついた。なのでその液体をじっくり見るために屋上に入った。すると九条はそこで見たくないものを見てしまった
「……」
扉の死角になる場所には、大量の血と共に人の足や腕、胴体が転がっていた。九条はそれを見るとあまりの衝撃に言葉が出なかった。それから数秒突っ立っていると、九条は誰が倒れているか確認するために近寄った
そして『私の部下じゃありませんように』と祈りながら、一番近くに倒れている人の上着を開いた。そして上着を漁ると、ゾンビ対策官だけが持っている「対策手帳」が出てきた
この対策手帳を見れば倒れているのが誰か特定できる。なので九条はその対策手帳をゆっくりと開いた
「仁木弘登、ゾンビ対策士長」という文字と共に顔写真が貼られていた。九条はその顔写真を見ると対策手帳を落としそうになった
「報告を……」
九条はそう言うと無線機を取り出そうとした。しかし無線機は先程壊されたためなかった。なので芝にこの状況を伝えることが出来なかった
「結局私一人か……」
九条はボソッと言うと、亡くなった部下の対策手帳をポケットにしまった。そして出来る限り血を踏まないようにこの場を離れた……
林班担当区域……
ビシャッ!
そんな音がするとゾンビは血を流しながら、ゆっくりと地面に倒れた
「これで殲滅完了かな?」
そう言ったのは小橋だった。すると林は短剣をしまうとこう言った
「多分な。上丘って無線機持ってたよな?」
林は上丘にそう聞いた
上丘は有川班所属の対策官だった。しかし有川の指示で、もう一人の対策官と共に林班に合流していた
「ありますよ」
「じゃあ報告頼める?冨沢じゃ心配でさ」
「了解です」
上丘はそう言うと無線機を取り出した。すると林の近くにいた冨沢がこう言った
「それどういことかな?」
無線機は班員の一人が持つことになっており、林班では冨沢が持っていた。しかし冨沢は普段からかなりがさつで、ちゃんと報告できるかなど心配なことが沢山あった
「勘違いしてるようだけど、これでも元埼玉のエリートですけど」
冨沢は林にそう言った
林や塚西、中鈴は入局したときから東京本部で働いていた。しかし冨沢は元々埼玉支部で働いていており、後から東京本部に移っていた
「まぁ東京本部に移るには優秀じゃないと無理みたいだしね。資料整理以外は優秀だと思うよ」
小橋は冨沢にそう言った
「人には得意不得意があるのさ」
冨沢はそう開き直ると刀をしまった。そして上丘の報告が終わるまでの時間潰しとして、雑談を始めた
しかしどれだけ待てと、上丘の報告は終わらなかった。しかし十分経ったところで上丘は無線機をしまった。そして林にこう言った
「この道の先に開けた場所があるので、そこに行けとのことです」
上丘はそう言ったものの、林は芝が指示を出してくるとは思えなかった。なので上丘にこの指示は誰からのものか聞いた。すると上丘は「神尾一佐です」と答えた
「予想だけど、その場所で集合でもするのかな。この道の先の区域は中央だし」
話を聞いていた小橋がそう言った
「それじゃあ早く行こうぜ。ここにいても暇だし」
冨沢はそう言うと中央区域に向かう道を歩き始めた……
九条汐香…准ゾンビ対策官
武器…短剣×2
拳銃
※修正済み