#005 東京ゾンビ殲滅作戦
三十分後、大東京埋め立て場……
「ここが大東京埋め立て場ですか」
小牧はそう言うと周りを見た
この大東京埋めた場は沿岸を埋め立てて作られた為、ほかの埋め立て場とは違い島のようにはなっておらず、頻繁ににごみ収集車のやってくる所だった。なので、小牧達のいる場所の近くにはゴミの山が沢山あった
小牧達の場所からだとゴミの山に遮られて、敷地が全て見えず小規模な施設だと勘違いしてしまいそうになるが、本来はかなり広い場所で、この施設内は車を使わないと移動が大変なレベルだった
到着した対策官達がどうしようかと辺りを見回していると、一台のバスが近くに止まった。するとそのバスにつけられているスピーカーから声が聞こえてきた
「こちら対策3の芝です!只今より大東京埋めた場ゾンビ殲滅作戦を行う。新庄、小橋、神尾班は正面より。林、有川班は右門より。川中、九条班は左門より。北音寺班はここで待機!それでは各班健闘を祈る」
……と、芝は指示を出した。なので各班は今出された指示通りに動き始めた
「右門に行くよ。冨沢は小牧を見てあげて」
林はそう言うと、同じ右門に向かう有川班へと駆け寄った
「こういう作戦はね、一人になったら死ぬと思いな」
冨沢は小牧にそう言った。小牧はただの脅しではないかと思ったが、予備対策官…… つまり対策官になる前に読んだ本のことを思い出した
その本はゾンビ対策官について書かれている本で、ゾンビ殲滅局の殉職者についても書かれていた。そして小牧が思い出した部分はこう書いてあった
『殉職者のほとんどが一人で行動していた』
というものだ。なので、もし置いていかれたら死ぬのではないかという恐怖感がわいてきた
「そんなに怯えるなって、これくらいの作戦なら死なないからよ」
塚西はそう言うと小牧の背中を叩いた
「小牧の初の大規模作戦だしね。頑張っちゃおっかな」
冨沢はそう言うと刀を抜いた。するとそんな冨沢に中鈴がこう言った
「普段は手を抜いてたんですかね?」
すると冨沢は中鈴を見てこう言った
「な訳ないでしょ。俺はいつも本気だからね」
「はいはい、そろそろ冗談は終わりにして。ゾンビのいる区画に入るよ」
林は門の前で止まるとそう言った。小牧達の前には門があり、その奥の区画にいるゾンビがこちらに来ないようにしっかりとしまっていた
「門を開けますね!」
門の近くにある小屋からそんな声が聞こえてきた。すると門はゆっくりと開き始めた
「林、門付近をクリアリングする。良いな?」
「了解です」
林は隣にいる大柄の男性対策官にそう返事をした。するとその男性対策官は横にいる部下にこう言った
「佐瀬、準備は良いか?」
「もちろんです」
佐瀬という対策官はそう返事すると刀を抜いた
「じゃあ行くぞ、秋津と酒田も続け!」
そう言うと大柄の男性対策官は門を通り抜けられるほど開くと、ゾンビのいる区画に行ってしまった
「全員準備は良いか?」
林はそう言うと部下達を見た。しかし小牧はここまで来る途中で殉職について考えてしまったため、少し怯えがあった。するとそんな小牧に林はこう言った
「小牧、大丈夫だ。お前には冨沢をつけたから死ぬことはない。それにさっきいた班は有川班といって、強い班なんだ」
林は小牧にそう言った。すると冨沢は水を差すように「この班だって強いでしょ!」と言った。しかしその言葉はスルーされてしまい、誰も反応してくれなかった
「まぁ俺らを信用しな。ヤバくなったら何とかするからさ」
塚西は小牧にそう言った。そんな塚西の後ろでは中鈴も頷いていた
「分かりました……」
小牧は乗り気ではなかったがそう言った。すると林は門を見た。そして後ろにいる部下達に聞こえるようにこう言った
「行くぞ!」
林はそう言うと門を抜けてゾンビのいる区画へと入った
「ほらほら、行くよ!」
冨沢は戸惑っている小牧の腕を掴んで走り出した。なので小牧は無理やりゾンビのいる区画に足を踏み入れることになった
「うわっ!」
ゾンビがいる区画の門付近にはゾンビの死骸があちらこちらに転がっていた。そしてそのゾンビの死骸の近くに、先程林が言っていた有川班の人がいた
「林!ここからどこに向かうの?」
冨沢は走りながらそう聞いた。すると林は前を向いたままこう言った
「この道をまっすぐ行くと作業員用の小屋がある。この班の担当はその小屋より奥の場所だ!」
林がそう答えたときだった。突然林は走るペースを落とした
「どうした?」
冨沢は何かあったのかと思いそう聞いた。すると林は後ろにいる部下達に聞こえるように大きな声でこう言った
「中鈴と塚西は左!冨沢と小牧は右!」
「把握した」
林がそう言うと冨沢はそう返事をした。けれど小牧には何が何だか分からなかった。すると小牧の後ろにいた塚西がこう説明した
「小牧、前にゾンビがいるから倒すよって意味だよ」
「あ、はい」
小牧はそう言われると槍を強く握った。『槍は振るのではなく、刺す』という言葉を心の中で繰り返し言いながらゾンビの元へと走った……
有川栄光……特別ゾンビ対策官
武器……大鎌(裏刃あり)
※修正済み