#037 破天荒
下原が仲野のいる部屋から出てから10分のことだった。ドアがノックされて水瀬達が入ってきた。
「今回は何でしょうか?」
柚木がそう聞くと仲野はこう言った。
「例のスパイの件だ」
仲野はそう言うとその三人に席に着くよう手で合図した。そして手を前で組みこう言った。
「その奴等のスパイは対策4にいる」
仲野がそう言うと三人は少し驚いた。何しろ今までスパイがいるということ事態半信半疑だったので、本当にいるということへの驚きが隠せなかった。
「それで俺にそのスパイを殺せと?」
「殺すな!」
水瀬の発言にすかさず柚木はツッコミを入れた。しかし、柚木にとっては本当にスパイを殺しそうで気が気でなかった。
「これがその証拠だ」
仲野はそう言いながらさっき下原が持ってきたスマホを見せた。
「これは誰の物ですか?」
そのスマホを見ると小橋がそう聞いた、
「これは下原の部下の松永健吾の物だ」
それを聞いた瞬間に小橋達には分かった。自分達が呼ばれた理由はそのスマホ被疑者を捕まえることだと。多分これから作戦が行われるのだろう……
10分後……
小橋達の予想通りに作戦が開始した。今回の内容は水瀬班及び柚木班が対策4へと突入、小橋班はその階のエレベーター及び階段の見張りだ。
柚木は小橋班がそれぞれの場所に着いたことを確認すると対策4と書かれた扉を開けた。
「松永健吾中等製作官はいるか?」
柚木は扉のすぐ近くにいる人にそう聞いた。
「松永中等なら向こうにいますよ」
その男性はある方向に指を向けた。柚木がその方向を見るとそこには一人の男性がいた。
「松永健吾中等製作官。あなたをゾンビ対策法違反により関東殺所場へ連れていきます」
……と柚木が言った瞬間だった。松永は突然短剣を投げてきた。柚木はその短剣を鎌で防ぐことが出来たが、松永は逃げ始めてしまった。
「追いかけろ!」
柚木がそう言うと水瀬が後ろから飛び出してきた。そして松永を殺すつもりでいるのだろうか、槍を刺そうとしていた。
それから水瀬班が松永を捕まえようと攻撃を開始した…… が、攻撃が全く当たらずむしろ遊ばれているような感じだった。
バンッ!
松永の蹴りが保見にあったた。なので保見はその力により近くにあった机にぶつかってしまった。
「保見!大丈夫?」
桜庭がそう聞いたが、保見はそれには一切耳を向けずに床に落ちていた武器を見ていた。
「これって……」
保見はそう言いながらその銃を拾った。するの、予想通り捕獲銃だった。今はピンチだから使っても大丈夫! そう考えた保見は松永に向けてネットを発射した。
するの、松永はそのネットにより動けなくなってしまった。
「保見!色々と助かったけど…… 水瀬さんは捕まえなくていいんだよ」
桜庭はそう言うとネットに絡まっている水瀬を見た。多分ネットを放ったときに水瀬が松永に近付いていたのだろう。保見はそんな事を考えながら水瀬を助けた。
「さてと、どう調理しますかね~」
水瀬がそう言いながらしゃがんだ時だった。突然松永は水瀬を蹴ったのだ。そして水瀬が倒れている隙にネットをとって再び逃げ始めたのだ。
「ヤバイ!前の扉に誰もいない!」
柚木はそれを見てすぐに駆け付けたが一歩遅かった……
「部屋の外に逃げられたか……」
柚木はボソッと言うと桜庭がこう言ってきた。
「早く!ボーとしている時間はないよ!」
柚木はそう言われると松永を追いかけて走り始めた……
東京本部15階、西階段……
「どけーーーー!」
そう叫びながら松永が迫ってきた。が、そんな事を言われても星水にはどく気など全く無かった。むしろ星水は短剣で攻撃を始めた。
「めんどくさい野郎だ」
松永がそう言うのも分かる。何故なら星水は対策2の中で一番身軽な対策官なのだ。だからそれ故に上手く壁を使って攻撃していた。
「星水!そのままおさえて!」
星水が戦っている姿を見た柚木がそう言った。すると松永はその瞬間を見のがさなかった。星水が油断した瞬間を狙い、階段をかけ下り、ガラスを突き破った。
「あいつまさか自殺を?」
柚木がそう思いかけよって下を見ると、布団か何かを大量に積んでいるトラックの荷台に奴はいた。多分これも奴等の計算通りなのだろう……
「あと少しで俺が料理して殺ったのに」
水瀬はそう残念そうにいった…… が、逃がしてしまったものは仕方ない。柚木と水瀬は仲野のいる本部長室へと向かった……
東京本部15階、東階段……
「まだかな~」
そこには小橋がいた。西階段とは距離が離れている為、逃がしたとは知らなかったのだ。それと同時に柚木と水瀬も小橋の事を忘れていた……
星水夏希
一等ゾンビ対策官
武器……短剣
拳銃




