#300 雑用
午後三時、東京本部対策2専用室……
「戻りました」
小牧はそう言いながらD班専用スペースに入った。すると林が「お疲れ様。作戦はどこまで進んだ?」と聞いてきた。なので小牧は「A1からA4までは確保しました。しかしその他はゾンビのせいで全くです」と答えた
「エリアAなのにそこまでしか確保できなかったのか……」
「はい。他の方も想定外だったらしく驚いていました」
小牧はそう言うと椅子に座った。すると佐伯が「旧下水管についてはほとんど知らないのですが、エリアAって普段は安全な場所なんですか?」と聞いてきた
「ゾンビと滅多に遭遇しないエリアってだけで、安全じゃないよ」
そう言ったのは冨沢だった。するとそんな冨沢に林が「冨沢もお疲れ。どうだった?」と聞いた
「どうも何も大変だったよ。色々と……」
冨沢がそう言うと小牧が「冨沢さんも旧下水管に行ってたんですか?」と聞いた。なので冨沢は「川中班だからね。ただA5方向が確保できなかったから暇だったよ」と答えた
「大変だったんじゃないんですかね〜」
中鈴が手を止めそう言った。するとすぐに冨沢は「大変だったのはマジだよ。A4方向の掃除させられたからな」と言った
「掃除……ですか?」
佐伯がそう聞くと、冨沢は「倒されたゾンビを端に寄せる作業してたよ」と答えた。するとそんな冨沢に中鈴は「なら良かったですね。冨沢さん、そういう事には慣れてるでしょうし」と言った
「失礼な! 確かに訓練生、予備対策官の頃は倒されたゾンビの処理をやってたけど良くはないわ!」
冨沢はそう否定した。すると佐伯が小牧に「訓練生は分かるけど、予備対策官ってゾンビの後処理ってやるっけ?」と聞いてきた
「さぁ、僕はやらなかったけど……」
小牧がそう言うと、林が「二人は優秀だから訓練生卒業後、小牧はすぐに配属、佐伯は殺所勤務になったから予備対策官になってないんだよ」と言った
「まぁ、予備対策官は配属が決まるまでの仮……、ほぼ雑用みたいた事をさせられるみたいですし」
中鈴がそう言うと冨沢は「予備対策官時代は埼玉本部警備2……通称機動隊に所属してたけど、あの頃は大変だったなぁ……」と言い、窓から遠くを眺めた
「そうなんですか……。でもその機動隊って本部にはないんですか?」
「あると思うけど、所属はちょっと……」
佐伯に対して小牧がそう言った。するとそんな二人に林が「本部の機動隊は警備5だよ。ただ本部だと機動隊とは言わず、特殊隊って言われてるけどね」と言った
「全く、なんでこの班にはエリートばかりが……」
冨沢はそう言うと自分の席についた。するとそんな冨沢に林が「今は三佐だし気にすることでもないでしょ。それよりそろそろ仕事を……」と言った
「まぁそれもそうだな。三人も頑張って偉くなれよ!」
冨沢は三人にそう言った。すると中鈴が「冨沢さんは実力というより運な気がしますがね」と小声で言った
「運とは失礼な! 実力だぞ」
冨沢は中鈴にそう言った。するとそんな冨沢に林が「まぁ、半分は正解だな」と言った
「半分は正解ってどういうことだよ林!」
冨沢がそう聞いてきた。なので林は「冨沢に限らず、俺もだし小橋もだ」と言った。すると隣の専用スペースから「お呼び?」と小橋が顔を出してきた
「お呼びじゃない。戻ってどうぞ」
林がそう言うと小橋は顔を引っ込めた
「なるほど、そういうことですか」
中鈴がそう言った。すると冨沢が「どゆこと?」と言った。なので林はこう説明した
「俺達の世代は新平地作戦があっただろ? あれの影響で東京本部だけ若手の階級が高くなったんだよ」
「つまり冨沢さんは本部に来たタイミングがたまたま良く、苦労せず階級が上がった……というわけです」
林の説明後に中鈴がそう言った。すると林が「ただ、准ゾンビ対策官からは間違いなく実力だ。それは俺が保証する」と言った
「まぁそういう事だ。三人も頑張って偉くなれよ。俺はこっちで待ってるからな!」
冨沢は三人にそう言った。すると林が「まぁ、調子には乗ってられないと思うけどね。本部にいる以上、一定の成果を挙げないと飛ばされるからね」と言った
「このままだと冨沢さんの異動も近そうですね。どこに行きたいですか?」
中鈴は冨沢にそう聞いた。すると冨沢は「黙れい!俺はしばらく本部にいるわ!」と言うと立ち上がった。そして「と、いうわけだからちょっと席外すよ」と言い、部屋から出ていった
「まぁ、いつもの冨沢さんですね」
そんな冨沢を見た中鈴はそう言った。なので林は「まぁな。ただ冨沢はゾンビと戦う事自体には長けてるから、あとはデスクワークをなぁ……」と言った
屋島玲汰
司令官補佐
武器……拳銃




