#298 環境
「そういえば笛中、宮島と布田の方はどうなったか分かる?」
笛中の部下を待っている間、有川はそう聞いた。なので笛中は「A5で大量のゾンビに遭遇したらしく撤退してきました」と答えた
「A5ってことは一つも進まなかったのか」
「ええ、なのでそっちに柵を運ぶ予定だった川中班はいま地上待機してます」
笛中はそう言った。なので有川は「そうか……。それで宇土は何て?」と聞いた。しかし笛中はあくまで宮島、布田班と梯子で会い、そのまま別れたためそこまでは知らなかった。なので「そこまではちょっと……」と正直に答えた
「まぁ宇土のことだ。適当に時間を置いたら再度攻め込ませるんだろうな」
「しかしそんなので攻略できますかね? ゾンビがいなければ問題ありませんが、あの二班が撤退する数ですし」
笛中はそう言った。なので有川は「まぁ今回の作戦は一ヶ月の猶予がある。だから時間を置いてれば何とかなるんじゃないか?」と言った……
「到! 着!」
二人がそんな会話をしていると誰かがそう言った。なのでその声がした方向を見るとそこには染井がいた
「お疲れ。染井と三間はあっちへ、綿谷と名畑はそっちへ取り付けてくれ」
笛中は部下達にそう指示を出した。するとそんな笛中に染井が「笛中さんもやりません? これ結構重いんですよ」と言ってきた。なので笛中は「そうはいっても俺の役割は周囲確認なんだよなぁ」と言った
「染井さん。早く行きますよ」
文句を垂れている染井に三間がそう言った。すると染井は「分かった分かった。やればいいんでしょやれば!」と言うと、柵を持って小牧と佐瀬がいる方へ歩き出した
「有川さん、心配なのでちょっと向こう行ってきます」
「分かった。何かあったら呼ぶよ」
「分かりました」
笛中は有川にそう告げると染井と三間のいる場所へ移動していった……
『何がともあれ、これでA4は確保だな』
有川は取り付け作業を離れた場所から見ながらそう思った
『問題はA5だが……さすがに一ヶ月も余裕あるし大丈夫だよな』
有川がそう思ったときだった。上間が「こっちは取り付け終わりました」と報告してきた。なので有川は「分かった。向こうの作業が終わったら地上へ戻る。もう少し待っていてくれ」と言った。すると上間は「分かりました」と応えた
「そういえば上間は旧下水管には初めてだっけ?」
有川は待っている間の雑談として上間にそう話を振った
「はい。おそらくO班以降に所属している人達はこれが始めてだと思います」
上間はそう言った。なので有川は「まぁ、旧下水管の件は宇土とかが持ってきた作戦だから仕方ないな」と言った……
東京本部対策部には三つの司令隊があり、それぞれに役割があった。宇土司令隊には対策2のA班からN班の中規模、大規模作戦での指揮。今井司令隊には対策2のO班からZ班の中規模、大規模作戦での指揮。芝司令隊にはどちらかが別の作戦中、または休暇などでいない間の穴埋めとして働いていた。そのためA班からN班を担当する宇土は、O班からZ班を指揮することがほとんどなく、今井も同じだった
「旧下水管の話は聞いていましたが、ここまでとは思いませんでした」
「確かに初めてここに入ったときは俺も驚いたよ。いつもとは違う環境でゾンビと戦わなくちゃいけなかったからね」
有川はそう言うと、上間が「有川特官は東京地下処理作戦に第一回から全て参加しているんですよね?」と聞いてきた。なので有川は「そうだよ」と答えた。すると上間がこう聞いてきた
「と、いうことはこの先も行ったことがあるんですよね?」
「勿論。過去の作戦で何回も行ったよ」
有川はそう答えた。すると上間は「この先はもっと酷いんですか?」と聞いてきた
「酷いってのは環境のこと?」
「いえ、ゾンビについてです。話で旧下水管の奥には亜種が沢山いると聞いていますので」
上間がそう聞くと有川は「別にこことあまり変わりないよ。むしろ今回のエリアAが異常なだけだよ」と答えた
「異常……ですか?」
「ああ、過去の作戦だとエリアAではほとんどゾンビに遭遇してないからな。だから亜種を見たときは驚いたよ」
有川はそう言うと続けて「だからこの後も大丈夫だよ。この酷い環境のなかA4まで来れたんだから」と言った……。するとそんな有川に離れた場所からが佐瀬が「有川さん! こっちも終わりました!」と言ってきた。なので有川は佐瀬に「分かった。地上に戻るからこっちに来てくれ」と言った
「まぁそういうことだ。それに佐瀬や小牧も過去の作戦で何とかなってきた。だからヤバいと思ったら任せてくれ」
有川は上間にそう言うとA1方向へと戻る配管に近寄った。そして笛中に「笛中、先に戻るがいいか?」と聞いた
「どうぞ。あとを付いていきますので」
笛中からそう返事が返ってくると有川は「それじゃあ戻ろう」と言って、配管に入っていった……
染井成美
三等ゾンビ対策佐官
武器……剣
拳銃




