#294 異常
旧下水管A5……
「オラッ!」
水瀬はそう言いながらゾンビの首に槍を突き刺し、そのまま倒した。するとそんな水瀬目掛けて二体のゾンビが飛びかかってきた
「宗は左を頼むよ」
倉科はそう言うと水瀬に向かって飛びかかっていたゾンビの首を短剣で斬った。そしてゾンビを倒すとすぐにもう一体のゾンビを見た
「大丈夫。ギリギリのところで倒した」
宗は槍に突き刺さったゾンビを見せながらそう言った。するとそんな三人に新宮が「お前ら休んでないで手伝え!でないと私が死ぬわ!」と言ってきた
「仕方ない。言ってやるとするか」
水瀬はそう言うと立ち上がった。そして新宮達が戦っている場所へと向かっていった
旧下水管A5にはA16へ繋がる配管とA13方向へ延びる未知の配管があった。そのためA13に向かう宮島班とA16に向かう布田班がいた。が、A5にて大量のゾンビと遭遇したため、どちらも前に進めずにいた
「布田さん。大丈夫ですか?」
A1へ繋がる配管付近で待機している丹波は、布田が近寄ってくるとそう聞いた。すると布田は「正直なところ撤収の方がいいな。見ての通りゾンビが大量なうえ、そのほとんどが希種だ。しかも環境的にもこちらが圧倒的に不利だ」と言った
「では撤退しますか?」
「とりあえず宮島を呼んでからだ。撤退するなら向こうと合わせないと……」
布田がそう言ったときだった。突然土井が「A16への配管周りはクリアしました!」と大声で報告してきた。するとそれに対して宮島が「把握した」と答えた。そして布田に対して「布田さん! ここは我々に任せて先に!」と言ってきた
「布田さん。どうします?」
一連の流れを聞いた丹波は布田にそう聞いた。しかし布田もどうするべきか悩んでおり、すぐには答えなかった
「布田さん!どうかしましたか?」
この場に鏡谷がやって来るとそう聞かれた。なので布田は宮島に聞こえるくらいの声で「無理だ。これ以上は危なすぎる。一度撤退する」と言った
「把握しました。撤退の指示はお任せします」
宮島からそう返ってきた。なので布田は「俺の班は先に戻れ! 宮島班は徐々にこちらへ下がってこい!」と指示を出した。するとすぐに布田班の鈴村と羽部が布田達のいる所へやって来た
「布田さん。何故撤退を……」
鈴村はそう聞いてきた。なので布田は「A5でこれは異常だからだ。それより早くA1へ行け!」と指示を出した
「分かりました。それではA1で」
鏡谷はそう言うと、他の三人と共にA1へと繋がる配管に入っていった……
「次は宮島班の撤退だ。宗は先に来て援護してくれ」
布田がそう言うと宗はクロスボウを持ち、A1へと繋がる配管の前にやって来た
「左は頼みます」
「ああ、右は頼むぞ」
布田にそう言われると宗は「ええ勿論」と言い、矢を放ち始めた
「それじゃあ他の人も撤退!速やかにA1へ!」
布田がそう言うと佐瀬が「おっ先に〜」と言いながら真っ暗な配管を走ってA1へと言ってしまった。するとそんな佐瀬を追いかけるように新宮が「待てこの野郎!」と言いながら走っていった
「お二人共、こんな所走ったら危ないですよ」
倉科はそう言うと土井と共にA1へと向かっていった
「宗。ここは変わる。お前も行け」
「分かりました」
宮島にそう言われると宗も撤退した
「布田さん行きましょう。あとは俺達だけです」
「そうだな。先に行け」
布田がそう言うと宮島は「お先に失礼します」と言い、速やかにA1へと向かっていった
『多分、この判断が正しかったはず……』
布田は心の中でそう言いながら、こちらにやって来たゾンビの首に剣を突き刺した。そしてその後も数体倒してからA1へと繋がる配管に入った……
『ある程度は倒したが、こちらにまで来ないといいが……』
布田はそう思い、撤退する際に何度も後ろを確認した。しかしゾンビの姿は勿論、A5方向からこちらに向かってくる足音は一切聞こえなかった……
「これで全員撤退完了ですね」
布田がA1に入ると土井がそう言った。するとそれに続くように水瀬が「ということは今日はもう終わりで? 俺はまだいけますが」と言った。なので布田は「数名ここに残ってA5方向を警戒。残りは地上にあがって作戦を考える」と指示を出した
「じゃあこの場には水瀬と新宮が待機しててくれ。まだ戦えるだろ?」
布田の指示を聞いた宮島は二人にそう言った
「え!? そういう意味じゃ……」
「水瀬は良いとしてなんで私まで!」
二人は宮島にそう言った。するとそんな二人に倉科が「それじゃあお先に失礼しますね」と言って地上へと出る梯子を登っていった
『ここの警戒はこっちから人を出そうと思ったんだけど……まぁいいか』
布田は心の中でそう言うと水瀬と新宮を見た。二人はブツブツと文句を言いながらもA5へと繋がる配管の前で警戒していた……
布田景
特別ゾンビ対策官
武器……剣
緊急防御箱
特注の短刀
拳銃




