#289 安全
東京本部第一会議室……
林達は指示通り第一会議室に入った。第一会議室には既に多くの対策官が集まっており、林達の到着はかなり遅く思えた。なので林は空いている座席を見つけると、すぐにそこへ向かって歩き出した
「林、久し振りだな」
突然誰かがそう言ってきた。なので林はその声のした方を見ると、そこには一人の男性対策官がいた
「お久し振りです。成河さん」
林は男性対策官にそう言った。すると林の後ろにいた冨沢が小牧に「誰? あの人」と聞いた。しかし小牧も成河という人を知るはずもなく「知りませんよ」と返した
「成河さんどうも。小橋です」
小橋も成河にそう言った。すると成河は「小橋も参加するのか。林は参加するんじゃないかと思ってたが、小橋もとはね」と言った
「自分だってもう三佐ですから!」
小橋は成河にそう言った。すると成河は「確かに三佐ならある程度のことはできるよな」と言った
「林、この人知り合い?」
成河と小橋が会話している隙きをついて、冨沢が林にそう質問した。すると林は「あぁ、成河さんだよ。知らない?」と聞いた
「知らん。どこ所属の人なの?」
「同じ対策2で班長やってるよ」
林はそう答えると成河に「ですよね。成河さん」と言った。すると成河は「ちょっと話の振り方が唐突過ぎないか?」と返した
「まぁ三人は成河さんのこと知らなくてもおかしくないよな。部屋が違うわけだし」
小橋は冨沢、小牧、双葉を見るとそう言った。すると成河は「じゃあ自己紹介くらいしとくか」と言うと、咳払いをした。そして「対策2、U班の班長をしている成河一佐だ。よろしく」と言った。なので三人も順番に自己紹介をした
「それで林と小橋とはどういう関係なんですか?」
冨沢は成河にそう聞いた。すると成河は「俺にとっては元部下だよ。二人が二等の頃の班長が俺だからな」と言った
「二人が二等の頃……、という事は新平地作戦にも一緒に参加したんですか?」
冨沢はそう聞いた。すると成河は「もちろん。まぁその時のメンバーのうち二人はここにいないけどね」と言った
「あっ……」
小牧は成河のその言葉を聞くと、すぐに新平地作戦でここに居ない二名が命を落としたのだと思った。するとそう思っている小牧に林が「何か勘違いしてるみたいだから言うけど、当時の成河班から死者は出てないぞ」と言った
「え? そうなんですか……?」
小牧が恐る恐るそう聞くと成河は「あぁ、葉木田は神奈川支部へ、笹本は作戦後に辞めただけだよ」と言った
「まぁ成河班の担当は外周を囲むだけでしたからね。さすがに公園内に入ってたらヤバかったと思いますが」
小橋がそう言った。すると成河は「確かにそうだな。公園内の死者数は二人共知ってるだろ?」と小橋、林に聞いた
「勿論です。外周とはいえ、無事だったのが奇跡でしたから」
林がそういった時だった。突然第一会議室の扉が強く開かれた
「藍卯が来たな。早く座ったほうがいい」
成河は藍卯が来たのを見ると林達にそう言った。なので林は「そうですね。それではまた」と言うとこの場を離れ、席に着いた……
「今から作戦の説明をする。まずは宇土から資料を受け取れ」
藍卯がマイクを使ってそう言うと、宇土は皆に資料を配り始めた。なので小牧の手元にも資料が回ってくると、その資料を見た。その資料には作戦開始日が三月になっていた
「小牧、これ三月って書いてあるよな」
冨沢もそれに気付いたらしくそう言ってきた。なので小牧は「えぇ、確かにそう書いてあります。まだ二月に入ったばかりなのに……」と言った
「全員に資料が渡ったみたいだから説明をする。作戦開始日は三月……、と書いてあるがこれはメインのやつだ。お前らにはこのメイン作戦の準備をしてもらう」
藍卯はそう言った。すると前の席に座っていた水瀬が「どういうことだ藍卯!」と説明を求めた。なので藍卯はそんな水瀬に「説明するから黙ってろ」と言った
「このメインの作戦には対策部は勿論、調査部も共に乗り込む。だからお前らにはこのメイン作戦前に旧下水管の入口付近の安全を確保してもらう」
藍卯はそう説明した
旧下水管へ出入りできる場所は様々な問題があり、一箇所しかなかった。そのうえ、この一箇所は古びた梯子を使って降りておかなくてはいけないため、とても危険だった。なので藍卯は調査部が来る前に少しでも安全な場所を作ろうと考えていた
「具体的には、『A』全てをセーフゾーンにする……のが目標だ」
そう言ったのは宇土だった。すると、すぐにその計画に対して有川が「待て、簡単に言うがエリアAはかなり広いぞ。それに『A-13』の方向はまだ調べてすらないぞ」と言った
「あくまで計画だ。別にちょっとダメでも構わん」
藍卯は有川にそう言った。そして今度は全体に「と、言うことで明日から『エリアA』のセーフゾーン化を進めろ。人員をどうするかは宇土に任せる」と言うと、部屋から出ようとした
「藍卯、どこへ……」
宇土はすぐにそう聞いた。すると藍卯は「私の担当はあくまでメイン作戦だ。こっちはお前がやれ」と言うと部屋から出ていった
『はぁ……、仕方ない。やるか』
藍卯の言葉を聞くと宇土はそう思った。そして心の中で覚悟を決めてから皆にこう言った
「これからいくつかの班に分ける。この作戦ではこの班で行動してくれ」
宇土はそう言うとマイクを机に置いた。そして代わりに水性ペンを持つと、ホワイトボードに班分けを書き始めた……
成河咲雲
准ゾンビ対策官
武器……剣
短剣
拳銃




