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僕らはゾンビ対策官  作者: ソーダ
第五章 調査
313/347

#284 名字

午前十時、東京本部調査4専用室……


「あ〜、やっと自由だ」


トレイはそう言うと近くにある椅子に腰を掛けた。するとそんなトレイに村島が「お前、監視下にあること忘れてないか?」と確認した


「大丈夫。抵抗しようなんて考えてないし」


トレイは椅子の背もたれに寄りかかりながらそう言った


「どうかしらね。私達を油断させたうちに逃げるつもりでしょ。でもそうはさせないわよ」


木暮はそう言うとトレイの隣りにある椅子に座った


「失礼な! わざわざあんな危険な所に自分から戻るわけないじゃん」


「どうだか。それよりトレイには何をさせる? さすがに私達と同じような事をさせるのは無理だし……」


木暮は村島にそう聞いた。すると村島は「そうだな。まずは名前をなんとかしないとな」と言うと、トレイに近寄った


「名前についてはもう言ったでしょ。無いって」


トレイはそう答えた

殺所での取り調べでトレイは色々な情報を吐いた。そしてその情報の中の一つに「名前が無い」というのがあった


「じゃあ向こうではなんて呼ばれてたんだ」


村島がそう聞くとトレイは「トレイだよ」と答えた


「それ以外でだ。他にあるだろ?」

村島がそう言ったものの、トレイは「それ以外ないよ。ずっとそう呼ばれてきたからね」と答えた


「戸籍は私達でなんとかするとして、名前ってどうします?」


そう言ったのは瀬戸だった。するとトレイは「トレイでいいじゃん。格好いいし」と言った。なので村島は「キラキラにもほどがあるわ」と突っ込んだ


「なんか前例とか聞かせてよ。んじゃないと決められないわ」


トレイはそう言った。けれどトレイのいた組織のメンバーを生け捕りにし、味方につけたのはこれが初めてだったため、木暮は「貴女がその例になったのよ」と言った


「まさかまさか。セブンの時とかどうしたのよ」


トレイはそう聞いてきた。なので村島は「セブンの時って、新平地作戦のことか?」と確認した


「それよ。そのときセブンと潜入捜査官が入れ替わったんでしょ?」


トレイがそう言うと、木暮が「セブンはその場で殺したわ。だから名前云々なんて無いわ」と答えた


「マジか。てっきりこの建物の何処かに捕まってるのかと思ったわ」


「それはそうと名前はどうするんだ? こんなので長々と時間を取られたくないんだが」


村島がそう言うと、木暮は「それもそうね。なんか決めた?」とトレイに聞いた。けれどトレイは自分の名前にも関わらず全く考えていなかった。なので瀬戸に「なんかいいのない? 瀬戸ちゃ〜ん」と聞いた


すると瀬戸は「トレイからトを抜いて『れい』とかどうかな?」と言った


「『れい』か……悪くはないな。因みに漢字は?」


トレイは瀬戸にそう聞いた。すると瀬戸は手帳を取り出し、適当なページに漢字を書き始めた。そして書き終わるとそのページをトレイに見せながら「これなんてどう? 可愛らしいと思うんだけど」と言った


瀬戸の書いた字は『礼』だった。それを見たトレイは「まぁ可愛いかは知らないけど俺にピッタリだな」と言った。なので瀬戸は「じゃあ名前はこれでいいね。それじゃあ名字はどうする?」と聞いた


「名字か〜。なんかいいのある?」


トレイは再び瀬戸に聞いた。けれど名字までは瀬戸も考えていなかったらしく、すぐに答えることができなかった


「そうね……じゃあさっき抜いた『ト』を入れてみるのはどう?」


瀬戸はそう提案した。けれどトレイも『ト』が入るいい感じの名字が思いつかず、すぐに「なんかある?」と瀬戸に聞いた


「私の名字にも入ってるけどさすがに被るのはあれだし……」


「まぁ瀬戸が二人もはやめてくれ」


村島がそう言った


「そういえば潜入捜査してたとき、『戸宮』っていう名字の人がいたような……」


瀬戸はそう言った。するとトレイは「その漢字って『瀬戸』の『戸』に『神宮』の後ろのやつであってる?」と聞いてきた。なので瀬戸は「あってるよ」と言った


「じゃあそれで! なんか洒落てるし」


トレイはそう言った。けれど村島は「それ大丈夫か? 瀬戸が会った戸宮って人、ゾンビ愛護団体のメンバーだろ? そんなのと同じってどうなんだ?」と難色を示した


「じゃあなんかあるの?」


トレイにそう言われると村島は「そう言われるとな……」と言い、黙ってしまった。すると木暮が「それでいいんじゃない? 村島さんも気にし過ぎよ」と言った


「まぁ確かに気にしすぎかな。でもな〜」


木暮にそう言われたものの、村島はまだ納得できていなかった。けれどトレイは「じゃあ俺は今日から『戸宮礼』って事で! それじゃあ諸々の手続きとかはよろしく」と言った


「分かった。戸籍やらについては任せて。瀬戸さんはトレイ……じゃなくて戸宮を見ておいて」


「分かりました」


瀬戸がそう言うと木暮は自分の席へと行ってしまった



「それじゃあ瀬戸ちゃん。これから何するの?」


トレイ、改め戸宮はそう聞いた。けれど瀬戸も何をすればいいのか分からないため、村島に「村島さん。私と戸宮は何をしましょうか?」と聞いた


「そうだな。仲間になったとはいえ、元敵に機密情報を見せるのもあれだしな……。とりあえず本部の案内とかして時間つぶしてて。三ツ木さんに何させるか聞いとくから」


「分かりました。戸宮さん行くよ」


瀬戸は村島にそう言われると、戸宮と共に部屋から出ようとした


「瀬戸!」


そんな瀬戸を村島は呼び止めた。そして瀬戸に「何かあったら躊躇うなよ」と言った


「任せてください。私も新米じゃないんですから」


瀬戸は拳銃のあるところを軽く叩くとそう言った


「それでは本部の案内でもしてきます。何かあれば電話でお願いします」


瀬戸はそう言うと、戸宮と共に部屋から出ていった……



「はぁ〜」


二人がいなくなると、村島はため息をついた。するとそんな村島に木暮が「そんなに瀬戸さんが心配?」と聞いた


「瀬戸はここに来た頃から見てるからな。色々と不安にもなるよ」


村島はそう言うと自分の席に座った


「大丈夫。瀬戸さんは大きな仕事もちゃんと終えられたんだから。もう立派な潜入捜査官ですよ」


木暮はそう言った。けれどそれでも村島には不安らしく「だといいけどな……」と言い、遠くをボーッと眺めた……


戸宮礼とみやれい


潜入捜査官


武器……なし

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