#276 逃走者
午後六時半、川立駅……
二人の乗っている電車は駅に止まると扉が開いた。すると佐伯は「私はここだから、それじゃあね」と言い降りていって。小牧も電車から降りると佐伯は「六王子じゃないの?」と聞いてきた
なので小牧は「あぁ、これ赤梅行きだからここで乗り換え。それじゃあまた」
小牧はそう言うと佐伯と分かれようとした。すると突然誰かがぶつかってきた。小牧は大丈夫だったものの、ぶつかってきた人は今の衝撃で倒れてしまった
「あの、大丈夫ですか?」
小牧はそう聞いた。すると何処からか「あそこだ!捕まえろ!」という声が聞こえてきた。なのでその方向を見ると、こちらに向かって走ってくる二人の人がいた
小牧はそれを見ると『え?一体何が?』と思った。すると小牧とぶつかった人は素早く立ち上がり、この場から逃げ出した
「これは追いかけた方がいいやつかな?」
それを見た佐伯はそう言うと小牧を置いてその人を追いかけ始めた。それから少しして、こちらに走ってきていた人のうち、一人が小牧の所にやってきた
「大丈夫ですか?」
女性がそう聞いてきた。なので小牧は「大丈夫です。それより今のは……警察ですか?」と聞いた。その女性はスーツ姿のため、何処の人間なのか分からなかった。すると女性は手帳を小牧に見せながらこう言った
「四鷹の対策官です。詳しくは話せませんが、いま人を追っていまして……もし逃げられてしまったらアイツの特徴を教えて頂けませんか?」
女性対策官はそう言ってきた。なので同じ人間だと分かった小牧は自分も対策手帳を取り出し、女性に見せると「えぇ勿論です」と答えた
「同業者でしたか。本部の方ですか?」
「はい。本部の対策部に所属している小牧です」
小牧がそう言ったときだった。突然女性対策官がつけている無線が鳴った。なので女性は「ちょっとすみません」と言い、無線に応答した
そして少しすると小牧に「すみません。逃がしたとの事でして、先程の件を……」と言ってきた。なので小牧は「構いませんが、顔は割れてないんですか?」と聞いた
「はい。ちょっと色々とありまして……ここではアレなので近くの交番まで来ていただけませんか?」
女性対策官にそう言われると小牧は「分かりました。ただ少し時間を下さい。同僚に連絡をしたいので」と言った。すると女性対策官は「分かりました」と答えた
小牧はそれを聞くとスマートフォンを取り出し、佐伯にメールを打ち始めた……
川立駅北口交番……
「それで事情というのは?」
小牧は対策官に連れられ交番に入るとそう聞いた
「それがさっき追ってた人は捜査対象と接触した人でして……そのため何も分かってないんです」
「そうでしたか。それでえっと……」
「あ、申し遅れました。四鷹基地捜査部の伊佐です」
小牧が名前を知らず、困っていると伊佐が自己紹介をしてきた。なので小牧も「東京本部対策部の小牧です」と言った。そして続けて「伊佐さん。向こうで言っていた逃走者の特徴云々なのですが……」と言うとメモ帳を取り出し、何かを書き始めた
「口頭で説明するのが難しいので、簡単な絵にしてみました」
小牧はそう言うと伊佐にメモ帳を見せた。伊佐はそのメモ帳を受け取り、見ると「有難うございます。写真撮っても良いですか?」と聞いてきた
なので小牧は「構いませんが、そのページだけ破ることもできますがどうします?」と聞き返した。すると伊佐は「では申し訳ないですが、破る方で……」と答えた
なので小牧は伊佐から手帳を返してもらうと、絵を描いたページを破って伊佐に渡した
「有難うございます。他に何か分かること、気付いたこととかあります?」
伊佐は受け取るとそう聞いてきた。けれど逃走者の顔以外特に分かることもなかったので、小牧は「いえ、もうありません」と答えた
「分かりました。では……」
伊佐はそう言うと自分の手帳に何か書き始めた。そして書き終わるとそのページを破り、小牧に「後日何か分かりましたら此方までお願いします」と言いながら一枚の紙を渡してきた
『これは?』
小牧はそう思いながら紙を受け取り、書いてあるものを見た。そこには「四鷹基地」という文字と電話番号が書かれていた
「ザーッ!」突然伊佐の持つ無線からノイズが聞こえてきた。そしてすぐに「武田だ。これより2班と共に捜査を行う。全員、川立駅の駅員室に集まれ」と指示が出されると無線は切れてしまった
「すみません。集合がかかったので失礼します」
伊佐がそう言うと小牧は「分かりました。それでは何か分かり次第電話しますので」と言った。すると伊佐は「お願いします」と言い、走ってこの場を去っていった
『さて、帰るかな』
伊佐が居なくなると小牧は交番から出た。そして交番にいた警察官にお辞儀をしてから改札口へと向かった……
伊佐万佑子
准ゾンビ対策官
常備武器……拳銃




