#003 戦い
「これは思ったより酷いことになってるかも知れないな」
そう言ったのは林だった。すると冨沢は走りながら林にこう聞いた
「酷いって何が?」
「そのままだよ。さっきチラッと見えたけどかなりの班が東京駅に来てたよ」
林は走りながらそう言った。ゾンビ殲滅局にはパトカーのような専用車両がある。といってもパトカーとは配色が違ったりと異なる部分はあるが緊急事態にサイレンが使われることは同じだった
『そういえば専用車見たな』
小牧は息を切らさぬよう言葉にはせず、心の中でそう思った
「確かにサイレンがうるさいとは思ったけど、それくらいなら普段からないか?」
冨沢がそういったときだった。突然林の持つ無線機が鳴った。なので林は冨沢に「少しまって」と言うと無線機を取った
「一体何の連絡でしょうかね?」
「さぁ、それより塚西は走りながら話して大丈夫なのか?」
冨沢は話しかけてきた塚西にそう聞いた。どうやら塚西は体力があまり無いようだ。小牧も体力にはそこまで自信がなかったが、小牧の場合は数日前までは無理矢理走らされていた。なので長距離は無理でも距離が短ければ体力に問題なかった
「これくらいなら大丈夫ですよ」
塚西はゼイゼイしながらそう言った。明らかに大丈夫のようには見えなかった……
「塚西はもう一度予備対策官になって走り込んだ方が良いんじゃないか?」
「相変わらず中鈴は厳しいお言葉を平然と吐くね」
冨沢は中鈴にそう言った。中鈴は塚西と違い呼吸が乱れていなかった。しかし塚西はもう限界がきているらしくそれに対しての反論すら出来なかった
「小牧も体力だけはつけときな。こうなっちゃうから」
冨沢は嘲笑うかのように言った。そんなときだった。突然先頭を走っていた林が此方を向いた。そして後ろ向きの状態で走りながら四人にこう言った
「本部の前にゾンビが現れたそうだ。全員用意しておけ」
林はそう言うと前を向いて走った。現在林班の走っている場所は東京本部のすぐ近くだった。なのでまだゾンビがいるとすれば林班も戦いに加わることになる
「林!反対側の歩道にいるのゾンビじゃないか?」
冨沢がそう言うと皆がその方向を見た
「みんな行くよ。車には気をつけて」
林はそう言うと道路を走って渡りだした
林班の渡っている道路はかなり大きい道路で交通量も多かった。なので林は車に轢かれぬようタイミングを見計らって渡った
「うわぁーーー!」
突然悲鳴が聞こえた。何かと思い小牧はその悲鳴のする方向を見ると、そこにはゾンビに襲われそうな男性がいた。その男性は転んでおり、ゾンビから逃げるように後退りしていた
「間に合うか?」
冨沢はそう言うと刀を抜いた。そして男性を襲おうとしているゾンビに向かって走り出した。するとそんな冨沢に林はこう言った
「冨沢どけ!」
冨沢はそう言われると歩道にしゃがみこんだ
パンッ!
冨沢がしゃがみ込むと同時に一発の銃声がした。すると男性を襲おうとしていたゾンビは倒れてしまった。
「冨沢!」
「任せなさいな」
冨沢は林にそう言うと立ち上がり、倒れたゾンビに駆け寄った。そしてそのゾンビの首を胴体から切り離した
「とどめは刺したよ」
冨沢は林の方を向くとそう言った
「この場にいるゾンビを全て倒せ」
「任せなさいな」
林がそう指示すると冨沢はそう言って近くにいたゾンビに駆け寄った。そして先程と同じようにゾンビの首に斬りつけた
『一体くらいは倒さないと……』
小牧はそう思い辺りを見回した。しかし辺りには倒されたゾンビしかおらず、動き回っているゾンビはいなかった
「小牧悪いね。小牧の分のキル数は頂いたよ」
冨沢はそう言うと刀をしまった
「まぁゾンビを沢山殺したからといってどうとなる訳じゃないから…… とりあえず冨沢はこんな奴なんだと思って良いよ」
林は小牧にそう言った。冨沢は初めてあったときからそうだったが、かなりフレンドリーでやたらと小牧に絡んできていた。小牧は別にそれでも仲が悪くなるよりは良いと思っていたので、何とも思っていなかったが今の林の言葉を聞いて、冨沢はヤバい人なのではと思い始めた
「林!印象操作反対!」
「はいはい雑談は終わってからね。とりあえず本部に行くよ」
林はそう言うと周りに動いているゾンビがいないか確認してから走り出した。冨沢は林の後ろを走りながら「逃げるな」や「答えろ」などと冗談ぽく言っていた
冨沢は走っている間ずっと何かしらを話していた。しかしそれなのに全く呼吸が乱れていないので、実は凄い人なのではないかと小牧は思い始めた……
冨沢学
准ゾンビ対策官
武器……刀
拳銃
※修正済み