#271 実験用
午後三時、六王子大学東門付近、作戦司令車…
「これにて『六王子大学キャンパス内ゾンビ掃討作戦』を終了とする。全班作戦司令車に報告してから本部へ戻れ」
宇土が無線でそう言うと、全班から一斉に無線がきた。なので宇土の部下達はそれらの対応に当たっていた。けれど宇土は無線には出ず、手元にある資料を見ていた
『やっぱり今回の作戦おかしい気が……』
宇土がそう思ったときだった。突然米田が宇土の肩に手を置き「どうした、悩み事か?」と聞いてきた
「あぁ、ちょっとな」
宇土は適当に返答した。すると米田が「それで内容は?」と詳しく聞いてきた。なので宇土は「別に大したことじゃないよ」と言った
「まぁ言ってみ。宇土には死なれちゃ困るからな」
「いや、別にそういう深刻なものじゃないよ」
「深刻なものじゃないなら何よ?」
米田にそう言われると、宇土は資料を持ちながら「今回の作戦の事よ」と言った
「今回の作戦が?別にいつも通りだと思うけど、調査部が絡んできたこと以外は」
「うん。別にそこは良いんだよ。ただ……」
「ただ?」
「そもそも今回の作戦、司令官必要だったのかと思って……」
そう言われたものの、米田には宇土が何を言いたいのか分からなかった。なので米田は「どういうことよ。さっぱり分からんわ」と言った
すると宇土は「そのままだよ。通報が元の作戦は小規模作戦になる。これくらい大学で習ったでしょ?」と聞いてきた。なので米田は腕を組んで悩み始めた
そしてすぐに「確かそんな事言ってたような……てか待ってくれ。小規模作戦には司令官はつかないんじゃ」と言った。なので宇土は「だからその事を俺は言ってるんだよ」と言った
「確かになんでこの作戦は中規模作戦なんだ?」
米田がそう言ったときだった。二人の会話に油井が入ってきた
「場所が場所だからじゃないですか?」
米田はそれを聞くと「つまり?」と聞き返した
「そのままですよ。ここが大学だから中規模になったのでは?という考えです」
油井はそう説明した。するとそれに対して宇土が「それは俺も考えた。けれど過去、通報が元の教育機関でも中規模に格上げされたことはないはず……もちろん俺が司令官になってからの話だけどね」と言った
「ここでどうこう言っても分からんし、本部に帰ってから例の人達に聞いたら?」
米田がそう言ってきた。なので宇土は「勿論そうするつもりだよ」と返答した……
東京本部、本部長室……
この部屋には仲野と藍卯がおり、二人とも別々の仕事をしていた。するとそんな部屋に対策5の城山が入ってきた
「失礼します」
城山が部家に入ると仲野は手を止め、城山に「分かった?」と聞いた。すると城山は「えぇ、何とか」と言いながら仲野に一枚の紙を渡した
「藍卯も見る?」
仲野は別作業をしている藍卯にそう聞いた。すると藍卯は「当然だ」と言い、仲野の後ろに移動し覗きこんだ
「成る程……つまり亜種に効果があると?」
仲野は全てに目を通すと確認のためそう聞いた。すると城山は「はい。全ての亜種に効果があるかは分かりませんが、少なくとも再生型ゾンビと亜種、細かくいうと『白神』には効果があると分かりました」と答えた
するとそれに対して藍卯が「それはどうやって調べたんだ?」と聞いてきた。なので城山は「どちらも切り取られた一部で実験しました」と言った
「白神の件は知ってたけど、再生型ゾンビも実験用残ってたのか」
城山の話を聞くと仲野がそう言った。すると城山が「えぇ、白神は腕のみ、再生型ゾンビは全身……というよりまだ生きていました」と答えた
「生きてた?宮島が遭遇した再生型ゾンビって半年以上前のやつじゃないのか?」
仲野がそう聞くと城山は「資料によると、八月に行われた新宿総合病院掃討作戦で捕獲されたものだそうです」と答えた
「再生型ゾンビも出たときはかなり話題になったけど、最近は聞かないね」
仲野がそう言うと、藍卯が「その件は分かった。それでその液体はどのくらいあるんだ?」と聞いた。なので城山は「実験用に潜入捜査官が盗んできた小さな瓶が一本あります」と答えた
すると藍卯は「その瓶の大きさは?」と聞いてきた
「これくらいです」
城山はそう言うと手で瓶の大きさを表して見せた。その大きさは手のひらくらいのもので、それを見た藍卯は「それだけの量じゃ対策官の武器につけるのは無理か?」と聞いた
「実験用でも足りないくらいなので、無理です」
藍卯な問いに城山はきっぱりと答えた
「分かった。それはもういい。それで槍の持ち主についてはどうなった?その調査も対策5だろ?」
藍卯はそう聞いた。すると城山は「そちらの調査は日夜通してしているのですが、まだ何とも……」と答えた。なので藍卯は「分かったら報告に来い」と言った
「それでは失礼しました」
城山はそう言うと部屋から出ていった……
城山統士郎
最高研究官
常備武器……拳銃




