#266 逃走
「突撃!場所は六階、予定通りやれ!」
高梨がそう叫ぶと五十木や里間といった部下達が銃を持ち、二十四号館に入っていった
「三ッ木さん。そちらは?」
高梨は後ろにいる三ッ木にそう聞いた。すると三ッ木は「いま大学関係者として忍び込ませてたやつに指示を出したよ」と答えた。すると高梨は「了解。ではこの場は任せます。私も行きますので」と言うと建物の扉を開けた
「気をつけて」
建物に入っていく高梨に三ッ木はそう言った……
「三ッ木さん」
藤田が三ッ木を呼んだ。なので三ッ木は「何かあったか?」と言いながら藤田を見た。そして藤田の様子からすぐに調査5の状態が良くないことが分かった
「うちの狙撃手が一人抜かれました」
藤田がそう言うと三ッ木は「それで撃ったやつはどうした?」と聞いた。すると藤田は首を横に振り「場所は分からないとのことで……なので位置的に狙える場所へ人を送ってます」と答えた
「そうか。それじゃあ藤田の所はそっちを頼むぞ。中は俺と高梨の所でやるから」
三ッ木がそう言うと藤田は「了解しました」と言い、部下と共に何処かへ行ってしまった……
六王子大学二十四号館、六階……
「さっさと下に行くぞ!」
デュースはそう言うと部屋から飛び出した。すると突然何処からかパンッ!という一発の銃声が聞こえた
「何処からだ!」
エースがそう言ったときだった。デュースは頭から血を流し、ゆっくりと倒れてしまった。するとそれを見たトレイが「エース、もう外にいるぞ!」と言った
「嘘だろ。いくらなんでも囲むのが早すぎる……」
エースはそう言うと剣を抜き、デュースが倒れている扉に近寄った
「デュースは無理だ。死んでる」
エースはトレイにそう言った。デュースは頭に弾丸を受けており、弾が貫通していた。そのため出血はもちろん中身も飛び出していた
「ファイさん、ナブラさん!どうします?」
トレイは二人にそう聞いた。けれど二人は部屋の奥で何かをしており、その問に答えなかった。なのでトレイは「何をしてるんですか?」と言いながら二人に近寄った
「動くな」
ファイはトレイの頭に拳銃を突き付けながらそう言った。するとトレイは「ファイさん何を……」と言った
「エース、貴方もよ」
ナブラはエースに拳銃を向けながらそう言った。するとエースは「成程。二人ともスパイか。通りで行動がおかしいと思ったよ」と言った
そんなエースにナブラは拳銃を向けたまま「武器を置きなさい!」と指示した。するとエースは「まぁまぁそう慌てなさんなって」と言いながら剣を床に捨てた
「拳銃もよ」
ナブラはそう言った。するとエースは「拳銃もか……それは無理だな」と言うと、近くにあった本をナブラに向かって投げつけた
「うっ!」
その本はナブラの顔面に直撃した。それを見たファイは「大丈夫か?」と聞いた。するとナブラは「大丈夫。それよりエース!抵抗をやめて出てきなさい」と言った
エースはナブラが怯んでいるうちに死角へと逃げていた。けれどその場所も同じ部屋のため、エースに逃げ場はなかった
『とりあえずサイスにこの事を……』
エースはそう思い、サイスに電話をかけ始めた
「はい。こちら調査5の宮林。本館屋上にいた敵の狙撃手を殺害しました」
エースはそれを聞くと「クソッ!」と言い、電話を切った。するとその時だった。突然四人がいる部屋の扉が強く開かれた。そして部屋の中に調査2の調査官が入ってきた
「すぐに制圧しろ!」
高梨がそう言うと武装した調査官が沢山入ってきた。そして数人の調査官が銃を構えながら慎重にエースとの距離を縮めていた
『まずい。こうなったら一か八かやるしか……』
エースは心の中でそう思うと、拳銃を近くの窓に向け発砲した。すると窓ガラスは割れてしまった
「誰かそこへ行け!」
エースの企みに気付いた高梨は部下達にそう指示を出した。けれどエースは高梨の部下が行動するよりも早く、今割った窓から飛び下りた……
「逃がしたか!奴はどうなった!」高梨は慌ててエースが飛び下りた窓に駆け寄ると、そこから首を出して下を見た
「どうです?」
五十木がそう聞いた。けれど高梨はそれに答えず、黙って下を見ていた。そして少しすると下を見るのをやめて「誰か下に行って見てきてくれないか?」と言った
するとそれに対して里間が「俺が行ってきます」と言い、部屋から出ていった
「高梨さん。エースはどうなりました?」
五十木はもう一度聞いた。すると高梨は「見てみればわかるよ」と言い、ファイとナブラのいる所へと移動した
『それで下は……』
五十木はそう思いながら、窓から顔を出して下を見た
『成程そういうことか……』
窓の下には人が倒れており、その付近には血が飛んでいた……
高梨花音
二等ゾンビ対策佐官
常備武器……拳銃




