#258 通信
次の日、午前七時半
東京本部、本部長室……
ガチャッ!
仲野は扉を開けると部屋の中に入った。そして荷物を机の上に置くと、席についた
「さて、やるかな」
仲野はそう言うと机の中から資料を取り出し、仕事を開始しようとした。すると突然扉がノックされ開いた
「仲野さん。昨日はすみません」
そう言ったのは宇土だった。すると宇土を見た仲野は「大丈夫なのか?数日休みを取った方が良いんじゃないの?」と言った
「いえそういうわけには……それに今日は作戦が……」
「作戦ならもう終わってるよ。七時スタートだし」
仲野はそう言いながら宇土に近寄った。すると宇土が「けど何かあったり……」と言ってきた。なので仲野は「大丈夫。代わりの司令官は藍卯が推してた人だから」と言った
ガチャッ!
「失礼します」
突然ノック音がすると扉が開き、部屋の中に夏川が入ってきた
「本部長、通信司令部が慌ただしいことになってるんですが、何かあったんですか?」
そう言って部屋に入ってきたはのは夏川だった。けれど仲野は今来たばかりのため、現在の本部の状況が全くつかめていなかった。なので「え?そうなの?」と言った
「えぇ、いつもと違ってバタバタしてましたけど……」
「通信司令部がいつもと違うって珍しいな。ちょっと見てきてくれないか?」
仲野がそう言うと夏川は「了解です」と言い、部屋から出ていった
「通信司令部がバタつくって何かあったんですかね?」
二人の会話を横で聞いていた宇土はそう言った
「何もないと良いんだがな……」
仲野はそう言うと自分の席に座った
東京本部通信司令部、主な仕事はゾンビ関連の通報の処理、警備部への指示だった。けれどゾンビ関連の通報は数が少ないため、警察の通信司令室よりは慌ただしくなかった
バンッ!
「仲野!ヤバいことになってるぞ!」
そう言って部屋に飛び込んできたのは三ツ木だった
「どうした?そんなに慌てて……」
「慌てるも何もヤバいよ。マジで」
「それで内容は?」
慌てている三ツ木に仲野はそう聞いた。すると三ツ木は「来た方が早い。すぐに来て!」と言い、扉を開けた。なので仲野は「口頭じゃダメなの?」と聞いた
「見た方が早い」
三ツ木はそう言うと立ち上がった仲野の背中を押し、部屋から出た
「三ツ木さん。それって通信司令室ですか?」
宇土も部屋から出るとそう聞いた。すると三ツ木は歩きながら「あぁ、そうだが……宇土は大丈夫なのか?」と言った
「大丈夫です。それでどんなことが……」
宇土がそう聞くと三ツ木は「そりゃあもうヤバいとしか言えんことが起きてるよ」と言い、非常階段の扉を開けた
通信司令室は本部長室のある階の一つ下にあった。なのでエレベーターで向かうより階段を使う方が早かった。そんな事もあり三人は階段をかけ下りた
ガチャッ!
「先に!」
三ツ木は非常階段の扉を開いた。するとそんな三ツ木の前を夏川が通った。なので仲野は「夏川!」と呼んだ
「本部長!こっちです!」
夏川は仲野の腕を掴むと通信司令室へと向かって走り出した。そして少し進むと『通信司令室』と書かれている扉を開けた
「何があったんだ!」
仲野は部屋の中に入るとそう言った。すると主司令席に座っている司令官が前にあるモニターに映像を流し始めた
「これは?」
仲野は映像を見るとそう言った。その映像は上空から撮影されたもので、一台の車を撮していた
「笹川!これは何だ!」
仲野はそう言いながら主司令席へと移動した。すると笹川という女性司令官がこう説明した
「報告があまり無いので詳しくは分かりませんが、どうやら捜査対象が逃走したそうです」
仲野はそれを聞くともう一度モニターに流れている映像を見た。その映像をよく見ると対策官の車も映っていた
「それで地上の被害は?」
「今のところ民間人を含む七名が負傷、轢き逃げ等をしながら現在は一般道を時速八十キロで逃走中。こんな調子だと負傷者はまだまだ増えるかと……」
笹川はそう言った。すると仲野は後ろにいる宇土、三ツ木、夏川に「藍卯はまだ来てないのか?」と聞いた
「そうですね……」
夏川はそう言うと腕時計を見てから「藍卯さんはいつも八時に来るので今はいないかと……」と答えた。するとそれを聞いた仲野は「マジか。とりあえず第一会議室を緊急対策室にする。用意ができ次第、司令はこっちにする」と言った
「了解です。それまでは此方でやってみます」
笹川はそう答えた
「仲野さん。ですが司令は誰が……」
そう聞いたのは三ツ木だった。現在、東京本部にいる司令隊のうち、小池司令隊は現場へ、今井司令隊は夜担当のため居なかった。なので仲野は宇土に「宇土、すまないが藍卯が来るまで司令をしてくれないか?」と頼んだ
すると宇土は「了解です」と答えると笹川に「五分後に第一司令室に繋いで下さい」と言った
「了解」
笹川がそう答えると宇土は「それでは失礼します」と言いこの場を離れた
「それじゃあ第一司令室に行くよ」
仲野はそう言うと三ツ木、夏川と共に部屋を出ていった……
仲野昂祐
ゾンビ殲滅局東京本部、本部長
武器……拳銃




