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僕らはゾンビ対策官  作者: ソーダ
第四章 復帰
275/347

#250 独断

午前九時、第二会議室……


「報告です」


そう言って部屋に入ってきたのは宇土の部下の屋島だった


「先程小規模の襲撃を受けました。それによりテロ参加者六名を逮捕しました」


屋島がそう報告すると及川が「分かりました。もう戻っていいですよ」と言った。すると屋島は「失礼しました」と言い、部屋から出ていった


「あの作戦は大成功だったな。藍卯」


屋島の報告を聞いた仲野は藍卯にそう言った。すると藍卯は「全て予定通りだ。ここまでくれば私もいらんだろ」と言うと部屋から出ようとした。なので仲野は藍卯に「どこに行くの?」と聞いた


すると藍卯は「寝る。何かあったら夏川を通せ」と言うと部屋から出ていった



東京本部一階には宇土が指揮をとる対策1、特殊部、埼玉支部の対策官が待機していた。けれどこれだけの対策官を配置しているにも関わらず、テロ参加者はほとんどいなかった。それどころかいつも通りの朝に近かった


「丙ちゃんの裏作戦のお陰でかなりテロ参加者が少ないですね」


夏川は及川にそう言った。すると及川は「えぇ、今のところ逮捕者は先程の六名だけですからね。あの発表がテロ行為抑制に繋がったんでしょうね」と言った


「何にせよテロ対策はもう大丈夫だろう。そして問題は……」


仲野がそこまで言うと及川が「えぇ、問題は調査部ですね……」と言った



同刻、第四会議室……


「スパイとなれば即刻殺して良いんじゃないか?」


そう言ったのは郡山だった。けれどその意見に対して三ツ木が「それだと後の調査がかなり大変な事になります。なのでとりあえず殺所の独房に入れるのが理想です」と言った


するとその案に対して岡本が「おそらくですが、生け捕りにするのは難しいかと。スパイについて調べたところ、調査1に長くいる人でした。なのでかなりのスキルを持っているかと……」と言った


「結局どうするんだ!早く意見をまとめろ!」


郡山は机を叩くとそう言った



「柏木さん」


そんな流れを見ていた榎本は柏木を呼んだ。すると柏木は「ん?何だ?」と答えた。なので榎本はこう言った


「何か話がずっと進んでなくないですか?」


柏木はそう言われると腕時計を見た。この会議が始まったのは遅くとも午前三時半。そして今の時間は午前九時だった。スパイをどうするかの会議はこんな事を話している間に五時間半も経っていた


「あぁ、確かに。さっきからずっと同じやり取りを見てる気がするな」


「柏木さんもそうでしたか。実は自分もなんですよ」


会議は驚異の五時間半もかかっているのに、内容は何も決まっていなかった。それどころか高梨は夜中にあった裏作戦の疲れからか机に顔を伏せて寝ていた


「これ、しばらく決まらなそうですし通信官にスパイを捕まえてもらいましょうかね」


榎本は冗談でそう言った。すると柏木は「それでいんじゃない?通信官もかなりの対人戦闘力あったはずだし」と言った


東京本部、通信部。この部は東京がゾンビによって崩壊した際、アナログによる情報伝達を担当する専門の部署だった


なので通信官は常に最悪の事態に備えて対ゾンビは勿論、対人戦闘も鍛えていた。けれど幸いなことに今のところそのような事態は起きたことがなく、普段はパトロールや訓練をしていた


「まぁそれが出来れば話は早いんですけどね」


そう言ったのは調査5の藤田だった


「それでこの人達はいつまでよく分からない会話をしてるんですかね?」


藤田が二人にそう聞いてきた。なので榎本は「さぁ。少なくとも郡山さんが介入すると話がこじれるのは知ってた」と答えた。するとそれを聞いた柏木が「確かにそれな」と反応した


「そこでお二人に頼みたいことがあるのですが……」


「頼み?」


藤田にそう言われると榎本はそう言った。すると藤田は「えぇ、ここから抜け出してさっさとスパイ捕まえませんか?」と言ってきた


「いや、それはさすがにまずいんじゃ……」


榎本はそう答えた。けれどそれに対して藤田は「このままだと気付かれますよ。何しろ調査部の主要人物をここに連れてきてるんですから」と言った


「確かにそれはそうだが、あの二人を無視するのはまずい気が……」



柏木がそう言ったときだった。突然榎本が手を叩くと「そうだ」と言った


「何か思い付いたんですか?」


藤田は榎本にそう聞いた。すると榎本はスマートフォンを取り出すとこう言った


「あぁ、この件を藍卯に取り仕切ってもらおうと思ってね」


榎本がそう言うと、柏木が「名案だな。藍卯なら今すぐにでも行動しそうだな」と言った。すると藤田が榎本に「善は急げです。電話を!」と言った


なので榎本は藍卯に電話をかけ始めた……



それから数分後、第二会議室……


バンッ!


突然扉が強く開かれると部屋の中に藍卯と夏川の部下達が入ってきた。そんな様子を見た夏川は部下の一人に「ちょっと、何でフル装備してるの!」と聞いた


するとその質問に対して藍卯が「私が命令した」と言った。すると夏川は「また勝手に……」と言った


すると藍卯はそんな夏川を無視すると、仲野に向かって「それより何で調査部のスパイの件を私に話さなかった」と睨みながら聞いた


「え?藍卯知らなかったの?」


「当たり前だポンコツ野郎。榎本の電話で今知ったわ」


「それでサブマシンガンを持って何しに?」


仲野は藍卯が持っているサブマシンガンを見ながらそう聞いた。すると藍卯はこう答えた


「調査部のスパイを殺しにいく。それと夏川の部下借りるぞ」


藍卯は夏川にそう言うと、夏川の部下と共に部屋から出ていった




藍卯と夏川の部下が部屋から出ていくと、及川が「大変ですね」と言ってきた。なので夏川は「えぇ、本当に大変です」と頭を押さえながら言った


「及川、ちょっと良いか?」


「えぇ、構いませんが何ですか?」


仲野に言われると及川は聞いた


「調査部ってまだ会議してたりする?」


仲野にそう聞かれると及川は一瞬固まってしまった。すると部屋の隅にいた保科がこう言った


「そういえば三ツ木さんは作戦があるから仕方ないとして、スパイの確保を直接しない人達もまだ戻ってませんね」


及川はそれを聞くと仲野に「まだ会議してるんですかね?」と言った。するとそんな第二会議室に元町が入ってきた


「本部長。今後のことなのですが……」


元町がそう言うと、仲野が話を遮ってこう聞いた


「すまんが、第四会議室ってどうなってた?」


元町は突然そう言われると「え?」と言ってしまった。するとそんな元町に及川が「早く!」と急かした


なので元町は「中には入ってないので分かりませんが、使用中の札が出てましたよ」と答えた


するとそれを聞いた夏川は「まだスパイに関する会議してるですか……」と言った


「ということはさっきのって藍卯の独断ってことですかね?」


保科は仲野達にそう言った。すると及川は立ち上がり「とめなきゃ……」と言い、部屋から出ようとした。けれど仲野はそんな及川に「待て!」と言った


「何ですか?早く止めないとまずいことに……」


「いや、今回は藍卯に任せた方が良いかもしれない」


仲野にそう言われると及川は「そうですか……」と言い、先程まで座っていた場所に戻った



「とりあえず全てが終わったらこの件について話し合いだな」


仲野はそう言うと立ち上がり、窓に近付いた。今日は前々から懸念されていたテロ予定の日にも関わらず、東京はいつも通りの朝を向かえ、人々はいつも通り出勤していた


『一回上層会議のメンバーも見直しが必要かもしれないな……』


仲野は外を見ながら心の中でそう言った……



第四章 復帰 完結


第五章 調査 へ続く

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