#236 知人
東京本部一階……
「どこまで連れて行く気なんだ?」
林はエレベーターから降りると小橋にそう聞いた。すると小橋は「すぐそこだよ」と言い、林の腕を引っ張った。そして東京本部の正面口が見える位置に林を連れてきた
「ねぇ、ヤバくない?これ」
小橋がそう聞くと林は「あぁ、だいぶ保険をかけてるんだな。今回の作戦は……」と答えた
この東京本部、正面口付近には沢山の対策官がいた。しかもその対策官は東京本部所属ではなかった
「藍卯の話によると、色んな所に電話かけまくったんだとよ」
突然横からそんな声が聞こえた。なので二人が声のする方向を見ると、そこには有川がいた
「確か有川さんは作戦会議に参加してますよね?」
小橋はそう聞いた。すると有川は頷いて「勿論。だから俺の班の担当外についても知ってるぞ」と言いと二人に資料を見せた
その資料の一番上の紙には『東京本部防衛作戦』と書かれていた。つまりは有川が持っているその資料にこれからの作戦に関することがまとまっていた
「だが……」
有川は資料を開くとそう言った
「どうかしましたか?」
林がそう聞くと、有川は資料を二人に見せながらこう言った
「だが、本部防衛は本部所属の対策官だけのはずなんだよね」
林はそう言われると、有川が見せている資料を見た。その資料には『本部及び本部周辺の防衛……東京本部担当』と書かれていた
「じゃあここにいる対策官は……?」
小橋は有川にそう聞いた。けれどそんなこと有川も知るはずがなく、有川は「さぁね。とりあえずさっき藍卯には伝えたけど、藍卯も知らなそうだったし」と答えた
「藍卯が知らない?」
小橋が確認のためそう聞いた。すると有川は「あぁ、この事を伝えに言ったら……」
「藍卯、下に他の対策官がいるんだけど、あれってどこ配置なの?」
「他の対策官?それは本部以外の対策官ということか?」
「あぁ、そうだけど……」
有川がそう言うと藍卯は舌打ちをした。そして「郡山の野郎だな」と言い、テロ対策室に入ってしまった……
「と、いうことがあってな」
有川は二人にそう説明した。するとそれに対して小橋が「えぇー、作戦を立てるのは藍卯じゃないのかよ……」と言った
『確かにこの人達を郡山さんが呼んだなら色々とヤバイが……』
林は心の中でそう考えると、何となく入り口付近にいる対策官達を見た
「あれ?あの人って……」
「どうかしたの?林」
小橋がそう聞くと林は「いや、あそこにいる人何処かで見たことがあるような気がして……」と答えた。するとそれに対して有川が「そりゃあ、仮にも他局の対策官だし知り合いがいるのもおかしい話じゃない」と言った
すると有川に対して林が「いえ、そうではなくあそこにいる人、確か埼玉支部だったはず……」と言った
するとそれを聞いた有川は慌てて先程の資料を取り出した。そして紙をペラペラとめくるとこう言った
「やはりおかしい」
有川がそう言うと小橋が「どうかしました?」と聞いた。すると有川は「確かに今回の作戦には他局の対策官が手伝うことになっている。けど、埼玉支部は今回の作戦に不参加……って書いてあるんだが」と答えた
林はそう言われるともう一度対策官達を見た。するとたまたま近くにいた対策官と目が合ってしまった。なので林はすぐに目をそらすと、突然「お久しぶりです。林二佐」と言われた
なので林がさっき見た方向を見ると、そこには先程目が合ってしまった対策官がこちらを見ていた
「えっと?」
「あれ?忘れてしまいましたか?」
男性対策官は林にそう聞いた。なので林は「申し訳ないですが、記憶に……」と謝った。するとその男性対策官は林に「ではヒントです。私は埼玉支部改革作戦の時、冨沢達の班を案内しました」と言った
「あ!昆川准官ですか」
林はそう聞いた。すると男性対策官は「はい正解です」と言い、手で丸を作った。そして続けて「けど、今は准官ではなく、三佐です」と言った
「それは失礼しました。昆川三佐」
「まぁ良いの良いの。埼玉本部……じゃなくて埼玉支部の人間は改革作戦以降、ほとんどの人が階級上がってるからしょうがない」
昆川はそう言った。埼玉支部は東京本部が行った『埼玉支部改革作戦』以降、支部長は勿論、最高司令官、一等ゾンビ対策佐官と言った悪事に加担していた対策官を皆捕まえていた。なので埼玉支部では繰り上がりとしてその抜けた分の階級を埋めていた
「それで今日は何しに本部に?」
林は昆川にそう聞いた。すると昆川は「勿論、本部の危機を救いによ!」とはっきりと答えた……
昆川智志
三等ゾンビ対策佐官
武器……剣
短剣
拳銃




