#235 前日
東京本部、対策2専用室……
「あーあ、今日もお泊まりか」
冨沢はそう言うと椅子にドカッと座った。すると小牧が「今日は仕方ないですよ。明日がテロ予告の日なんですから」と言った。すると冨沢は「分かる。分かるけどさぁ……」と言うと机に伏せてしまった
「作戦が始まったら忙しくなる。それまで冨沢は寝てな」
林はそう言うと冨沢の頭に毛布を投げ置いた。すると冨沢は「サンキュー」と言い、毛布を頭の下に置いた
「小牧も休んでおくといいよ。今すぐやらなくちゃいけない仕事はないんだし」
林は小牧にそう言った。すると小牧は今している作業を中断するとこう言った
「林さん。今回の作戦どう思いますか?」
小牧がそう質問すると、中鈴と佐伯も仕事を中断した
「どう思うってのは?」
「そのままです。林さんの経験的に今回はどんな感じになるのかなぁ……っていう」
小牧がそう言うと、中鈴がそれに乗るように「確かにそれは気になるな」と言った
「そうね……」
二人にそう言われると林は腕を組んで悩み始めた。そして少しすると三人にこう言った
「あくまで予想だけど、今回の作戦はあまり被害がでずに終わると思うよ」
「あまりというのはどのくらいですか?」
林に対して中鈴がそう聞いた。すると林は「そうだな……対策官側には死者が出ないってくらいかな」と答えた
「つまり林さんの予想だど、夏の攻防戦みたいにはならないということですね」
東京駅攻防戦では九名の死者と数十人の負傷者が対策官側には出ていた。なので小牧は東京駅攻防戦ほどのものではないと分かるとホッとした。するとそんな小牧に佐伯がこう言った
「夏の攻防戦?」
「そう。東京駅攻防戦のことだよ」
小牧がそう答えると佐伯は「ふ~ん」と言い、仕事に戻った
「佐伯は東京駅攻防戦についてあまり知らないの?」
林は佐伯にそう聞いた。すると佐伯は手を止めて「大規模な作戦だということは知っています。けど資料などは読んでいないので何があったかまでは……」と言った
東京駅攻防戦が行われた頃、佐伯はまだ関東ゾンビ殺所場で働いていた。なので『東京駅攻防戦』という作戦があったことは当時の上司から聞いていたので知っていたが、詳しい内容までは知らなかった
「そうか。じゃあ何があったか知っておいた方が良いかもな……」
林はそう言うと小牧を見て「小牧、佐伯に東京駅攻防戦で何があったかについて教えておいてくれないか?」と頼んだ
するとそれに対して冨沢が「オケオケ任せなさいな!」と顔をあげて答えた
「いやまて、小牧に頼んだんだけど」
林がそう言うと、中鈴も「寝てたんじゃないんですか」と言った。すると冨沢は「普通に眠れなかった。そんなわけで話は全て聞いてたぞ」と言い、中鈴にグッドサインを見せた
「俺の言ってたこと聞いて?」
林は冨沢にそう聞いた。すると冨沢は「うん。聞いてない」と言い、立ち上がった。そして林の後にある棚を漁り始めると、緑色のファイルを取り出した
「林!これだよな?攻防戦のって」
冨沢は緑色のファイルを林に見せるとそう聞いた。すると林は頭を押さえながら「あってるよ。だが、それは小牧に頼んだんだが」と言った
けれど冨沢は林の言うことを無視して、緑色のファイルを佐伯に渡した
「これに何があったか詳しく書いてあるから見てみるといいよ」
「あ、ありがとうございます」
佐伯は緑色のファイルを手に持つと林を見た。林は頭を押さえており、小声で「小牧に頼んだんだけどなぁ……」と言っていた
『大変だな……林さん』
そんな林を見ると佐伯はそう感じた
「いやー、久し振りに仕事したわ」
冨沢はそう言うと席についた
「今の仕事というほどのものじゃないですし、それに『久し振り』って普段何してるですか」
中鈴は冨沢にそう言った。すると冨沢は毛布を自分の膝に奥と「え?普段何もしてないけど」と答えた。するとそれを聞いた中鈴は『確かに普段何もしてないわ……』と心の中で言った
「林はいる……ね。ちょっといい?」
突然そう言ったのは小橋だった。すると林は「何?突然」と言うと小橋のいる所に移動した
「まぁ良いからちょっと下まで来て」
小橋はそう言うと林の腕をつかんで部屋から出ていってしまった……
そんな様子を見ていた小牧は「一体何が……?」と小声で言った。するとそれに対して中鈴が「小橋三佐の様子を見るに悪いことじゃないな。あれは」と言った
「まぁ大丈夫だって。小橋が来るときは大丈夫だから!ただ……」
「ただ?」
「ただ司令官や榎本が来るときはヤベェときだ」
冨沢は突然真面目な顔になってそう言った
そんな冨沢を見て小牧は『え?何かありました?』と心の中で言った。けれど、少なくとも今回は大丈夫であろうということを知り、良かったと思う小牧だった……
八代恵穂
ゾンビ対策士長
武器……槍
短剣
拳銃




