#228 権利
次の日午前九時、東京本部第二会議室……
「これでオッケー!」
倉科は扉に紙を張り付けるとそう言った。するとそんな様子を見ていた宗が「何してるんだ?」と聞いてきた
「仲野本部長に頼まれてこの紙を貼ってたのよ」
「えっと、テロ予告対策室?」
宗は扉にはってある紙を読み上げた。すると倉科は「Yes!今まではこういう紙貼ってなかったから、目立つように貼るんだって」と言った
『確かに今までは対策室が出来たとしても、何の表示もしなくて分かりづらかったからな。これは助かる』
宗はそんな事を思いながら扉を開けた……
部屋の中には仲野、郡山、藍卯といったいつものメンバーから本間、柏木、秋好といった名前は聞いたことあるけど、関わったことのない対策官まで沢山の人がいた
「宗じゃねーか」
そう言ったのは藍卯だった。なので宗は「藍卯さん、お久しぶりです」と言って一礼した。すると藍卯は「帰ってきたなら挨拶くらいしろや」と言った
「あれ?宗と倉科が帰ってきたの結構前だけど、知らなかったの?」
二人の会話を少し離れたところから聞いていた仲野がそう聞いた
「知らんわ。てか何で教えなかったんだ」
「いやー、普通に知ってると思ってたから……」
仲野はそう言いながら頭をかいた。すると藍卯は「まぁいい、これで宇土ともおさらばだ」と言った。けれど、宗は自分がいない間何があったのか知らないため「宇土と何かありましたか?」と聞いた
すると藍卯は部屋の隅で他の部署の対策官と会話をしている宇土をチラ見すると「あぁあったとも。あのクソ無能野郎のせいで私がどれだけ仕事をしたと思ってやがる」と言った。そして近くの椅子に座ると足を組んだ
「そんなに声が大きいと本人に聞こえますよ」
「別に大丈夫だろ。事実何だから」
藍卯はそう言うと机の上に置いてあるお茶を飲んだ……
「さて、人もそろったみたいだし始めようか。みんな席についてくれ!」
仲野がそう言うと立っていた対策官達は素早く席についた。そして机の上に置いてある資料を手に取った
「やけに分厚いね」
倉科は机の上にあった資料を開くとそう言った。その資料は紙が数枚といういつものタイプではなく、完全に本になっていた
「あぁ、内容がだいぶ濃いから資料も厚くなるとは思ってたけど、ここまでとは……」
宗も資料を手に取るとそう言った
「テロ予告日は一月三日と書いてあるが、我々ゾンビ対策官は一週間前から準備万端でいく。なのでこの資料を読み、間違えのないように頼む」
仲野はマイクを使ってそう言うと、そのマイクを藍卯に渡した。すると藍卯はマイクをポンポンと叩いてからこう言った
「今回のは私が主司令を行う。作戦に文句があるやつは私のところに来い。以上だ」
藍卯はそう言うと仲野にマイクを投げ渡した。そして仲野に「あとの説明は頼むぞ」と言い、部屋から出ていってしまった……
「では藍卯に変わって作戦を説明する。とりあえず画面を見てくれ」
仲野がそう言うと突然部屋が暗くなった。そして仲野の後ろにあるホワイトボードに東京本部周辺の地図が映し出された。仲野は自分の影が入らないように少しずれるとこう言った
「奴等の目的は東京本部!なので一月三日はこのような配置についてくれ」
仲野がそう言うと地図の上にそれぞれの部署の待機場所が出てきた。すると仲野はレーザーポインターを取り出し、それを使って説明をし始めた……
東京本部、対策4情報管理課……
「及川さん!例の資料の続き、来ました!」
そう言って部屋の中に飛び込んできたのは川瀬だった。するとそんな川瀬に及川は「もう少し落ち着いたらどう?」と言った。すると川瀬は「いやいや、そんな場合じゃないですよ。ついに来たんですから!」と言い、持っている茶封筒を及川に渡した
すると川瀬が来る前まで、及川と会話をしていた対策官が「何の資料ですか?」と聞いてきた。けれど普通の対策官に知られてはいけない情報だったため、川瀬は「すみません。これはちょっとアレなものでして……」と言った
けれど、及川は茶封筒から資料を取り出すと「問題ない。先に見てどうぞ」と言ってその対策官に資料を渡してしまった
「及川さん、それはさすがにまずいのでは……」
「大丈夫。彼女は調査官よ」
及川がそう言うと、対策官は「私は調査1の人間なので、機密情報を知る権利があるのだよ」と言った
調査部、調査1の仕事はスパイを捕まえることだった。けれどその仕事内容とこの機密情報にどのような関係があるのか川瀬には分からなかった。なので川瀬は「でもこの情報、調査1とは関係がないかと……」と言った。すると対策官はこう言った
「大丈夫。ただの興味だから」
川瀬はその発言を聞くと『調査部にもこういう人いるのかぁ~』と思った……
岡本優菜
一等ゾンビ対策佐官
常備武器……拳銃




