#225 経験
「宇土司令官呼びますか?」
才所は和倉にそう聞いた。すると和倉は台から飛び降りるとこう言った
「いや、先に中身を確認しよう。そして中身がアレだったら報告しよう」
和倉はそう言うと、持ってきた荷物の中からカッターを取り出した。そしてそれを使って袋ごと切った。すると中からかなり汚れている数枚の紙が出てきた
「何ですか?これは……」
和倉がその紙を手に持つと、才所がそう聞いてきた。なので和倉がその紙をよく見てみると、その紙には専門用語なのか、電気関係に関することが書かれていた
「うーん。電気に関することが書かれているのは分かるんだけど、専門家じゃないから何についてかまでは分からない」
和倉はそう言うとその紙を才所に渡した。才所はその紙を受け取ると、和倉と同じように何が書いてあるか見た。けれど、才所も何についての物なのか分からなかった
「和倉さん。作業はどうしますか?」
才所は和倉にそう聞いた。すると和倉は「とりあえず予定通りやろう。これが証拠になるとは思えないしね」と言い、再び台に登った。そして証拠となるものを天井裏につくり始めた……
西野原電機、入り口付近にて……
この場所には宇土に残るよう言われた五人が待機していた。この五人の仕事は、調査官による証拠偽造後の対処だった。なのでその作業が終わるまで、とくにやることがなかった。なので林達はその間の暇潰しとして、一月三日におこすと言われているテロについて話していた
「当日は全班残るのかなぁ」
そう言ったのは冨沢だった。するとその発言に対して小橋が「当然でしょ。と、いうかその日は対策部に限らず、全ての部署がそろうと思うよ」と言った
東京本部は昼夜で本部にいる対策官の人数がかなり違った。なので小橋はテロ予告日のみ、東京本部に勤める全ての対策官に待機命令が出ると予想していた
「俺もそうなると思うぞ」
そう言ったのは神尾だった。なので冨沢は「何で分かるんですか?」と聞いた。すると神尾はこう説明した
「経験さ。過去にもふざけたテロ予告があったんだよ。だから今回もその時と同じようになるはずさ」
「過去にもテロ予告があったんですか」
神尾の話を聞くと、小橋はそう言った。すると神尾は「あぁ、今から八年前だっけな」と言った。すると小橋は「なるほど、なら知らないですね」と言った
小橋が東京本部に勤め始めたのは今から五年前のことだった。なので、神尾のいうテロ予告のことを知らなくて当然だった。するとそんな小橋に林がこう言った
「俺は知ってます。大学にいた頃の出来事なので詳しく教えられました」
「あー、そういえば林は大学行ってたのか。だから昔の作戦について詳しいのか」
小橋は手を叩くとそう言った
林は大学でゾンビに関することを学んでいた。なので殲滅作戦以外にも、ゾンビに関する研究についても少し知っていた
「そういえばさ、林は何で大学いったの?対策官になるなら専門に通えば良いじゃん」
そう言ったのは冨沢だった。するとそれに便乗する形で小橋も「確かに!林とはそれなりの仲だけど、その理由は聞いたことなかったな」と言った。するとそれについて林はこう言った
「俺は元々研究員を目指してたんだよ。だから大学に通って、ゾンビ関係のことを学んでたんだよ」
「へぇー、研究員を目指してたんだ」
林の話を聞くと小橋はそう言った。すると林の横でその事を聞いていた神尾は「確かに研究員になるには大卒じゃないと無理だな」と言った
ゾンビ対策官になるには主に二つの方法があった。一つは、対策官学校に通うこと。この学校は義務教育が終了している人なら誰でも入れ、ほとんどの人がこの方法で対策官になっていた
そして二つ目は、大学でゾンビに関することを学ぶことだった。この方法だと研究課や鑑識課といった技術の必要な部署の人間になることが出来た。勿論この方法からでも対策部に入ることは可能だが、ほとんどの人は研究課か鑑識課の人間になっていた
「でも何で林は対策部に入ったの?」
冨沢はそう聞いた。するとその質問を聞いた小橋は『それ触れちゃダメだろ』と心の中で思った。けれど言ってしまったものはどうにも出来なかった。なので小橋は林をフォローするために「いろいろとあったんだろ。そんな事よりちょっと来て!」と言い、冨沢を無理矢理店の中に連れ込んだ
『なかなか強引なフォローだな』
そんな様子を見た神尾は心の中でそう言った。すると隣にいた林が神尾にこう聞いた
「あの二人いなくなりましたけど、話の続きしますか?」
「別にどっちでも良いよ」
林の質問に対して神尾はそう答えた。なので林は話の続きをしようとした
「理由ですが、それは……」
林がそう言ったときだった。突然店内から才所が出てきた。才所は店から出ると、走って作戦司令車へと行ってしまった
「作業が終わったみたいですね」
そんな才所の姿を見ると、神尾の部下である綿貫はそう言った。すると神尾は林にこう言った
「その話はまた今度にしよう」
「そうですね。いつか時間があったときにしましょう」
林はそう言うと神尾、綿貫と共に西野原電機の建物に入っていった……
綿貫真結理
准ゾンビ対策官
武器……槍
拳銃




