#220 違法物
作戦開始から三時間後……
林班は店内にある商品の捜査が終わり、後片付けをしていた。しかし商品にはゾンビ関係の物は無く、いたって普通だった
「林、どうすんの?違法なもの無かったけど」
そう言ったのは冨沢だった。今回の『西野原電機強制捜査』では、ゾンビに関する違法物を見つけることを目的としていた。なのでそれが無いのは色々とまずいと考えていた
「確かにここには無かったけど、裏にはあるんじゃないか?」
林はそう言った。この『西野原電機』には他の店と同じように商品をしまっておく倉庫があった。なので林はその倉庫に違法物が隠されていると考えていた
「確かにあるとしたら倉庫ですね。そもそも誰でも見れるような所に隠すのがおかしいですから」
佐伯はそう言うと、床に散らかっている商品を棚に戻し始めた
「因みに林二佐、もし違法物が見つからなかった場合、今後どうするのですか?」
林にそう質問したのは中鈴だった。すると中鈴に冨沢は「今後って?何かあるの?」と言った。すると中鈴は冨沢にこう言った
「もともとこの強制捜査は、愛護団体の資金源を潰すためのものです。なのでこの店から違法物が出ないと潰せません」
「あら?ここって愛護団体の資金源だっけ?」
中鈴の説明を聞くと冨沢はそう言った。するとそれに対して林は「それくらい把握してなよ」と小声で言った
「まぁそんな事はどうでもいい。中鈴の質問だが、それについては何も言われてない。だから俺もどうなるか分からない」
林は中鈴にそう言った。すると中鈴は「そうなんですか。でもだいたい予想はできますけどね」と言い、佐伯の作業を手伝い始めた
「予想できるのか?」
「はい。ちょっとセコい気もしますけどね」
中鈴は予想したことまで話そうとしたが、あくまで推測の域を出ていなかったため話さなかった。なので代わりにこう言った
「でも大丈夫だと思いますよ。さすがに倉庫にあると……」
中鈴がそう言おうとしたときだった。突然バックヤードに行くための扉が開いた
「林、ちょっと良いか?」
そう言ったのは神尾だった。すると林は「はい。構いませんが……」と言うと神尾のいる所に移動した
「林、違法物はいくつ見つけた?」
林が来ると、神尾はそう聞いた。しかし林は違法物を一つも見つけていなかったため「それが一つもありませんでした」と言った。すると神尾は驚き、こう言った
「林の所もか!」
「所も……ということは神尾一等の捜査場所にも違法物は無かったのですか?」
林はそう聞いた。すると神尾は「あぁ。全て見たんだが、違法物は何一つとなかったぞ」と言った
「そういえばここ、愛護団体の資金源なのに、それ関係の物が一つもないですよね」
突然林の後で誰かがそう言った。なので林が後ろを向くと、そこには米田がいた
「いつからそこに……」
林は米田を見るとそう聞いた。すると米田は「いま来たところだよ。様子見ってことで」と言った
「確かに米田の言うとおり、愛護団体関係の物が一つもないな」
神尾は店内を見回しながらそう言った
ゾンビ殲滅局は過去にもゾンビ愛護団体関係の強制捜査をしてきていた。そしてそのときの共通点というのが、どれにもゾンビ愛護団体に関する書類などがある……ということだった
しかしこの『西野原電機』にはそれがなかった。なので神尾達はそれが無いことに対して違和感を感じていた
「米田、ここって本当に資金源なんだよな?」
神尾は米田にそう聞いた。そもそもゾンビ愛護団体関係の店でなければ、それが見つからないのも当然。神尾はそう考えていた米田に聞いた。しかし米田は神尾の質問に対してこう答えた
「もちろんです。それについては監視部がキッチリと調べたので」
「そうか…… じゃあ何でないんだ?」
神尾はそう聞いた。しかし何故、ゾンビ愛護団体関係の物がないのか米田と林にも分からなかった。なので二人とも黙ったまま互いを見ていた……
東京本部、対策3専用室……
「藍卯!宇土から電話がきてるよ!」
そう言って藍卯を呼んだのは芝だった。すると藍卯は「何の用か分かるか?」と聞いた
「いや、すぐに藍卯を呼べと言われてるから内容はちょっと……」
「そうか。じゃあ貸せ」
藍卯はそう言うと芝が持っている受話器を受け取った。そしてこう言った
「何の用だ宇土。私はそんなに暇じゃない」
「藍卯、大変だ!店から違法物が見つからない。それどころか愛護団体関係のものすら見つからない」
電話で宇土にそう言われると、藍卯は心の中で『え?』と思った。だが、それは言葉にせず宇土にこう言った
「分かった。やれることはやるから、お前らははよ戻ってこい」
藍卯はそう言うと芝に受話器を渡した
「あ、まだ繋がってるけどいいの?」
芝は受話器を受け取ると、藍卯にそう聞いた。すると藍卯は「構わん。切っておけ」と言うと、部屋から出ていってしまった……
芝由喜
准高司令官
武器……拳銃




