#216 都合
「あの資料には何が書いてあったんですか?」
織部は車を走らせながら、三ツ木にそう質問した
郡山が持ってきた資料は三ツ木しか見ておらず、その他の人は内容を知らなかった。そして織部から見れば、資料を読んだ三ツ木が突然警視庁に行くといい始めたため、あの資料に何が書かれていたのか気になっていた
「少しは会話で聞こえただろ?」
「えぇ。テロ予告の動画で殺された人の話ですよね?」
織部はそう答えた。すると三ツ木は「そう」と言った。そして少し間を開けるとこう言った
「その殺された人、どうやら警察でもないらしい……」
三ツ木がそう言うと織部は心の中で「え?」と言った
ゾンビ愛護団体はテロ予告の動画の中で、スパイを殺害していた。なので調査4は、潜入捜査官で連絡の取れなくなった人がいないか確認をしていた。けれどそのような人はいなかったため、殺害されたのは警察官だと思っていた
「警察じゃない?では一体……」
「ゾンビ愛護団体総本部付近に住む住民……と書いてあった」
「付近に住む住民?愛護団体と関係のない?」
織部はすぐにそう聞いた。すると三ツ木は「あぁ」と答えた
「しかし、総本部の正門前には監視部、総本部の建物内には対策部がいますよね?」
ゾンビ愛護団体総本部の強制捜査後、建物にいた愛護団体のメンバーは全員拘束されるか殺されていた。なのでそのもぬけの殻となった建物を対策部が管理していたのだ
しかもゾンビ愛護団体総本部の正門前には、監視部が監視任務の時に使っている建物があった。なのでゾンビ愛護団体総本部付近で事件は起きないと織部は思っていた
「調査の結果、強制捜査後からは監視任務にその建物を使っていない……だから現場にいたのは対策部だけだ」
「けれど、対策部がいたのであれば何故そのようなことが……」
織部はそう発言したとき気がついた。対策部はあくまで建物内で作業をするだけであり、外の警備はしていないと……
「対策部の任務はあくまで総本部の調査だ。仕事の都合上、敷地外に出ることはあるかもしれないが、基本はゾンビ愛護団体総本部の建物の中だ」
三ツ木はそう言った。ゾンビ愛護団体総本部の強制捜査が終わったあと、対策部は建物の調査をしていた。けれど対策部は他にも仕事があり、この調査にあまり人を割けなかった。その結果、外での出来事に気が付かなかったのだ
「まぁ、そういうことだ。これに関して警察が何か知ってると良いんだがな……」
三ツ木は少し間を開けるとそう言った。二人の乗る専用車は警視庁本部庁舎のすぐ近くまで来ていた。なので到着まであと少しだった……
東京本部、対策4情報管理課専用室……
「マジですか。これ」
そう言ったのは榎本だった。するとそれを聞いた川瀬が榎本の所にやって来て、こう言った
「どうしたんです?」
川瀬がそう聞くと、榎本は手に持っている紙を見せながらこう言った
「テロ予告の動画のあったでしょ?そこで殺された人が民間人だったんだよ」
榎本はそう言うと川瀬に持っている紙を渡した。そして今度はこの紙を持ってきた郡山にこう聞いた
「これ本当ですよね?」
榎本がそう聞くと、郡山は「勿論だ」と答えた
「まさか総本部近くの住民だなんて…… なかなか派手なことを……」
川瀬は榎本に渡された紙を見るとそう言った
「それで郡山さん。情報管理課はこの件について何をすれば?」
榎本は郡山にそう聞いた。しかし郡山はあくまでこの事を教えるために来ただけであり、情報管理課に何かを調べてもらおうとは思ってなかった。なので郡山は「いや、情報管理課はこの件については何もしなくて良い。ただ教えに来ただけだ」と言い、部屋から出ようとした
するとそんな郡山に川瀬はこう言った
「副本部長!この紙は……」
郡山は突然そう言われると、振り返ってこう言った
「それはあげるよ。ただ資料管理課にも見せてやってくれ」
郡山はそう言うと部屋から出ていった
「榎本さん。これを……」
川瀬はそう言うと榎本に紙を差し出した。なので榎本はその紙を受け取ると机の上に置いた。そして横を見るとこう言った
「この件について、高坂監視官はどう思います?」
榎本がそう言うと、資料を持っている人は此方を向いた。そして榎本にこう言った
「すみませんが、そのような情報は此方に回ってきていないので何とも言えません」
監視官はそう言うと、榎本に会釈をして部屋から出ていってしまった
「ノーコメントか」
榎本はそんな監視官を見ると、小声でそう言った……
郡山佐本
ゾンビ殲滅局東京本部副本部長
武器……拳銃




